おそろいサンダル

「夏っぽいのん何かないかなー」
夏生まれの彼にプレゼントを考えてる娘
「サングラスもいいのん持ってるしなー」
珍しくひらめきの神さまが降りてこうへん様子
「サンダルとかどう」わたしの欲しいもん言うてみた
「えっ　なんで分かったん　ちょっと思っててん」
選んだのはソックオンの色味も夏らしいターコイズブルー
ええやん　ええやん　わちゃわちゃ

近所で一人暮らししてる息子が正月ぶりに顔を出すと言う
たまには元気な顔見せてや〜　ラインでやり取りする時のお決まり常套句に彼なりのお返事
男の子はさっぱり、あっさりしてるから仕事のあれこれ　身体のあれこれをピーチクパーチクさえずらん　
ほんでもあの子が帰ってくると家の中がぱぁぁーっと明るくなって笑いが止まらん
すごいな　赤ちゃんの時と性格って変わらんのかな　　数ヶ月の頃から誰とでも目が合ったらきゃらきゃらとよく笑う子で人見知りも無いから小学生になっても道端で会った人に突然朝ごはんのメニューを発表するような天性の無邪気やったな

子供の心配をするより自分の心配せなあかん年齢に差し掛かり　それでもやっぱりきちんと食べておるのか、仕事はどうなんかいわゆる一般的に月並みでおもしろくもない質問しか口から出てはこんね
せんど家族の空白の時間を埋めるようにああだこうだと時系列もへったくれもない会話が飛び交う
阪神の調子についてもなかなかのウエートを占める
気になること、わたしなりの意見もあるにはあったけれど楽しい家族の時間ぐっとこらえて炊事軍曹に徹する　心ばかりの食卓に兄妹の近況報告
夫が目を細める
幼かったふたりが自分の足で歩いている
痛みも喜びも体験して日々選択をして生きている
充分やないか　なんと人間という生き物を生ききっていることか
カタリ　少しだけ荷物を下ろせたようなそんな気持ちになった　心配や気がかりを蓋付きの入れ物にしまうみたいに
翌日誕生日を迎える息子　エールを込めて
みんなでサンダルを選んだ
離れていても一緒にいるみたいに

#この夏ほしいもの