The Last Kings of Shanghai:The Rival Jewish Dynasties That Helped Create Modern China 上海のラスト・キング:中国の現代化に貢献したユダヤ系の二つの家族
2021年1月31日
読み終わって1週間経つのですが(1月26日読了)、色々締め切りに追われ、偏頭痛に追われなかなか感想をあげられないでいました。
以前Agent Sonyaを読んで、もっと当時の上海のコスモポリタンで何でもありな感じが味わえるかと思った的が外れたこともあって、上海もの。。。と思っている時に偶然見つけたのがこの本でした。ほとんど何も知らないで購入。
バグダッドにルーツを持つユダヤ系の二家族のお話です。イギリスがインドの経済を牛耳り、中国でアヘンを売りまくっていた頃のお話で、改めて植民地主義の非道に気付かされます。こういうものすごい暴力があったうえでの、ガンジーの非暴力主義なんですよね。マーティン・ルーサー・キング(ちょうど読了の一週間前がキング牧師の祝日だったこともあり)の非暴力も単にプロテストは平和的に、というのではなく、肌の色だけを理由にリンチされ不当に殺され、投獄される側が、それでも非暴力を選び取る、というところにその尊さがある、ということは忘れないでおこうと思いました。(さらに言うなら、それだけの暴力を強いておいて、被害者には非暴力を要求する社会の残酷さよ!)
ともあれ、そうした植民地政策に乗じて富を築くサスーン家と、サスーン家で働いた後に独立しサスーン家のライバルとなるカドゥーリ家のお話。ロンドン、ボンベイ、上海を拠点に巨万の富を築く一家ですが、一人ひとりの話はなかなか面白かったです。成り上がるにつれて、イギリスの上流階級とも付き合いが始まるとキリスト教に改宗する家族も出たり、その財力で女性ながらに編集者として名をあげたり。
1930年代の上海では、現代史に名を残す蒋介石とか孫文(Sun Yat-sen)が出てきたりして、ワクワクしますし、日本人の海軍大佐犬塚惟重なども出てきます。ナチが台頭してきたヨーロッパで、難を逃れようと上海に来ようとするユダヤ人をサスーン家はサポートしなかったり。そうかと思うと犬塚大佐のような人が、いわゆる「河豚計画」でユダヤ系の人たちに近づいたり。
1949年以降はビジネスを香港に移さざるを得ませんが、香港にほど近い大亜湾に原発を建てたのは、ローレンス・カドゥーリ。そう、あのカドゥーリ家の末裔です。
大河ドラマのような4代にわたる家族の興隆。エンターテインメントとしては満足でした。(ところどころ、サスーン家やカドゥーリ家の人たちの中国の人びとに対する見解に差別を感じて憤ったり、逆にヨーロッパでの彼らに対する差別に憤慨したり、も含め)。