元彼に彼女ができた

この記念すべき瞬間を前にして、2日間食事が喉を通らずにいる。
彼とお別れしたときは1日だって引きずらなかったのに、彼の人生が前に進んでいると知るとこうもショックを受けるのかと、自分でもビックリだ。

ただこの歴史的瞬間を「noteに書いて未来の自分に残したい」と思う程度には、元気なんだと思う。この胸の痛みと断食は、割りのいいダイエットだと思っている。

彼とは大学時代に2年間お付き合いしていた。
学生特有の「好きー!」「やっぱきらーい!」という恋愛を除けば、私にとって初めての彼氏だった。温厚で優しい彼のことが、それはそれは大好きだった。私の話をなんだって聞いてくれたし、どこへだって連れて行ってくれたし、私が何時にどこへいたって迎えにきてくれた。彼の写真フォルダは私の写真でいっぱいだった。地図を見たり、PCの操作とか、旅行先で見知らぬ人と会話をしたり、私の苦手なことが得意な人だった。本当にすごくすごく愛してくれていたと思う。

だけど、同時に彼の自分勝手さに嫌気がさすことも多かった。彼は大事なことほど投げ出す人だった。
彼の女性関係に口出しをすることは無かったけど、一度だけ彼のことが好きだと噂のある女の子と「あまり深く関わらないでほしい」とお願いしたことがあった。すると彼は「わかった」と言いながらその子と隠れて連絡を取るようになった。深夜にゲームをしたり、私には決して言わない愚痴を吐いたり。「バレなきゃしてないのと一緒」と、子どものような考え方をする人だなーと思った。
大学の生徒とコミュニケーションを取るのも苦手だったので、彼の課題を肩代わりすることも多かった。機嫌が悪くなると周りの子の意見を字の通り無視するので、彼が悪いなと思いながら、なんだか申し訳なくて彼の課題を代わりに進めた。
喧嘩が嫌いな人だったから、関係が険悪になると3.4日平気で音信不通になった。こちらが根を上げ「もういいや」とどうでもよくなると、大学の帰り道後をつけてきたり、最寄駅で待ち伏せするようになった。会って話をしても本当に3時間黙りこくるので「もうわかったよ」と私が言い仲直りした。話し合いはしたくないけど、別れるのはもっと嫌だから、私の心が折れるまで責任を放棄する人だった。
「話し合いたい」と言うと「バイトがあるから無理」と言うけど、授業や課題をサボってデートに誘ってくるような人だった。私は楽しい時間はどう過ごしてもらっても構わないけど、辛いときほど向き合いたかった。なんというか、人に甘い代わりに自分にはもっと甘い人だったんだと思う。

そんな彼と一緒にいるのが段々と辛くなってきた。正確には、彼と一緒にいる自分が嫌で嫌でたまらなかった。私は彼を信頼していたからこそ彼の人生に干渉しないようにしていた。だからこそ、たまにこちらからお願いしたり「それは嫌だからやめてほしい」と言うと「わかった」と言いながら、平気で約束を破る彼が許せなかった。自分を尊重してくれる彼女が好きだけど、彼女の意見を尊重する気がないなんて許されない思考回路だと思った。段々と「信頼の置けない人だな」と感じて彼のプライベートにズケズケ口を出すようになった。嫌な人間だな、と自分のことが嫌いになった。
だから大学を卒業して一度だけ会いそこで正式にお別れした。荒んだ自分の心を治すことに精一杯で、彼と向き合うことに疲れてしまったのだ。(向き合うたびに無視されるので、なんかもうそういうのにも疲れてしまった)

彼の身勝手さも私の幼さも、周囲にはわかりづらいようで「お前らこのまま結婚するだろー」とか「〇〇くんいい人なんだからそのぐらい見逃してあげなよ」とか「女なんだから許してあげないと」とか、そんなようなことばかり言われた。
でもただ1人、大学で大して仲良く無かった子から「別れた方がいいとか許すべきとか、そんな偉そうなことは外野だから言えないけど。でもただ一つ言えるのはさ、ちかこがもし〇〇くんと別れて次の人とお付き合いしたら、そのとき初めて"人から大切にしてもらう"ってことがわかるんだと思うよ。」と言われた。なんだか核心を突かれたような気がして、未だにずっと心に残っている。関係性が希薄な相手の方が本質を見抜くのかもしれない。

彼と最後に会った日から半年ほど経過した。
彼のことを思い出すことなど無かったけど、ふと感謝の気持ちが込み上げてきた。嫌な気持ちも含めてたくさんのことを彼から学ばせてもらった。「今なら当時伝えられなかったありがとうを言えるんじゃないか」と邪な気持ちなしで、純粋にそう思えたのだ。長い時間をかけたことで自分の心が健康に戻った気がした。

だからブロックしていた彼のLINEを望み半分で元に戻した。すると彼からもブロックされていなかった。別れたときに互いにブロックしたはずなのに、戻しておいてくれたんだなと思った。
「ご飯に行きたい」と連絡を送ると、数時間後に「彼女がいるから行けない。ごめんね。」と返ってきた。「行きたくない」「行く気がない」じゃなくて、「彼女がいるから行けない」と原因の半分を今の彼女に委ねる文章に胸が痛んだ。そうそう、この人はこういうわかりにくいズルさを持った人だよなーと。本当に彼女が大切なら、私の連絡先を残しておくなよと思った。
最後に10分だけ電話をした。彼の方からかけてきて「僕は会いたかったけど、彼女に確認を取ったらダメと言われたから会えない」「僕のことを完全に拒絶してるって思ってたから自分から連絡できなかった」責任の一端を今の彼女や私に押し付けながら、状況説明をしてくれた。でも、なんだかんだ幸せな日々を過ごしていそうだった。それだけですごく安心した。なんか色々あったけど幸せに生きていてほしい人だとは思うから。だけどやっぱり隙だらけだ。そういう隙の多さが君の性格だし、だからモテるし、だから付き合う子を不安にさせるのだ。

一人称が「俺」から「僕」に変わっていたのは面白かった。
なんだか本当に赤の他人と話しているようだった。

返信が早くて、自分から電話をかけられて、彼女に確認をとれて、「ちょっと返信遅れる」と連絡できて。たった1日連絡を取っただけで色々な成長が見れた。
でも「僕は違うんだけど」と言いながら人のせいにしたり、頑固なくせに他人軸なところは相変わらずだ。自我が強いのに社会やルールに守られていたいから、自分の欲を人のせいにするんだろうな。「僕はこう思う!」と大きな声で言えないのは、不幸なのか幸せなのか。
彼女とは1ヶ月前に付き合ったばかりらしい。とはいえ私が邪魔なのに変わりはないので彼の連絡先は削除済みだ。彼のズルさは分かりにくいからきっと今の彼女と結婚するんだと思う。自分勝手なだけで「自分が責任を負ってでも…!」というガッツはないから、浮気も不倫も離婚もきっとしない。だからもう二度と会うことはないけれど、男でも女でもない目線で「いやー!ほんと酷い目に遭わせてくれたね!でもありがとね!」と言いたかったとほんの少しの後悔がある。

別れた後にインスタの捨て垢を作り、私のアカウントをネトストしたことがある彼だから、何らかの形でこの感謝を伝えられたらいいな。

波瀾万丈な2年間を過ごさせてくれてありがとう!

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