4.仮説が未来をつくる 5/5話
ついに最後です。先ほどの「自らの問題意識を他者と共有する技術」について、わたしが歴史を学ぶ際、そして、仮説を立てる際、それを他者に伝える際に必ず言語化する6つのポイントをまとめました。
それがこちらです。
・なぜ
・誰が
・誰に
・何を
・どうしてほしいのか
・その結果世界がどうなるか(幸せになるか)
これらを言語化し、相手と共有すること。
なーんだ、そんなことか、と思う人もいるでしょう。
しかし、この6つが曖昧な状況がいかに多いことか。
自分が理解ができないことや、話し相手に話の内容が伝わらないときはこの6つのいずれかの共有が欠けていることが多いです。これは技術的に解消できます。ぜひ、日常的にこの6つを意識してみてください。この言語化に磨きをかけることで、皆さんの問いやアイデアは加速度を増して広がっていくはずです。
そして、この技術は日本人が苦手なネガティブなコミュニケーションにも応用して使うことができます。時に年功序列や慣習に習いがちな日本の独特なコミュニケーションの中で、客観的、理論的に議論できる環境を生み出すことができますので、自分のためだけでなく、関わる全ての人にとって非常に有意義です。
皆さんがこの6つを言語化するキーパーソンになることで、共感してくれる人や、協力してくれる人が増え、スムーズに、良い方向に、物事が進み始めるのではないかと思います。
伝わらなければあなたの中にあるアイデアや気づきが無になってしまう
そういう危機感をもって、ぜひこの技術を身に付けてください。
技術習得のために、自分の生活のなかでまず何が実践できるか?
私がおすすめする行動指針を3つ教えます。
1.暮らしの中に日々発見をし、感動しよう
よかったこと、改善すべきことをメモする習慣をつくりましょう。
気づきや疑問を自分の言葉で書く癖をつけることが大切です。
改善すべきことは改善策を練り仮説を立て、実行に移しましょう。
2.歴史を学ぼう
とにかく様々なものに興味を持ち、調べることを大切にしてください。
3.対話をしよう
自分の思考の癖や価値観は自分で気付きにくいものです。
他者の目を通して、持論に触れることもおすすめです。
今日のおさらい
伝わるデザインには良い問いがある
良いデザインはかっこいいパッケージをつくることではなく、
本質的な問いを導き出し解決すること
デザイン思考は自らの問いの抽象度を鍛えるところから
デザインの本質的な仕事は人々の欲求の標準を変え次の世界の豊かさの基準をつくることであり、現状を疑う癖をつけ、問いの抽象度をあげること、自らの問題意識を他者と共有する技術と理想を描く力が大切である
歴史を学び、仮説検証する技術を身につける
社会に提案をする行為は「未来の土壌をつくる」こと
仮説検証をする時には、歴史の上にある自らの行動に責任をもつことを忘れないでください
仮説が未来をつくる
伝わらなければあなたの中にあるアイデアや気づきは無になってしまいます。
自分の意見を相手に伝えるために、根拠となる歴史を学びましょう。
なぜ/誰が/誰に/何を/どうしてほしいのか/その結果世界が幸せになるかを言語化しましょう。
この講義はこれで終わりです。
最後に、なぜこのnoteが文字だけでつくられていたのか、私が敬愛するデザインの話をして終わりにします。
私は大学の頃に書体デザインを専攻していました。小さい頃から本が好きでしたし、ヒトのコミュニケーションには文字が欠かせないからです。皆さんが目にする印刷物に使われている文字、1字1字に、それを設計したデザイナーがいます。特に日本語は縦組み横組み、英字やかな、漢字、カタカナなど、1万字以上の組み合わせからなる非常に複雑な言語です。世界でも類を見ない、言葉による表現、文字による表現が豊かな国です。皆さんが何も意識せずとも、前に映るスライドが読めること、これは非常に長い歴史の上に成り立つものであり、非常に良質な現代の書体デザインの力によるものです。私の書体デザインの師匠の言葉に
水や空気のような文字をつくりたい
という言葉があります。意識されずとも、そこにあって、なくてはならないもの。この思想が、何百年という歴史のなかで代々受け継がれ、今日の日本のコミュニケーションの基盤を支えています。さらに遡れば、文字がなければ、文明は生まれませんでした。おそらく皆さんにとっては今日初めて、意識することになる歴史のひとつかもしれませんが、我々が日々行う「伝える」という行為は、これほどまでに長い土壌の上に成り立っているのです。
さて、話はこれで終わります。
今日ここにいる皆さんがここまでの話を理解してくれたなら、
このあと、この場所を離れた瞬間から、徐々に、身の回りの良いデザイン、
つまり良い問いを見抜けるようになっていくんじゃないかなと思います。
今回の知識が何か少しでも皆さんの人生の役に立てれば幸いです。
ありがとうございました。
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ヒトのCHICACUに風穴を。
チカクを探求する人 直井薫子