【架空の本棚】真延みゆみ『雪白書』
ボンチノタミ、ジョーカーです。
今日は真延みゆみ(まのべ・みゆみ)著『雪白書』(ゆきはくしょ)を紹介したいと思います。
今回は、結末や犯人についてネタバレがありますので、ご注意ください。
※架空の本棚は、実在しない本の紹介文や感想を書く記事です。作者も本も実在しません。
あらすじ
ミステリー作家・真延みゆみさんといえば、『蜂蜜の砂場』や『放課後の忘れ物』など、実写映画化された作品も多い有名作家さん。
『雪白書』は少し古い作品ですが、真延さんらしさのある、叙情的でどこか切ないミステリーです。
ある雪の日に起きた、小さな村の皆殺し事件。
未解決のまま15年の時が過ぎ、村の唯一の生き残りであった少女ユキは、施設暮らしを経て、都会で成人を迎えます。
15年間、日常生活を送りながら、成人して自分がひとりで動けるようになっても事件が未解決のままだったら、犯人を自らの手で探し出してやろうと心に決めていました。
彼女は住み込みアルバイト先の喫茶店で六花という探偵と出逢い、彼の元へ押し掛け、居候となります。そして、ふたりは15年前の殺人事件の真相を追い始めます。
登場人物
ユキ
本名は白樺ユキ。
15年前に雪深い山間にある小さな村で起こった住民皆殺し事件の唯一の生き残りで、当時5歳だった彼女は、事件のことも自分の名前も何も覚えていなかった。
その後は保護され、施設で育つ。
誰にでも優しく、明るく真っ直ぐな性格だが、心の奥底には両親や村の人を殺されたことに対する言いようのない恨みや憎しみが燻っており、20歳になっても事件が未解決のままだったら、自分で真犯人を見つけてやろうとずっと心に決めていた。
ただ、両親のことや自分が5歳までどう過ごしていたかなどは実際、覚えていない。それでも大切なものを失ったという感情だけは強く、それを糧に生きてきた。
住み込みでアルバイトをしていた喫茶店にやって来た私立探偵の六花と出逢い、彼に協力してほしいと頼み込む。
半ば押しかける形で助手として探偵事務所に居候を始め、15年前の事件について調べ始める。
六花(むつはな)
私立探偵。腕は悪くないが、人付き合いがあまり得意ではないため、依頼はそれほど多くない。
行きつけの喫茶店で住み込みのアルバイトを始めたユキと出逢い、15年前の事件を追うこととなる。
実は六花自身もあることがきっかけで数年前からこの事件を追っており、ユキには言っていないが、彼女が自分の探していた唯一の生き残りであることを知って、彼女の居候を受け入れる。
人付き合いは得意ではないが、人と話すことが苦手というわけではなく、聞き込みの際には相手に合わせて様々な人物を演じ分けることができる器用さを持つ。
ユキと過ごすうちに、自分の中にあった事件への疑問や謎が少しずつ解けていくのを感じ、残酷な事実を察しながらも、真相へ迫っていくこととなる。
印象的なシーン
六花の聞き込み
六花は普段はふらふらへらへらした男ですが、いくつもの仮面を持っています。
まるで人格をいくつも持っているかのような六花ですが、もちろんそれは全て演技です。
相手がどのような人物を好むのか、その観察眼で見分けることで、その人に合わせてキャラクターを変えます。この六花の百面相は読んでいて面白いです。
ユキの記憶
事件の真相を追ううち、当時のユキの記憶が少しずつ戻ってきます。
殺人犯から逃げるユキの記憶のように思えるのですが、これが事件の真相解明に重要な内容となってくるのです。
ここでネタバレになるのですが、犯人はユキです。
最初からなんとなくそうかなとは思っていたんですが、わたしはこの記憶で確信しました。
捕まったら終わる、逃げなきゃ、というのは自分が犯人であるからこその心境だったのです。
ユキの正体
ユキが、自分が犯人だったと思い出すシーンです。
ユキは幼いころから両親や村人たちから疎まれており、ハクというもうひとりの自分を作り出すことで逃げていました。
そのハクが、ユキを唆しおこなったのがこの殺人事件です。
六花の百面相も、彼女がハクのことを思い出すきっかけとなっており、徐々に自分自身を疑い始め、最後に自分がやったのだというところまでたどり着いたときのユキの気持ちを考えるとなんともいえません。
六花も結構前から気付いているんですが、彼女が自分で受け入れられるタイミングを待っていたようでした。
架空の本棚
というわけで、今回は真延みゆみ著『雪白書』を紹介しました。
今作も実写化するそうなので、興味のある方は読んでみてくださいと言いたいところですが、こんな本もそんな作家も存在しません。
ありがとうございました。
以下オマケです。
『蜂蜜の砂場』
『放課後の忘れ物』
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