秋の一日旅 後編 鋸山〜上大岡ジンギスカン
鋸山ロープウェイはもう62年も運行してるらしい。往復1200円、硬券に鋏を入れてもらうの何十年振りだろうか。
車両の端になにやら毛布に包まれたものが置いてあり、その上に灰色のシートが被せてある。多少の風でも揺れないための重しなのだそう。そのままだと乗客の靴を傷つけるので毛布を被せてるが、今度はその毛布が臭うため、シートを更に被せてると。潔癖な夫の頬がぴくりと引きつる。ドアが閉まり、車体がじりじりと動き出すとガイドの女性のアナウンスが始まる。山頂近くなると車両は完全に霧の中に埋もれ、景色は全く見えない。「あいにく今日は見えませんがあちらには〇〇が見えるところでございます」という案内、心の眼で視てってことか。
山頂駅の展望台から眺めると、遠くの海の上にかすかな雲の切れ目があり、陽の光が薄く射している。それ以外は真っ白な水蒸気しか見えない。
鋸山は昭和50年代まで石材を切り出していた山である。展望台に石で出来た円筒形のものがあり、友人Mが嬉しそうに「ポストらしいよ。」と示した銅板に「シャロン・ポストーン」と彫ってある。オリバーもエマもいるのに、なぜシャロン…
そこから順路に従い山の瓦礫のような道を進む。時折雨が降ったり止んだり。竜巻の爪跡なのか、ばきばきに折れた木。上り坂では息が切れ、上着を脱いで腰に巻く。
百尺観音、サイズ感に驚く。彫り込みは顔の周りは深いが、手足はかなり2次元ぽい。そりゃそうだよね。どんだけ大変な作業なんだ。
細かい雨に降られながら、地獄のぞき、、、の手前の崖でもう足がすくむ。視界がほとんどないのに、ほんの少しの隙間から見える景色が恐ろしすぎる。千五百羅漢を見て戻ろうと、地図を見ながら歩く。息苦しいわ膝は震えるわ、運動不足を痛感する。羅漢さんは表情がリアルで、今にもお喋りが聞こえてきそうだった。しかし疲れすぎてて写真無し。
展望台に戻ると、さっきよりだいぶ晴れ間が広がっていた。金谷の漁港を見下ろしながら、さっき食べた店はどのへんだろうなどと話す。もっと晴れてたら我々が船に乗った横須賀が見えるのかも。風が心地よい。
ロープウェイで麓に戻り、小さなカフェに入る。弟がクレープを焼き、兄が古着を売るという面白い店。夫はジャケットを、友人Mはコートを購入。
さて、日が暮れないうちにアクアラインに乗りましょう(私一人爆睡して、あの素敵な景色を見てないが)。
千葉の温泉も素晴らしいけど、お風呂入ってからロングドライブは危険なので、横浜に戻ってから竜泉寺の湯へ。駐車場が300台分あるのに、ほとんど埋まってる。もしや芋洗い常態か?と思ったが、脱衣所も洗い場もとても広くて、誰かとぶつかったりはしなかった。炭酸泉にだらーっと浸かる。若い母親たちが少し離れたちびっこの湯で遊ぶこどもらに絶えずなにかを叫んでる。いい感じにあったまったので退散。備え付けのドライヤーのスイッチがわからず、隣の御婦人が教えてくれた。我が家のドライヤーは相当古いんだな。
朝からあれだけ食べたのに、お腹空いてきたので、協議の結果ジンギスカンを食べることに。ずっと食べてみたいと思ってたから嬉しい。グルメサイトで見つけた、上大岡にある店へ。少し狭い路地でもするっと行けるK氏の車、素敵。高速でも4人乗せてすいすい行ったし、おしゃべりもできるほどの音の静かさ。人気の車なのがよくわかる。
そしてジンギスカン、とっても美味しかった。何が素晴らしいって、もやしがデフォではないこと。そう、ジンギスカンへの憧れはあっても、もやしが必ずそこにいると聞いていてちょっと困ってたんだった。ここは玉ねぎ、長ネギ、きのこ、じゃがいもなど好きな野菜だけ個別に頼めばよい。さらに主役の肉がめちゃめちゃ美味しかった。レアでもいけるというロースとランプ、スパイス効いたソーセージ、羊タンや味付きラム。サイドメニューも頼んで四人でがっつり食べて一万五千円くらい。コスパ最強。
朝のフェリーに乗った時点で今日は優勝と思ったんだが、それが夜まで完璧に保たれた。みんなに感謝。またこんな日が来るように、がんばって働く。
(メモ)
東京湾フェリー 軽+運転手3900円、乗客1000円
さすけ食堂 さすけ定食1900円
香豆珈琲 ハウスブレンド700円 プリン450円
鋸山ロープウェイ 往復1200円
日本寺拝観料 700円
鋸山BASE アールグレイ400円
竜泉寺の湯 980円
羊のヒカリ ラムロース1100円ほか
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?