インフルエンザと新型コロナウイルスのワクチンの違い
今回は、🐔（先生役）ひとりで解説しますね。
「ワクチン」と「予防接種」の語句の説明
ワクチン・・・体内に入れる抗原
予防接種・・・ワクチンを注射で体内に入れること
体内の免疫システムではたらく「記憶細胞」を作ることが予防接種の目的。
抗原（毒性を弱めたり、不活性化した病原体）を、あえて注射で体内に入れて記憶細胞を作る。
🐔 ワクチンの予防接種で有名なものは次の通り
インフルエンザ、麻疹、結核などの、感染で広がる病気。ワクチンの予防接種は、免疫システムの「二次応答」を利用したものです。
🐔 ワクチンにも違いがあります。
インフルエンザウイルスのワクチン
「弱毒化したり、不活性化した病原体」新型コロナウイルスのワクチン
「スパイクタンパク質の設計図であるmRNA」
免疫の種類について
体液性免疫とは
体液（リンパ液など）中に「抗体」（戦う道具）を流し、抗体と抗原とを結合させる免疫です。だから体液性免疫という名称がつけられているのね、と覚えましょう。
🐔 抗体を作って抗原と戦う方法は「体液性免疫」。
抗体は「戦う道具であり、免疫グロブリンというタンパク質」でできています。
抗原は「病原体」です。
予防接種の目的は、抗体を作ることです。
🐔 じゃあ、抗体はどうやって作られるのか。
① B細胞が抗原を認識して少し活性化する。
② ヘルパーT細胞が、少し活性化したB細胞をさらに活性化。
（①と②をイメージで表すと）
B細胞が抗体を作ろうかなという気持ちになったところに、ヘルパーT細胞がB細胞の気持ちを後押しして、完全に抗体を作る気持ちにさせる。
③ B細胞は増殖し、「抗体産生細胞」に分化する。
④一部のB細胞は記憶細胞に分化し、そのまま体内に残り、次に同じ抗原がやて来た時のために待機しておく。
⑤抗体産生細胞が、抗原に特異的な抗体を大量に作る。
抗原の倒し方
細胞性免疫とは
キラーT細胞が、感染細胞を直接破壊する仕組み。
🐔 感染した細胞を直接破壊する免疫システムは「細胞性免疫」。
①樹状細胞から抗原提示を受けたキラーT細胞が、抗原の情報を認識し、増殖する。
②増殖したキラーT細胞の一部が記憶細胞となり体内に残り続ける。
③キラーT細胞は、抗原に感染した細胞そのものを破壊する。
④破壊された感染細胞は、マクロファージが食べてくれる（食作用）。
ワクチン接種は何を目的にするのか。
B細胞は、抗体産生細胞と、一部が記憶細胞に分化する。
キラーT細胞も、一部が記憶細胞に分化する。
ワクチン接種の目的は、病原体（毒性を弱めたもの、不活性化したもの）を抗原として体内に注射し、記憶細胞を作ること。すると、２回目に同じ病原体が体内に侵入してきたら速やかに撃退できる。
🐔 なぜ記憶細胞を作らせたいのか。
抗原が２回目に体内に侵入してきたとき、B細胞の記憶細胞のおかげで１回目よりも素早く抗体を作ることができるし、キラーT細胞の記憶細胞のおかげで感染した細胞を速やかに破壊することができるからです。これらの反応を、二次応答と言います。
🐔 二次応答とは
記憶細胞が１回目よりも速やかに、短時間で抗原を除去すること。
🐔 新型コロナウイルスのワクチンの予防接種は、弱毒化した病原体を用いる方法とは違います。
免疫システムの「二次応答」を利用するけど、そこに至るまでの流れがちょっと違います。
注射で体内に入れるのは、弱毒化したウイルスではなく、スパイクタンパク質（抗原）の設計図であるmRNAです。
スパイクタンパク質とは、この図で言うと表面の赤いトゲトゲのことです。体の細胞の表面には「受容体」という部分があり、このスパイクタンパク質と結合することでウイルスが細胞内に侵入し、感染してしまいます。
新型コロナウイルスの感染を防ぐために、ウイルスのmRNAを体内に注射します。そうすると、この設計図を元にして、体内でスパイクタンパク質（抗原）が作られます。
作られたスパイクタンパク質に免疫システムが発動し、攻撃方法を覚えるのです。こうすると、いざ本物のウイルスが入ってきても感染させないようにするのです。
この流れは、免疫システムの「二次応答」と同じですね。
ただ、新型コロナウイルスは、どんどん形が変異していくので、攻撃方法を覚えたとしても、まったくちがうウイルスの形をしていたら攻撃ができません。だから、２回目、３回目、と感染してしまうのです。
世の中では第○波が流行しています、と言われていますが、どこまで続いていくのでしょうか。こればかりは分かりません。
飛沫感染なので、人が多いところでは、しっかりと鼻までマスクをして予防することが大切です。