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2.デザイン思考は自らの問いの抽象度を鍛えるところから 3/5話

先ほどのような思考プロセスを「デザイン思考」と呼びます。
デザイン思考を身に付けるために、本質的な問題を先んじて気づくには、まず現状を疑う癖が必要です。そして、その抽象度をあげていきましょう。
馬車が走っていた時代には、人々はもっと早い馬がいたらいいのにと思っているでしょう、馬車に満足している人の方が多いかもしれない。車が走る現代では、もっと早く走る車があったら良いのにと思うでしょう。そして、同様に、今の車に満足している人も多いでしょう。
しかし、人々は「早い馬がほしいわけでも、早い車が欲しいわけでもない」、「早く移動したい」のです。これが、抽象度をあげる、ということです。
早い馬がほしいといわれて馬小屋で馬のトレーニングをはじめてはいけないのです。

皆さんの身の回りの例で言うと、アップルのiPhoneはよいデザインの一例です。
スマートフォンと呼ばれる携帯電話はiPhone以前にも存在しました。しかし、多くのメーカーは「従来の携帯電話にパソコン的機能をいかに搭載するか。」という問いに取り組み、非常に複雑なPCのキーボードを小さい携帯端末のインターフェイスにいかにコンパクトに実装するかを競うばかりでした。この問いそのものを疑い、さらに抽象度高く「誰でも使いやすい電話とはどういうものか。」を世に問い直したのがアップルです。そして、理想を実現したのがiPhone。

デザイン思考を身に付け
デザインを仕事にすることは
人々の欲求の標準を変え、
次の世界の豊かさの基準をつくること


だと私は考えています。

欲求の標準を変える、というのは、馬車やiPhoneの例のように、問題をかかえている相手が、本質的な問題に気づいていない時に、これを指摘し気づかせるということ。そして、豊かさの基準をつくるというのは「こうなったらもっと良いよね」という、今はなくとも近く実現できそうな理想を描き実現するということです。
わかりやすいのでiPhoneを例にしましたが、よいデザインの中には、誰にも気づかれないくらい、そっと、見えないところで世の中の欲求をアップデートしていく仕事もありますし、今話した車やiPhoneのように人々の共感を得て、大々的に社会を変化させていくような仕事もあります。デザイン思考をもつ人、それを仕事にする人は、どんなときでも、「馬ではそんな速くならないんじゃね?」「そもそもこんなちっちゃい電話にたくさんボタンをつけることを誰も求めてないよね?」といった自らの問題意識を他者と共有できる技術と理想を描く力が必要です。
この技術と力の有無はプレゼンに大きく影響します。
有名なスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは「これがiPhoneです」と結論を話した直後、これまでのスマートフォンがいかに操作しにくいものであったか、誰も指摘しなかった問題点を提示して、聴衆の共感を勝ち取り、自らの問題意識を世界に共有することに成功しています。そして、これに対し、自らが描く理想を実現できたからこそ評価されています。
①現状を疑う癖をつけ、問いの抽象度をあげる
②自らの問題意識を他者と共有する技術と理想を描く力を身につける

①の「現状を疑う癖をつけ、問いの抽象度をあげる」については、本質的な問いを見極めるコツが以下の本の中に詳しく書かれています。最近読んだ本でヤフーのチーフストラテジーオフィサーである、あたか かずと さんの書かれた「イシューからはじめよ」。20代の皆さんには是非とも読んでいただきたい本です。

②の「自らの問題意識を他者と共有する技術」については、このあと、私から基本の6つのポイントをお話ししたいと思います。


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