信州在住のプロダンサー3人が、信州で「ストリートダンスを広める一般社団法人」を作るまで。
はじめに
こんにちは。私は長野県松本市出身で、現在長野県塩尻市在住のプロダンサー「ちびゆり」こと小林悠里と申します。
職業「ストリートダンサー」として、ダンスレッスンやコンテストの審査員、イベントへのゲスト出演、アーティストへ振り付け提供などの仕事をして十数年間、生計を立ててきました。
それまでのプロダンサーとして頂く仕事ももちろんやりがいを感じましたし、とても楽しくやらせていただいておりましたが、30歳を過ぎた頃になんとなく「このままでいいのかな?」という思いも抱いておりました。
そんな時、2020年のコロナ禍で、NHK長野放送局のTV番組に出演したことがきっかけで、改めてプロダンサーとしてできる「社会貢献」のあり方というものを考えるようになりました。
そして2022年に、私は仲間と共に、教育機関を中心としてストリートダンスを信州に広めていく「長野県ストリートダンス普及協会」という一般社団法人を設立しました。
今回この法人が、2023年の2月17日で1年を迎えたことを期に、信州在住のプロダンサーの私がなぜこの法人を設立しようと思ったのか、設立してみて実際にどうだったのか、などを文字にして残したいと思いnoteを書くことにしました。
私は地方都市に住むプロダンサーの1人に過ぎませんが、ダンサーの地域貢献のひとつのモデルとして奮闘している様子を知っていただけたら嬉しいです。
私のプロフィールは公式HPからご覧いただけます。よかったらのぞいてくださいね。
1、設立しようと思ったきっかけ
きっかけは2020年~2022年までNHK長野放送局の夕方の番組で放送された「みんなでDISCO」という企画でした。
この番組のディレクターは西川典孝アナウンサー(現在は東京アナウンス室に所属)で彼の圧倒的な実行力でシリーズは約30回放送されました。主にこの企画はプロダンサー3人と西川アナが長野県内の小中学校へ行き、ほとんどダンスに触れたことのない児童生徒たちにダンスを教えに行くというものでした。このプロダンサー3人が、現在の当法人代表理事であるちびゆり、理事であるAzsa、CHOPPA→だったのです。
私はそれまで何回か小中学校へ行ってストリートダンスを教える経験はありましたが、1校につき2~3ヶ月間という長めのスパンで子どもたちへの指導にあたらせていただくと、それまでの経験からは計り知れないほどの学びがありました。特に「子どもたちの心の成長」という部分において、指導を重ねるごとにその成長が手にとるように分かりました。
例えば、授業初日に、目すら合わせてくれず気怠そうに授業を受けていた中学生の生徒たちに出会いました。何回か授業に赴きましたがなかなか本気で向き合う姿勢が見られないことに対して、私たちが「何事も本気でやってみなければ楽しさなんて得られることはできない。」「中途半端にやっていたら一生中途半端なままだ。どうせなら本気で向き合ってみよう。」と言葉を投げかけたところ、次の授業から少しずつ前向きにダンスに向かう姿勢が見られたのです。本番の日は、なんと仲間たちと笑顔を見せて踊る姿を見ることができました。
また、どうしても優劣がつけられてしまう世の中の風潮もあり、なかなか自分を思うように表現することができない小学生の子供たちもいました。そんな時、ストリートダンスが持つ「ネガティブをポジティブに変える力がある」ところや「ありのままの自分でいていい。個性が尊重されるカルチャーである」という側面を私たちが言葉にして伝えてみると、みるみるうちにダンスの動きが大きくなり堂々と自分を表現する姿を見ることができました。
児童の中には普段不登校の子もおり、ダンスの授業も初めは外から眺めていたのですが、段々と集団の中に入り笑顔を見せながらダンスを踊る姿も見られました。
このように、子供たちにストリートダンスが様々な良い影響を与えるのだということを目の当たりにし、この活動をテレビ番組の企画だけで終わらせてしまうのではなく、きちんと事業化させて信州に根付かせたいと強く思いました。
2、設立するまでに辿った過程
ここに関しては、非常に細かい事務的な手続きを踏んでいるので、
どちらからというと「これから一般社団法人を設立したいという方」に向けてお役に立てられるのかなと思っています。ですので、こちらに関してはまた別の機会でお話させていただきます。
3、設立してよかったこと
まず一番は「活動に社会性が生まれる」ことです。
法人になると「少なからず社会的な信頼が得られる」ということがわかりました。相手先の方との名刺交換の時、今まで依頼されたことのない企業などから依頼が来る時など、そのようなことを感じる場面が多々ありましたね。
私たちの相手先は教育機関が多いため、個人より法人でお仕事をお引き受けした方が相手様への信頼感に確実につながると感じました。ストリートダンスを普及させていくためには、やはりこの「社会的信頼の獲得」というのはすごく大切だと思っていました。綺麗事だと思う方もいるかもしれませんが、ストリートダンサーの存在価値を上げていく上でも大事な要素だと思います。
この「見えない価値」を得られたことは、設立してよかったことの一番の理由です。
4、設立してみて大変だったこと、苦労したこと
法人のお金にまつわること全般です。(笑)
今まで個人事業主として確定申告などはやってきていても、会計の知識があるわけでもないですし、ましてや経理などもやったことがない自分は、全てが初めてのことだらけでとても苦労しました。
本当なら税理士さんにお願いして難しいところはお願いしたかったけど、そんな余裕も無かったので決算も自分でやるしかありませんでした。とりあえず会計ソフトとにらめっこしながらなんとかやりましたが、お恥ずかしながら最初本当に「貸借対照表」や「損益計算表」の名前の意味すらわかない所からのスタートで、自分でももうどうしようもないなという感じでした。笑
そんな時に非常にお世話になったのは、公認会計士の山本亮さん(aka ぽろぴぃ)です。山本さんとはロックダンスの繋がりで仲良くさせてもらっていました。今回も設立時や決算期にそれはそれは親身に相談に乗ってくださったり、アドバイスをしてくださりました。山本さんがいなかったら法人のお金周りはきっと大変なことになっていたと思います。笑 ぽろぴぃありがとうございました。
5、設立してみて結局どうだったの?
素直に言うと「めっちゃ大変だけど、設立してよかったと思う!」です。
ストリートダンスを通じて子供たちの心を育て、信州を盛り上げるミッションを達成するためには、やはり個人だけの力では限界があります。
そう言う点で、しっかり法人化させて「見られかた」を変え、今まで個人の力では到達できなかった場所に行きやすくしたのはとても良かったなと思いました。
法人として頂くお仕事そのものも、とてもやりがいを感じています。
学校教育の現場の中に行き実際に授業をさせていただく中で、様々な子どもたちや先生方と関わりあい、現場の生の声や様子を知り、感じたのは、
学校教育(小学校、中学校)の中でストリートダンスがもたらす良い影響は十分にあるということです。体力向上などの身体面はもちろんですが、それ以上に子どもたちの心の成長に寄与していると感じます。特に「ありのままの自分の個性を受け入れる」「のびのびと心を開放し、自分を表現する」「他者との違いを認め合う」などの部分で非常に教育的な側面を持っていると、先生方からもお声を頂戴しました。また、チャレンジする姿勢を育んだり、自分の意思で選択することができることもストリートダンスが教育でお役に立てられる部分だと思っています。
私たちはまさにこの「心の成長」を、これからもストリートダンスを通じてサポートしていけるよう、精進していきたいです。
設立するにあたりとてもお世話になった方々、設立後も変わらず応援してくださった方々、第三者目線で的確なアドバイスをくださる監事の畑山さん、そして設立の段階から熱い想いひとつで一緒に動き続けてくれている理事のAzsaさんとCHOPPA→さんには心から感謝しています。
これからもみんなで熱く動いていきます!
一般社団法人長野県ストリートダンス普及協会の公式HPはこちら。