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(約800字)
土曜日。小雨。
優しい雨が降ってた。
外出しなくていいよ、
家で好きなことをやりなさい、
と空全体で許してくれる空気。
午後1時すぎに、実家から電話があった。
「お父さんが買い物があるから、そっちに行くって。この前、注文していた通販の服が届いたから持っていくよ」
妹からの電話だった。
私から電話することは殆どないので、連絡事項みたいな淡白な会話しかしない。
あと一時間くらいかな。
高齢の父は車の運転が好きだが、最近はヘタになってきて心配。
いつも反対車線側のお魚屋さんに寄って、好物の刺身を買って帰るので、先回りして、私が住む近所のスーパーで「カツオの刺身」を買うことにした。
急いで着替えて外へ出て、傘の群れにまぎれた。
父が好きなカツオの刺身は、家族の他の人には人気がない。
カツオのタタキではなく、刺身が好きな父。
妹は食べないから、サーモンも選ぶ。
母は両方とも、どちらでもいい人。
キタアカリの牛肉コロッケも一袋。
母はむしろケーキなどの甘いものを喜ぶので、ケーキ屋さんの切れ端の詰め合わせにした。
人気のケーキ屋さんで運が良くないと売っていないが、ガラスケースの奥に一つだけ見えたので購入した。当たりのときにはフルーツがたくさん入っていたり、プリンが挟まれていることもある。中身は見えない。
父に買ったものを説明して渡すと、嬉しそうに帰っていった。
夜に改めて電話すると、妹が昼間は文句を言っていたのに、買ったものを喜んでいた。
「お金、使わせたくなかったのに、悪かったね、ありがとう。すごい美味しいよ」
「いいの、明日は仕事だから多分、連絡できないから、お母さんに母の日おめでとう、って
言っておいて」
と妹に話すと、
後ろで父が「うまいよ〜」とふざけていた。
母は、2日後の手術のため、目に悪い菌が入らないようにしていて外出ができない。
家事も控えている。
妹の負担を軽くしたかった。
また本日も雨予報。
優しい雨は、外出しなくていい、
と今日も降り続ける。