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地域に愛されるカフェを作るために

カフェを始めると決めたとき、正直なところ「地域の方に愛されるお店」というのは、まだ漠然とした目標に過ぎませんでした。
ただ、周囲の環境を考えれば、それは必要不可欠な条件だとは思っていました。

私のカフェは住宅街の一角にあり、
近くには幼稚園やマンモス小学校があり、新しい団地が次々と建つ一方で、古い団地も混在した、どこか懐かしさと新しさが入り混じったエリアでした。
そんな場所で、「地域の人に寄り添ったカフェ」をどう作るのか?色々な準備を進めていても、なかなかイメージがつきません。

一角のギャラリースペースが生んだ新たなつながり

オープン準備の段階でたくさんのカフェ巡りをしてきたのですが、その資料を見返していく中で急遽、思いついて工務店さんにお願いしたのが、約6畳ほどのギャラリースペースでした。

「ここで地域の人が自由に何かできたらいいな」

くらいの軽い思い付きでしたが、それが思いのほか多くの方に利用していただける場となりました。

オープニングを飾ったのは、地元の書道家さんの展覧会。
その展示をきっかけに、絵画展や家具の作品展が続きました。
さらにはコサージュや多肉植物の即売会、ハンドメイドのワークショップまで、実にさまざまなイベントが開かれるようになりました。
あるときはライブ会場にもなり、県外からのお客様をお迎えすることもありました。

ライブ会場になりました
1day shopお洋服屋さん


もしカフェを開いていなかったら、こんな風にたくさんの作家さん方々と出会うことはなかったかもしれません。
イベントを通じて、私自身もたくさんの新しい世界を知ることができました。そして、その出会いや発見に心から感謝しています。

レザークラフトWS


ギャラリースペースが、地域の方々にとっても新しい経験や出会いのきっかけになったのなら、それ以上に嬉しいことはありません。

地域とつながる「レンタルボックス」

ギャラリースペースと並んで、カフェのもうひとつの特徴的な空間が「レンタルボックス」でした。

小さな木箱が並び、その中に地域の作家さん達が作ったアクセサリーや陶器、小物雑貨などが美しくディスプレイされていました。

その光景は、まるで小さな宝箱がずらりと並んでいるようで、私自身も見て回るのが楽しかったですし、新作が並ぶのが待ち遠しくて。

作家さん一人ひとりの個性があふれる品々は、カフェを訪れるお客様にとっても大きな魅力となりました。

あるお客様は、「このお皿が気に入って、毎日食卓で使っています」とおっしゃってくれたり、またある日には、アクセサリーを選びながら友人への贈り物を楽しそうに相談している姿を見ることも。
そんな風に、レンタルボックスは小さな出会いや喜びを生む場となっていました。

作家さん作品の展示販売


このキラキラした小さな木箱たちは、カフェ全体に温かく穏やかな雰囲気を生み出してくれ、そして地域の方々とのつながりも感じさせてくれていたのです。

「お客様」と「距離感」のバランス

カフェを続けていると、お客様も実に多種多様です。

一人でゆっくりとコーヒーを楽しむ方。
久しぶりのランチ会を友人と楽しむ方。
家族とさっと食事を済ませるだけの方。
ケーキとコーヒーを横にパソコンで作業をされる方。
大切な会話をしに来た様子の方……。
いろいろなシーンがあり、どのお客様にとっても居心地の良い空間を目指しました。

そのために「程よい距離感」を大切に。

特に、常連のお客様との「距離感」は、カフェの雰囲気作りにおいて大切にしてきた部分です。

声をかけて下さると私も嬉しくて、つい会話が弾むことも。
でも盛り上がりすぎたら、有能なスタッフが絶妙なタイミングで割って入ってくれる。

しかも、さりげなく。

そんな細やかな気遣いが、カフェの空気感を作っていたと思います。

毎週のように訪れてくださる方もいれば、久しぶりに顔を見せてくださる方もいます。

そのたびに心の中では「ああ、また会えて嬉しい」とハグしたい気持ちになっていましたし、嬉しい気持ちを伝えに行きたい!ってなるのですが、それはなるべく表には出さないようにしていました。

初めましてのお客様も、いつも通って下さるお客様も、どちらも大切なお客様には代わりないのですもの。

そして、適度な距離感を保ちたいお客様もいらっしゃいます。
プライベートなことには踏み込まず。お互いに。
それも大切に心がけていました。

「地域と共に生きるカフェ」の未来

約8年間の営業期間中に築いた地域の方々との関係は、ただお店を営業するだけでは得られなかった大切なものです。
お客様や作家さん達と会話を重ね、ギャラリースペースやレンタルボックスを通じて地域に貢献することで、私自身も多くのことを学びました。

カフェは単なる食事や飲み物を提供する場ではなく、人と人とを繋げる場でもある。
そう気付かせてもらいました。


地域とともに生きるカフェ。

そこでの経験や出会いは、私にとって財産となり、これからの私にもきっと大きな影響を与えてくれるでしょう。

この出会いには感謝しかありません。

この文章を読んでくださったあなたにも、少しでも心温まる、何かが届いていれば嬉しいです。

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