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文章はカメレオン

本を読むと人格が変わることがある。
そんな怖い話ではなく、作家の文体やクセが自然と乗り移ってしまう経験は、誰でもあると思う。

漫画ではドラえもんと銀河鉄道999に大事なことを学んだが、それ以外の活字で特定の作家に執着することもあった。

集英社コバルト文庫でよく読んだ「新井素子」。星新一の系統のSFからエッセイまで幅広く、ドラマ化された作品もあったはずだ。

文学作品では太宰治の「人間失格」が好きだった。
暗い内省的な文体は影響を受けた。

よくある東大本も読んでみた。
理屈ぽっくて冗長な文章癖も、一冊通して読むと自分のものになった。

そして、朝日新聞の名物ライターが実際に描きた作品も読んでみた。
古今東西の名作のエッセンスを随所に散りばめながら思索を深めていく。
これは真似できないが、苦しみながら書かれたのがよくわかる。

直近では井上ひさしをはじめて読んで恐れ入った。
この才能は真似できない。広大なバックグラウンドを感じてしまうからだ。

結局、単なる読書遍歴を並べてしまったが、一度取り込んだはずの文体も消化されたのかどうか、今では私の中に見る影もない。
本当にその作家になりきってしまったら自分はいなくなるわけだから、それはそれで健全なのかもしれない。

こうして顧みるとビジネス書より文芸作品の方が好みであったことが分かる。
これまで日常にかまけ忘れていたが、難しい現実世界より、空想世界に変幻自在に遊ぶのも一興である。

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