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解体する実家から救出したレコード ③機動戦士ガンダム
解体前の実家から持ち帰った、昔のレコードたちです。音源なら今でも手に入りますが、どうしても当時のLPを探し出したく、実家整理の業者さんに無理言って見つけて頂きました。今回は「機動戦士ガンダム」です。
(あくまで個人の感想です。記憶が間違ってたらすみません)
地球世紀1979、中学3年生の年は、ヲタク人生の中でも特筆すべき年でした。ヤマトブームの余韻が残る中、夏休みには、あの伝説の映画「銀河鉄道999」が公開されましたが、TVではこの年の4月から「機動戦士ガンダム」の放送が始まっていました。ガンダムについては、既に語り尽されている感があるので、今回は私の超個人的なガンダムに関する思い出を・・・
ガンダム TVに立つ!!
当時のガンダムは、よくあるロボットアニメとして、いつの間にか放送が始まっており、私は初回から見てはいませんでした。ある日、友達が学校に持ってきたアニメージュに、地球の輪郭に沿って光が拡がるOP映像が載っており、「カッコいい。何これ?」となったのがガンダムとの邂逅でした。
「この映像見たい!」その週末、当時は土曜も午前中は授業があり、午後の部活が終わって、自宅に駆け込んで見たのが第5話「大気圏突入」でした。当時のアニメで、大気圏突入時の通信遮断のシーンなど見たことないですし、「映像回復します。ガンダムです!」、痺れました。ここから毎週土曜日は、部活が終わると走って帰宅する生活が始まったのです。
そんな「大気圏突入」新規の私は、第4話のワッケイン指令の「寒い時代だと思わんか?」はリアタイで見てないので、録画もない時代、月間OUTのガンダム投稿もので、「ワッケインねた」には付いて行けてませんでした。
サントラ盤 購入作戦
ガンダムの魅力の一つは間違いなく音楽だと思います。「人類が、増えすぎた人口を・・・」で有名なBGM(長い眠り)、発進シーンでよく使われる音楽(戦いへの恐怖)、ガルマ様の「私とて、ザビ家の男だ。無駄死にはしない」(悲壮、そして決然と)、といった具合に、映像、セリフ、音楽が一体となって記憶に残っています。
「何としてもサントラを手に入れたい」。発売されたばかりの第1弾を求めてレコード屋へ。あった。こ、これは・・・、完全に子供向けのジャケットデザイン。中三の男子が買うには恥ずかしすぎる。当時はスポンサー(クローバー)のおもちゃも完全に子供向けで、ドラマの内容とは悲しいほどすれ違っていました。
「買うしかないんだ」、辱めを受けながら手に入れたサントラは、中身は欲しかったBGM集。ジャケットのデザインだけ我慢すれば、ライナーノートの富野節や、作曲家(渡辺岳夫さん)の裏話も、素晴らしいものでした。
迫撃!セカンド・アルバム
ガンダムの視聴率は低迷していたものの、実は中高、大学生といった層に熱狂的に支持されていることが明らかになってきた秋頃、2枚目のサントラが発売されることになりました。サブタイトルは「戦場で」。ジャケットは安彦良和氏が書き下ろした、アムロがノーマルスーツで荒野に立つイラスト。「これだよ、俺達が求めていたのは!」。1枚目とは、とても同じ番組だとは思えない変わり様です。
スポンサーとTV局は別にして、製作者とファンは完全に結びついた、そう思わせてくれたアルバムでした。そしてこれには、私のお気に入り「いまはおやすみ」が収録されています。第41話「光る宇宙」のララァの最後のシーンで流れた曲。マチルダ中尉役の戸田恵子さん(私にはアンパンマンじゃなくマチルダさんです)が歌う、このシーンのために作られたような曲でした。
調べてみると、36話でスレッガー中尉が戦死した際にも使われたようですが、私の中では、ララァのシーンと一緒に脳裏に強く刻まれています。
打ち切りは悲しみ深く
その後もTV局、スポンサーとのすれ違いが埋まることは無く、地球世紀1980年1月、終戦協定が結ばれた(誤)、打切りになったのは有名な話です。サントラとしては、番組終了後に第三弾「アムロよ」が発売されました。ジャケットは再び安彦氏のデザインが使われましたが、「アムロがトマトをかじっている原画」という、従来のロボットアニメから更に遠く離れたイメージに、製作者とファンの打ち切りに対する思いが詰まっていたような気がします。今回の実家解体の遺品整理では、残念ながらこのアルバムを見つけることはできませんでした。
1年後、高校生になった私は、劇場版三部作を見るために映画館に何度も足を運びました。そしてその後に、Zガンダムから今に続くガンダムシリーズへと受け継がれるわけですが、私の中ではファーストへの偏愛が強すぎたためか、「THE ORIGIN」を除き、Z以降のガンダムを見ることはありませんでした。
光る舞台
時は流れて地球世紀2020。場所は私の今の推し、「ももクロ」さん主催の大みそか恒例の「ももいろ歌合戦」。そこで企画されたガンダムスペシャルステージの中で、なんと戸田恵子さんご自身が歌われる「いまはおやすみ」を聴くことができました。
映画監督でガンダムファンでもあり、ももクロさんとも親交の深い本広克行監督が演出を手掛けたステージで、「砂の十字架」、「哀 戦士」、「めぐりあい」という劇場版三部作の曲に続いてトリを務める曲として、戸田さんの生朗読、生歌唱を入れて下さったのです。
あれから40年が経ち、当時少年だった若者が白髪の目立つ年齢になっても、未だに現役の歌手、役者として眩い光とともにステージに立ち続け、こんな感動を与えて下さるマチルダさん、いや、戸田恵子さん、そしてガンダムという作品には感謝しかありません。
「こんな嬉しいことはない。わかってくれるよね? ララァにはいつでも会いに行けるから」
ククルス・ドアンの島
ガンダムの思い出には、もう一つオマケが付きました。とびっきりのオマケが。2022年に上映された「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」です。
ククルス・ドアンと言えば、ガンダムファンの中では有名な名前だと思います。初回TV放送の第15話、本編の流れには関係ない、作画も崩壊気味、話数調整のために作られたとも言われる回で、後には話の内容が評価され「神回」などと言われることもあったようですが、当初は「なんだか変な回」ということであまり話題にも上らなかったような気がします。
そんなエピソードが、40年以上も経って、一つの独立した映画として上映される未来線があるなど、当時の少年たちは誰一人想像していませんでした。それが、あの安彦さんの監督で、アムロの古谷徹さん、カイの古川登志夫さん、シャアの池田秀一さんが現役声優として登場され、さらにララァの娘がセイラになるなど(失礼、ララァ役の潘恵子さんの娘の潘めぐみさんがセイラ役の声優を務められるなど)、胸アツ以外のなにものでもありません。
安彦さんは、「ガンダム映像を作るのは本作が最後」的な発言もされており、であれば、私にとっても人生最後のガンダム映画だろうと思います。そんな映画のラストで、ガンダムの女神、森口博子さんの歌声をバックに、ホワイトベースがスクリーンいっぱいに飛翔する姿を見られたのですから、もう感無量です。私のガンダムとの思い出も、このあたりで終幕とさせて頂きましょう。