私の高校受験時代(5)~新合宿生活スタート~
伸学社の冬合宿3日目、朝8時に合宿生全員がR号室前に集合し、新しい縦割りの合宿生活がスタートしました。
今度の部屋はL号室で、横割りというのは、中1なら中1、中2なら中2、中3なら中3と、同学年ごとにメンバーが集められ、生活する形式。上下関係が基本的にないので、友人どうしワイワイガヤガヤ、楽しい合宿生活が期待できるというメリットがあります。問題は、リーダーが不在なこと。ややもするとダレた雰囲気の合宿になりやすいということがあります。
これに対して、中1から中3までを同じ部屋に割り当てるのが縦割り。縦割りは、受験直前に迫った中3がいるため、監督が行き渡るのが安心材料です。――私的には、縦割りの方がメリットが多い気がしますね。
こうしてL号室に集まったのは40人くらいの3チーム分でした。
そこから、
午前7時起床。R号室前に集合&ランニングしてから自習。
午前8時、朝食。朝食後、自習。
午前9時~ 1コマ目の授業
午前12時~ 昼食。昼食後、掃除&自習
午後1時半~ 2コマ目、3コマ目の授業、授業後、自習
午後6時半~ 夕食。(炊当というのは、炊事当番で、コメを研いで炊く係。食当というのは、ご飯を出すにあたり、その準備をする係。自習時間中、炊当・食当は、アナウンスが流れると、その準備に出かけます)
午後7時15分~ 食器洗い当番が食器を洗い、他メンバーは自習。
午後9時~ 夜の授業(1コマ)。授業後、自習
午後11時 おやつ。就寝準備で、一斉に布団を敷き、12時前に消灯
という形で勉強に集中するのです。ほんと、すさまじい勉強量です。しかし、L号室での合宿生活が始まって、私はリズムに乗った生活ができたように思います。
それでも、実はそれだけではありませんでした。
私が入江先生のところに泣きついた翌日、
「オレが、半日で中学数学を全部わかるようにしたる!」
と入江先生がおっしゃって、数Ⅰの授業を入江先生が始められたのを今も覚えています。このとき、教室に集められた外部生は、畳の上の机の前に座り、半数くらいがベソをかいていましたね。いや、やっぱり、外部生には、勉強づくしの生活に集中するのがきつすぎたのでしょう。
入江先生の授業は本当に面白いものでした。
黒板の前に立って、
「黒板の位置を教えたい。さあ、どうすればよいか?」
というのが入江先生の最初の問いかけでした。そして、
「わかるもん、手ぇ挙げえ!」
と入江先生が言葉を放つのです。
みんな、とんちんかんな生徒がわけのわからないことを言いますが、
「縦○センチ、横○センチと言えばよい」というのが正解。
「そうや!」
と入江先生が言って、
「縦と横の2軸を立てれば、黒板上の全ての点は表現することができる。
わかるもん、手ぇ挙げえ!」――生徒全員が一斉に手を挙げるのです。
こうして、始まった入江先生の数学の授業は、3時間ていど。でも、この時間にして、いわゆる数Ⅰのアウトラインはなんとなく理解させることができたのでした。
こうして、「関数・座標の授業の始まりは……」と思い返すたび、他の生徒は、「お前、ようそんなん覚えてんなあ」と呆れて言うことがよくあります。確かに、私はひどく印象に残った出来事をずっと忘れない特性を持っていました。興味をもって授業に参加していた私に、入江先生も気をよくしたに違いありません。(続く)