見出し画像

3.歴史を学び、仮説検証する技術を身につける 4/5話

実践的な話の前に、少しだけデザインの歴史に触れていきます。
デザインの歴史は本質的な問いの歴史であり問題解決の歴史でもあります。
また、人々の欲求の標準がいかに変化してきたかを知ることで、次の世界の豊かさの基準が見えてきます。
現在のデザイン領域に多大な影響をもたらしている「モダンデザイン」というデザイン思想が生まれたのがイギリスの産業革命から1950年くらいまでと言われています。この時代は技術が先行し、社会を大きく変えた時代です。人々の意識はいかに生産性の高い機能を保有するか、そして、合理的な開発であるかが重視されてきました。
現代は価値の細分化が進み、より細やかな問題解決が求められていると感じます。しかし、細かな問いにも、それぞれに通底する本質的な問いはあります。

これから誰にでも共通する本質的な問題としてあるのは、
コミュニケーションの問題
マイノリティへの最適化の問題

です。
多様性を認める社会において、価値観が異なる人、文化の異なる国、異なる言語、格差、これらをまたぐコミュニケーションが増えていきます。そして、細分化された、小さな、けれども重要な問題をどう扱うか、立ち止まることがあると思います。皆さんも、これからさまざまな問題にぶつかることと思いますが、必ずこれらの問いがどこかに関わっていると思います。そして、目の前の問題を複雑化する原因にもなるだろうと思います。
その時に、本質を見抜き、次の世界の豊かさの基準をきちんと仮説を立てられるか立てられないか、これが歴史を知っている人と知らない人の違いです。
仮説を立て行動で示すこと、つまり、社会に意見したことが受け入れられるためには、根拠が必要です。
根拠を説明するためには、歴史という土壌を理解しなければなりません。
歴史は仮説の積み重ねです。
今、当たり前のように聞いている音、目に映る景色ひとつひとつに、なぜその音なのか、なぜその色なのか、なぜその形なのか、決定づける歴史があります。
その歴史の上に、皆さんのアイデアが活きるということを忘れてはいけません。
同様に、皆さんのアイデアは皆さんだけのものではなく、
未来を生きる若い人たちの土壌になるということを忘れてはいけません。
今の自分たちの行動は決して断片的なものではないという自覚をもってほしいと思います。

社会に提案をする行為は「未来の土壌をつくる」こと
なのです。

次の社会の担い手として、あたらしい価値を生み出そうとする野心のある人が、これを読む人のなかにいたなら、常に思慮深く、様々なことに興味を持ち、それらに対して誠実で意見ある行動をすべきだと私は思います。
なんで、こんな堅苦しいことをいうかというと、誤解を恐れずに言えば、私はデザインが環境破壊と紙一重だと思っているからです。

中学生の頃に「あなたが世界を変える日」という本を読んだことがきっかけでした。その本にはこんな言葉が書いてありました。

直し方がわからないものを壊し続けるのはもうやめてください

1992年、ブラジルのリオデジャネイロで開かれた地球サミットの最終日のできごとです。世界の首相たちを前に、12才の女の子が行った6分間のスピーチの一節。彼女の名前はセヴァン・カリス・スズキ。日系二世です。つくることは壊すこと、壊すことはつくることなのです。みなさんに配るチラシをつくるために、世界のどこかで木が切られる。壊してしまったら直らないものもある。

私にとって、人間にとって、都合が良い世界になっていないか

これがものづくりをする私の本質的な問題です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?