Nuclear Nuevo México 核のヌエヴォ・メヒコ
8月29日読了。ああ、センスのない日本語タイトルしかつけられなくて、我ながらがっかり。
この夏に見たFirst We Bombed New Mexico (最初にニューメキシコが核攻撃を受けた)にも出てくる、友人でもあるマライア・ゴメスの著作。
映画「オッペンハイマー」には出てこなかった、高地にあるロスアラモス研究所の人たちの話ではなく、そこから追い出され、見下ろされている側の先住民とスペイン・メキシコ系住民の話。
このnuevomexicana/oというのは、どう訳せばいいのかわからないけれど、マライアはこの言葉が重要なのだと、この本で語ってくれます。それは、最初の植民地支配をしたスペイン人が作ったメキシコ(今のテキサスやニューメキシコ州を含む)の末裔を指すのだそうです。そうすることで、自分たちは支配した側だという自覚を持ち、それが脱植民地化につながる、と。
しかし、このスペイン・メキシコ系住民は、その後アメリカにより植民地化され(入植植民地化)、最後に核による植民地化が起こった、というのがマライアの主張です。つまり、このニューメキシコという土地は3度、植民地にされている、ということです。
この重層性、とても大切に思います。先住民研究は多々あるけれど、スペイン・メキシコ系の人たちの核被害は、それほど知られていないかも知れません。しかも、彼らは植民した側であり、された側でもある。
これは、日本に住む多くの人にとって「他人事」ではないのではないでしょうか。戦争で植民地を持った側であり、核により植民地化された側でもある。。。
ともあれ、人種差別の凄まじさと、核の非人道性、というより核施設・核産業というものが、非人道的にしか成り立たないことがよくわかる本です。そして、オッペンハイマーにはまるで出てこなかった、その土地の重層性と差別性。核が差別に基づいたものだという視点は、これから重要なキーワードとなるでしょう。それは我々自身の脱植民地化の過程でもあると思います。