あなたがどんなに生きるのが辛くても
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あなたがね、どんなに大変な境遇でも、
あなたは数えきれない屍を犠牲にして
生きているんだよ。
あのアジフライは、
あなたに食べられるために生まれてきた。
漁師に沢山の仲間と一緒に捕らわれて、
港で値踏みされて、
スーパーで揚げられて、
半日くらい買う人がいなくて、
日が落ち始めたころに
安売りのシールが貼られて。
あなたがたった一つのコインを使って、
100円くらいになった
海の中で悠々と泳いでいた一つの命。
「あ〜、骨にあたっちゃった。
フライがチクチクする、ちょっと、コレ、
冷めてない?」
なんて、文句を言われたりして、
他のおかずと一緒に食べられる。
ご飯粒は、
苦労した稲作の農家の人たちの
汗や、腰の痛みなんかを乗り越えて、
あなたの台所まで、やってきた。
モノは、喋らないけれど。
最後にこの生き物は、
この生き物の
糧になって、
あなたの体の一部分になっている。
どんなに 意地悪をする人間のところにも、
どんなに 悪事を企む人間のところにも、
人を傷つけて平気な人間のところにも、
アジフライや、肉じゃがや、みかんゼリーや、
いろんな 食べものは届く。
私が家畜のニワトリなら、
優しい人に食べられたいけれど。
そんな自由は、食べられる側にはなくて。
たくさんの屍を犠牲にしていることを
思い浮かべる人すら
いないかもしれない。
今日のご飯は、美味しくなかった、なんて
お母さんに文句を言ってたり。
こんなの、食べたくない、って
ふてくされて食品をゴミ箱に入れたり。
いい加減にしてくれ、と
ゴミ箱に入る食べ物は言わないけど。
静かに捨てられるだけだけど。
あなたも同じことを考えるだろうか
不在が悲しくて、
こんな悲しい記事になりました
追伸 春に咲いたサクラの木に、さくらんぼの実がついていました