佐倉里山大学 第8回ワークショップ
第8回はワークショップ(班単位でのグループディスカッション)を行い、最後に修了式となりました。私もオブサーバーとして参加。
まず、ワークショップに先立ち、「里山の未来」と題して原副学長からのお話。第1回、第2回の講義の復習を含めて、大学の一年を振り返るとともに、佐倉里山自然公園における新しい里山(里山の未来)像について、各団体の現在の活動にも触れながら、自然公園の計画理念「私たちがつくる21世紀の里山自然公園」の紹介がありました。
副学長のお話のなかで印象に残ったのが、里山を「景観」としてとらえる視点と里山文化の継承でした。
前者は、水田、畑、ため池、小川、森林、住宅などの構成要素(生態系)のモザイクとしてとらえるということで、詳しくは2年次の講義で学ぶというです。
私は、里山管理のゾーンニングにつながる一方で、構成要素をバラバラにとらえるのではなく個々の要素が有機的につながった一つの大きな景観(生態系)ととらえる必要があるということと解釈しました。
後者については、「人間は自分が文化の担い手であることを知ったときに、誇りを持って行動できる」「文化とはわれわれが歩んできた道をみつめ、その道を将来に向けて発展させていくときの道しるべとなるものである」(『自然を守るとはどういうことか』守山弘1988)という言葉が紹介されました。
そして、「里山を文化にまで高めることができれば、永続的に発展させることができる」と訴えました。
失敗学の提唱者である畑村洋太郎氏は著書(未曾有と想定外─東日本大震災に学ぶ)の中で「個人レベルでは3日で飽き、3か月で冷めて、3年で記憶は減衰する。組織レベルでも30年もすると忘れ去られてしまう。地域では60年、社会も300年も経つと忘れる。」「1200年も経つと文化的にも何もなかったことになってしまう。」と言っているそうです。
1200年後の日本を想像することは容易ではありませんが、里山の荒廃が問題となる昨今、「文化とは皆で力を合わせ継承発展さていくもの」(前掲、守山)との認識のもと、副学長は里山文化の継承とともに新しい里山のあり方、「シン・里山」の創出の決意を我々にも求めたものと受け止めました。
さて、ワークショップでは、われわれの里山公園でどのような里山を目指すのか、どうつくるのか、その里山に自分がどのように関われるのかなど大きなテーマ設定はあったものの、班ごとに自由にディスカッションを行いました。
一人ひとり、ポスト・イットに思うことを書き出して、模造紙に貼っていってから、共有のテーマ・内容にまとめていく班もあれば、話の流れでテーマを決めて意見を出し合って、そこからまたテーマ・話題を移していくようなやり方をしている班もありました。
進行の都合上、30分しか時間がとれなかったので、大丈夫かしらと心配してみていましたが、各班、しっかりまとめて発表。
以下、いくつか特徴的な(だと私が感じた)内容を整理して紹介します。
なお、はしり書きしたメモをもとにしているので思い込みがあったり、整理したことで話の文脈が変わり、発言者の意図が正確に再現されていない場合もあることはお断りしておきます。
・里山を次世代に繋いでいくという点では、多くの子供たちに来てほしい。
・小学校の授業に里山を取り入れる必要もあるのでは。(懇親会の場では、小学校区まちづくり協議会との連携の提案も。)
・子供たちはもちろん、いろいろな世代の人が集まるとよい。里山では人間を含めて生物多様性が大事。
・今、里山に関心がない人たちをどうやって取り込んでいくか、掘り起こしが必要。
・もっとPR活動を。コマーシャルビデオの作成など自分たちから発信する。
・昔の里山は暮らしと遊びの場だったが、今は暮らしの場としての機能は失われている。里山への義務感、危機感よりも、楽しいから自然に足が向くというのがいい。
・里山保全の担い手を(手弁当の無償ボランティアに期待するだけでは)確保するの難しくなっている。里山が資本として続き、里山活動で稼げる、経済が回るという視点も大事。
その他、駐車場やトイレの整備の要望、ビジターハウス建設の提案、いろいろなゼミを作ってもっと学びたいという意見も複数ありました。
最後、副学長の講評では「みんなの思いが出されてよかった。」「こういうときに教員をやっていて本当によかったと思う。」と最高の誉め言葉がありました。
この日までに15名の方からチェーンソーの特別安全講習の申し込みがあり、また、多くの方が2年次への進学の意思をもっている聞いています。
夜の懇親会も盛り上がり、1年間、里山大学に関われたことを改めて嬉しく思いました。来年度の実習の実施でも頭を悩ませることになりそうですが、受講生との距離感も縮まって楽しくできそうです。