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自治体の財政診断入門(前半)

自治体の財政状況を判断する際に、修正損益計算書を利用しようという新しい視点の書籍です。
これがどう画期的なのか、以下に書いていきます。

現金主義の概念で判断

そもそも、自治体財政の現場においては、予算決算は現金主義で管理されています。
これだけだと現金の出入りだけ(いわゆるフローの概念)で、ストック情報が分からないので判断材料として適切ではありませんね。
よって、ストックの概念である貸借対照表も含めて新地方公会計を活用しましょう。
というのが、地方財政界のトレンドでした。

しかし、この定説とは一線を画しているのがこの書籍の大きな特徴です。
既存の自治体決算書を修正損益計算書に改変して、現金主義の概念だけで診断してしまおうという試みです。

*ここでいう「修正損益計算書」とは著者が提唱する概念で、通常の自治体の現金ベースの決算書を修正した行政キャッシュフロー計算書をいいます。
この手法は財務省の財政融資審査で用いられるものですが、これを解説した初めての文献となります。

4つの検査値で診断する3つの病名

この書籍は表紙からして、医療モードになっています。
著者であるドクターが指摘する項目はコレ!
自治体財政の病名は3つあり、未病のうちに兆候を掴むことが肝要です。
兆候があれば早めに精密検査を行いましょう。もちろん、その手法にも触れられています。

・借入過多(借り過ぎ)
・収支悪化(赤字)
・資金不足(金欠病)

自治体財政の健康診断項目は4つあります。
具体的な検査項目(指標)の紹介があります。

・債務償還可能年数(年)
・実質債務月収倍率(月)
・行政経常収支率(%)
・積立金等月収倍率(月)

臨時財政対策債は債務

もう一つの特徴は、臨時財政対策債です。
これは第二の地方交付税とも言われるもので、後年度交付税措置があるのでこれを財政指標の債務に含めないのが一般的です。
これに対し著者は、臨時財政対策債が地方債であることは間違いないので、指標を評価する際には債務として取り扱おうという立場です。借金は借金だ、という立場ですね。

前半のまとめ

入門書というより、自治体決算についてある程度知識がないとついていけないと思うので、知識と意欲のある方にオススメです。
出版記念イベントはわかりやすかったので、機会があればぜひ!
次回のイベントは1/20の予定です。


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ちび@能登に住むビジネス・エンタメ好き
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