キーワードは「I’m OK. You’re OK」——稲葉俊郎『いのちは のちの いのちへ』を読んで
みなさん、こんにちは。牛ラボマガジンです。牛ラボマガジンでは「牛」を中心としながらも、食や社会、それに環境など、様々な領域を横断して、たくさんのことを考えていきたいと思っています。
今回は、医師である稲葉俊郎さんの『いのちは のちの いのちへ』という本を読んで考えたことをお届けします。
この本では、稲葉さんの考える「いのち」について、自然とのかかわり、安らぎの感じ方、こころの健康などさまざまな角度から書かれています。
私たちもウシノヒロバを通じて、訪れる人たちのこころの健康に貢献したいと考えています。そういった点で、この本にはたくさんのヒントがありました。
🌱🐮🌱
一度、立ち止まってみる
著書である稲葉さんは、序文のなかで、
と語っています。
この本では、単に病気を治すとか、怪我を治すとか、そういったことではなく、「めまぐるしく代わる現代において、どうすれば豊かに暮らすことができるのか。そして、豊かさとはいったい何なのか」ということについて、ひたすら書かれています。
たしかに大切なことのような気がします。お金があるだけでは幸せになれない、とはいえ格差も確実に存在し、お金に困って不幸せな人も多い。これではいったいどうしたらいいのかわかりません。このまま社会を走り続けても同じことの繰り返しになりそうです。稲葉さんの言うように、私たちは一度立ち止まる必要がありそうです。
「避難場」を持つということ
第一章のなかで、
とあるように、稲葉さんは「場」——それも優しさが循環する場——を大切にしています。この本のなかでは、たびたび「場」に関する記述が登場します。
象徴的なのは第二章の、
という箇所です。
社会学者の宮台真司さんも、ことあるたびに「社会にはホームベースが必要である」というようなことを言っています。これは安心する場所、いつでも帰ることができる場所のことです。
社会のなかで生きていると、どうしてもつらいことや悲しいことがあります。そんなときに、ずっとそこにいてはこころが壊れてしまいます。だからこそ「避難場」が必要です。それは決して敗北ではありません。健全な休憩、気持ちの切り替えです。
ひとつの場所で一生懸命にがんばることは美しいことだと思います。しかし、それは同時に、危ないことでもあります。そこで何かあったときに、どうしようもなくなってしまうからです。だから、多くの人間には、避難場が必要なのです。
また、稲葉さんは同じ章のなかで「安心」ということの重要性も説いています。仏教では「幸せ」のことを「安心(あんじん)」と言うそうです。このように、安心と幸せには密接なつながりがあります。
避難場やホームベースは、もちろん安心が前提です。そういった安心する場を持つことが、それぞれの幸せのヒントになるのかもしれません。
「I’m OK. You’re OK」
最後に紹介したいのは、上記の一文です。この文章のなかで言われている「I’m OK. You’re OK」は、ウシノヒロバも大切にしたいと思っている考え方のひとつです。
ウシノヒロバには、「訪れる一人ひとりの自律性を尊重する」という約束があります。まだまだ足りない部分もたくさんありますが、いつ、どんな人が訪れても、「I’m OK. You’re OK」と言える場を目指して、日々さまざまな改善を続けています。
世の中にはいろんな人がいます。そして、いろんな人がいるからこそ、世界は素晴らしい。お互いがお互いを尊重し、そのままを肯定し合える世界、そんな世界の実現に少しでも貢献したいと思っています。
稲葉さんは医師、ウシノヒロバは牛が暮らすキャンプ場、まるで違うと思うかもしれません。ですが、「場」と「場の持つ力」を大切にしたいという考えは同じです。そして、「豊かさ」に貢献したいという目的も同じです。だから、この本の中にはウシノヒロバにとってたくさんのヒントがありました。
優しさが感じられ、その優しさが感染するような場所になれば、きっとそこは安心する場所になるはずです。安心する場所は、人々に安らぎを与え、幸せの実感を運んでくれるかもしれません。
ウシノヒロバがそんな施設になるように、これからも勉強と改善を続けていきたいと思います。
🌱🐮🌱
『いのちは のちの いのちへ ―新しい医療のかたち―』稲葉俊郎
https://www.amazon.co.jp/dp/4877588086
🌱🐮🌱
牛が暮らすキャンプ場「千葉ウシノヒロバ」のホームページはこちら。
宿泊の予約のほかに、オンラインショップではオリジナル商品などを購入することもできます。
・ホームページ
https://ushinohiroba.com
・オンラインショップ
https://shop.ushinohiroba.com
SNSではウシノヒロバの様子や、イベントのお知らせなどを発信しています。ぜひご覧ください。
・Instagram
https://instagram.com/chibaushinohiroba
・Twitter
https://twitter.com/ushinohiroba
🌱🐮🌱
(執筆・編集:山本文弥)