スマホの15秒動画で、人の可能性は見えるのか? ホンネの就活を応援するReeluの挑戦
こんにちは、千葉道場ファンドです。
千葉道場ファンドは、新卒向け就職活動のためのスマホアプリ「Reelu(リール)」の開発・運営を行う株式会社Reeluに出資を行いました。Reeluは、TikTokなどのSNSで利用が広がる「タテ型・短尺動画」をダイレクトリクルーティングに活用したサービスです。代表取締役CEOの今野珠優さんは、今年4月にReeluを設立。現在、サービスの正式リリースに向けて開発を進めているところです。
Reeluの今野さんに、千葉道場ファンドのベンチャーキャピタリスト・木村拓哉がインタビュー。前・後編の2回に分けて、起業の経緯やReeluのサービス内容、千葉道場ファンドとの関わりについて語っていただきます。
人が挑戦するきっかけをつくりたかった
木村拓哉(以下、木村):まずは今野さんの経歴を教えてください。
今野珠優(以下、今野):秋田県出身の平成元年生まれです。新卒で旅行代理店のH.I.S.に入社しましたが、父親が会社経営者だったこともあり、「自分もいつか会社をつくりたい」という思いが心の片隅にあり、9カ月で退職しました。
2015年、観光エンターテイメント事業を展開するFun Groupに参画し、7年間勤めて最終的に取締役COOになりました。そのFun Groupを辞めて2022年4月に株式会社Reeluを設立し、現在に至ります。
木村:旅行の業界から人事の領域にシフトチェンジしたのはなぜでしょうか?
今野:前職ではCOOとしていろいろな業務を担当していましたが、なかでも好きで得意な業務は人材採用でした。もう一つの担当業務だったM&Aも、いわば会社単位での採用活動ですよね。採用やM&Aという仲間集めについて、とても考えていた7年間でした。ですから、旅行業界から採用業界にシフトチェンジしたといっても、やっていることはほとんど変わらないんです。
また、事業ドメインとしても海外旅行と採用は、ある意味で共通しています。海外旅行に行くことも、就職することも、新しい世界に思い切って飛び込むという挑戦の一種だからです。「人が挑戦するきっかけを増やしたい」というのが私の動機で、その対象が旅行から人材採用になったということ。自分のなかではそれほど違いはないという感覚です。
15秒という短い動画に、人柄が如実に表れる
木村:Reeluのサービス内容を教えてください。
今野:“1分で4人に出逢える”をキャッチフレーズに、新卒者向けダイレクトリクルーティングのサービス「Reelu」を提供しています。SNSの世界では、数秒から数十秒という短尺のタテ型動画が盛り上がっていますよね。Reeluも15秒の短尺動画を使っているのが特徴です。
学生はスマホアプリで、基本の属性情報に加え、簡単な質問に答えるかたちで15秒の動画を撮ります。企業はその動画を閲覧したうえで、スカウトを送るという仕組みです。学生に対しては、「短い動画を使って企業とカジュアル面談するサービス」と説明すると理解してもらえます。
Reeluが提供するのは、お決まりの履歴書を書いて、リクルートスーツを着て……という形式ばった就活スタイルではありません。だから学生時代に力を入れたこと、いわゆる「ガクチカ」を記入する必要もありません。自然な自己開示をテーマにした、よりテンポの良い就活ができるアプリを目指しています。
Reeluをリクルーティングに利用する企業にとっては、学生が撮影した短尺動画を通じて、彼らの人柄やコンピテンシーを把握できるというメリットがあります。現在はβ版アプリを先行ユーザーに公開し、2023年1月の正式公開に向けて開発を進めています。
木村:ダイレクトリクルーティングに動画を使った理由は?
今野:企業が自社に合う求職者を探してアプローチするダイレクトリクルーティングのサービスは、他にもいろいろあります。でも、そこで求職者が提示する情報といえば、履歴書や職務経歴書といった文字情報と写真だけですよね。それだけでは本音を語れないし、企業も求職者のことをよく理解できません。
Reeluでは、「#最近うれしかったこと」「#最近ハマってること」「#最近新しく始めたこと」などの質問をいくつか用意し、これに対して学生がそれぞれ15秒以内の動画で答えていきます。動画にすることで、自然なかたちで自己開示ができ、最初から本音で企業にアプローチできるのです。
木村:15秒というと短いですが、そこから得られる情報は多そうですね。
今野:たった15秒でも本当に面白いですよ。撮影した人の普段の話しぶりや性格が自然と出てしまいます。思いっきり噛んだ動画を撮り直さずに上げてくる強者もいます(笑)。「服装はいつもの私服で」とお願いしていますが、そう言われて何を着るのかにもその人の個性が表れますよね。また、どんな場所で撮影するかも、個性が表れるポイントです。外で撮影する人もいれば、留学先の寮の部屋で二段ベッドを背景に撮影する人もいます。
文字だったらいくらでも自分を飾ることができますが、15秒という短い動画を一人で撮るとなった時、飾ることは難しく、その人の生き方が端々に出てしまう。そこが面白いと思っています。
また、企業もそういう動画を見ると、コピペ文でスカウトを送るわけにはいかなくなります。例えば、「最近は京都の川を散策するのにハマっています」という学生に対しては、企業の採用担当者も「私も先日京都に来ましたよ……」というふうに、学生一人ひとりに対して個別のスカウトメッセージを送るようになります。そこも面白いなと感じています。
木村:動画を起点に、求職者と採用担当の間に自然なコミュニケーションが生まれるんですね。
今野:そうなんです。Reeluからコミュニケーションを始めることで、次のステップにある面接もかしこまったものではなく、一歩踏み込んだ、自己開示がきちんとできる面接体験に変わっていくと考えています。
自分の言葉で語ってもらうには15秒が最適だった
木村:動画の長さを15秒に設定したことには何か理由があるのでしょうか?
今野:もともとは30秒で始めました。そしてテストとして学生に30秒の動画を撮ってもらったら、彼らはスクリプトを用意して読み上げていました。それだと文章を書くのと同じで、飾られた自己紹介になってしまいます。そこでどんどん短くしていき、結果、彼らがスクリプトを作らずに自分の言葉で語ってくれた長さが、15秒だったんです。
学生からすると15秒って物足りないようです。だから結構早口でしゃべらないといけません。動画を閲覧する企業にとっては、その早口でしゃべっている様子も含めて、15秒くらいがちょうどよいと思ってもらえるようです。
木村:プレスリリースには、「“1分で4人に出逢える” 人柄採用DXのReelu」という企業目線のキャッチフレーズが書かれていたので、効率性を求めて15秒にしたのかと思っていましたが、実はそうではなかったんですね。
今野:結果として効率性が上がればいいのですが、それよりはまず楽しさ重視です。学生がつくった動画を採用担当者が見て、「楽しいね」「この人、良くない?」という感じで会話が弾んで、気づいたらたくさんの候補者を選んでいたという状態にしたいのです。
1分で4人の動画を見るとしたら、1時間で240人。1カ月ならすごくたくさんの求職者と出会える。その結果、採用のDXにもつながるというのが理想です。
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Reeluの魅力がだんだんわかってきましたが、前編はここまで。後編はこちらからご覧ください!
Reeluのホームページ、サービス情報はこちら!
文:平 行男
編集:斉尾 俊和