伊豆高原 虹〜春のごちそうランチ〜
長く通ってるお菓子教室ではかつて、「こどものマナー講座」と題して名店で美味しいものをいただくイベントがあった。その中のひとつに「鎌倉 鉢の木」があり、精進料理発祥の老舗で丁寧に作られた料理の説明をしていただきながら、美しさと美味しさに感動した。無知な私が「この鮎はこの大きさになるのに何年かかるんですか?」と質問したら、「鮎は年魚なんですよ。だからみんな一年未満です。」と優しく教えてくれたのが、当時料理長だった蕗谷氏だった。
その蕗谷氏が鎌倉で日本料理店を開き、今度はそちらにみんなでお邪魔するようになった。そんな御縁から、年末の御節作りの手伝いのお声がけをいただき、食の仕事に就きたい高校生らがシフト組んで参加するのが恒例となった。超人気の御節は200台の予約があっという間に埋まる。生徒さんらが担当する仕事は、金柑の種を取るなどの下準備から、盛り込みまで多岐に渡る。食べ物が傷まないよう、作業部屋の温度は10度。ダウンやカイロで体を暖めつつの大変な仕事だが、生徒さんたちはみんなとても楽しんでいる。賄いが美味しいから太っちゃうんですよー、なんてニコニコ。蕗谷氏も、普段から丁寧できれいな作業や正しい衛生観念が身についている元気な女子たちがスポットでアシストするのを喜んでくれている。
鎌倉を閉店し、伊豆高原に移転しますと聞いたのは去年の6月だった。家族の大事な記念日にも訪れていた私はとても残念だったけど、伊豆なら温泉旅とセットで行けるかな、と気を取り直す。でも恒例の年末御節仕事は?「今年は100台限定にするので、お手伝い4人来てほしいです。」温泉のお風呂のある蕗谷邸に泊まり込み、賄い付きとあって希望者多数のなかから抽選となった。
そして先日、待望の初ツアー。総勢10名でランチにお邪魔した。うち三人が御節担当だったので、蕗谷氏の最初の言葉は「年末みんなが帰ってから寂しかったよー。」朝晩に階下の一間で響く笑い声が無くなったら、しーーんとしたそうだ。
広いダイニングにはペレットストーブが燃えていて、半袖でも良いくらいに暖かい。バルコニーの向こうには青い海。素敵な花瓶に桜、桃、菜の花の生け込み。
今回いただいたのはこんなかんじ。
ひな祭りのあしらいで、
マッシュルーム酒悦、鶏のしんじょ
鎌倉の蛸、南瓜
帆立の酢味噌
北海道のつぶ貝
自家製スモークサーモンと昆布締めの鯛のちらし寿司
ごぼうの摺り流し
天城軍鶏の餅包み
伊東の石鯛と金目鯛、烏賊
湯葉とハタのお椀
胡麻豆腐
揚げ物
百合根、海老芋、蓮根と海老、蕗の薹
(金目鯛の塩、輪島の塩)
蛸とうどの炊き込みご飯
焼き林檎、アイスクリーム
しあわせってこういうことだ、とありがたくいただいた。
念の為、と六合用意してくれた蛸のご飯があっという間に食べ尽くされてしまい、慌てて賄い白飯にじゃこを混ぜて出してくれた蕗谷さん。モンスターばっかりでごめんなさい。
食事しながら、春から就職で県外に出るMちゃんの話や、まさにシューカツ中のSちゃんの話を聞いた。夢や希望だけじゃない、現実と向き合って悩んでる、でも楽しそうな彼女たちを見てると、自分がみんなと同じ年齢の頃は頭んなかお花畑だったのに、と尊敬の念しか浮かばない。小学生の頃から一緒に普段のレッスンやお菓子教室の周年祭で関わってきてるので、なんかもう、親戚みたいな気持ちでしみじみ嬉しい。
Mちゃんは御節アシストのベテランだったが、さすがに就職したら参加できなくなる。でも、お菓子教室には次の世代が育って来ていて、食を仕事にしたい子も出てくるだろう。「良かったらまたお声掛けください。最年少3歳からいますので…」と言うと、奥様がびっくりしてた。
最後に記念撮影して、車に分乗したところで解散。
蕗谷さん、奥様、ほんとうにごちそうさまでした。
今度は父母や娘のだんなちゃんも連れてこよう。