道が考える将来の北海道観光のあり方について(2024.10.3 北海道議会 食と観光調査委員会 質問)
皆さん、こんにちは。
北海道議会議員の千葉真裕です。
令和6年10月3日の食と観光調査特別委員会において、質問を行いました。
なお、今回登場する、令和6年6月の第2定例道議会における知事答弁は以下のとおりであり、「北海道総合計画」については、下記リンク(観光分野の目標については本編45p.)をご参照ください。
一 道が考える将来の北海道観光のあり方について
道は、本年6月の第2定例道議会におけるわが会派代表格質問に対し、「世界が評価する観光立国・北海道の実現」を目指す旨の答弁を行い、また、本年7月に策定された、概ね10年後、2030年代半ばの目指す姿およびその実現に向けた政策展開の方向を示す、道の最上位の計画に位置付けられる「北海道総合計画」では、観光分野の目標を、「世界トップクラスの観光地・北海道」とされています。
そこで、以下、数点伺います。
(一)「世界が評価する」について
1 「世界が評価する」北海道観光について
まず、代表格質問に対する答弁にある「世界が評価する」とは、具体的には、どういった方々に、どのような部分を評価してもらえることを目指す考えなのか、また、「世界が評価する」ことによって、北海道がどのように裨益すると考えているのか、現時点での所見を伺います。
【答弁:後藤 経済部観光局長】
「世界が評価する」北海道観光についてでありますが、国内外の観光地との競争が激しくなる中、世界が評価する「観光立国北海道」の実現を目指すためには世界各国・地域から訪れる旅行者の本道の美しい景観や食、アクティビティ、受入体制などに対する満足度を高めることが重要と認識しているところでございます。
道は、観光機構とともに、北海道を訪れた旅行者を対象として、北海道来訪者満足度調査を実施しており、この調査では、外国人が「また必ず来たい」と回答した割合は、旅行に「とても満足」した方が「満足した」した方に比べ約20ポイント高く、満足度が高まることにより再来訪意欲も高まる結果となっていることから、海外から本道を訪れる旅行者の満足度向上を図ることは、さらなる誘客拡大効果等を生み、本道の観光関連産業の発展や地域における交流人口拡大などに繋がるものと考えております。
2 定量的データや分析の裏付けについて
ただ今答弁のあった、「世界が評価する」ことによって、北海道がどのように裨益するかにかかる道の想定する因果関係について、定量的データや分析の裏付けが必要と考えますが、今後どのように取り組んでいくのか、伺います。
【答弁:小田桐 経済部観光振興監】
定量的データや分析の裏付けについてでございますが、道としては、満足度調査をはじめとする各種調査において、今後、統計の手法を工夫しながら、施策展開の方向性等の検討に活用するためのマーケティングの在り方を検討してまいります。
(指摘:千葉 真裕)
ただ今、「今後、統計の手法を工夫」する旨の答弁がありました。
現行の満足度調査は、収集したデータをわかりやすく要約するといった、いわゆる「記述統計学」の範囲にとどまりますが、収集した属性データからその属性の母集団を推測する「推計統計学」の手法等を活用することができれば、より有益な解析結果を導くことができるようになるでしょうから、外部専門家の力も借りながら、是非研究していただきたいと思います。
(二)「世界トップクラスの観光地」について
1 「世界トップクラスの観光地」の定義について
「北海道総合計画」における「世界トップクラスの観光地」とは、どういった地域と比較して、どのような分野で「世界トップクラス」を目指す考えなのか、現時点での所見を伺います。
【答弁:小田桐 経済部観光振興監】
「世界トップクラスの観光地」についてでございますが、国では、「世界トップクラスの観光地域」を「そこでしか得られない「特別な体験」が地域にあることに気付き、それを観光資源として活かしてビジネスへと高め、地域が一体となって支え合っている地域」と定義しており、その実現のためには、新たな観光コンテンツの創出や受入環境整備、持続可能な観光地域づくりが必要としているところでございます。
道におきましては、この考えも踏まえ、雄大で豊かな自然はもとより、縄文遺跡群やアイヌ文化といった地域資源、さらには良質な食や多様なアクティビティなど本道の強みを生かして、本道経済にも寄与する地域と一体となった持続可能な観光地づくりの取組みを推進し、世界トップクラスの観光地づくりを目指していく考えでございます。
<再質問:千葉 真裕>
ただ今の答弁で、「世界トップクラスの観光地」の定義について、国の定義を引用されております。
わたくしが調べた限り、「世界トップクラスの観光地域」との文言は、国が策定した、第9期北海道総合開発計画に記載がありますが、同計画には「世界トップクラスの観光地域」の定義自体の記載はなく、策定後の各種セミナー資料に記載があるのみであり、計画策定のための作業部会等の議論でも正面から議論された形跡もありません。
また、かかる定義とされるものは、第8期北海道総合開発計画の広報資料において、「世界水準の観光地」の定義として用いられているものであります。
「世界水準」、いわばスタンダードと、「世界トップクラス」の定義が同一であるというのは、わたくしは大変不思議に思うところであります。
わたくしが思うに、「そこでしか得られない」云々というのは、「世界トップクラスの観光地」が通常備えているであろう要素のひとつに過ぎず、その要素さえ備えていれば「世界トップクラスの観光地」であるとは言えないことから、定義として甚だ不適当であり、十分な検討が行われていない証左であると考えます。
わたくしは、道が、このような曖昧模糊とした「霞が関文学」に付き合う必要はなく、道が、主体性をもって、目標とする「世界トップクラスの観光地」とは何か、しっかり掘り下げる、煮詰める必要があると考えますが、振興監の所見を伺います。
【答弁:小田桐 経済部観光振興監】
「世界トップクラスの観光地」についてでございますが、国では、本年3月に第9期となる北海道総合開発計画を閣議決定し、その中で「観光立国を先導する世界トップクラスの観光地域づくり」を本計画の主要施策の一つとして掲げているところでございます。 国は、「世界トップクラスの観光地域」を「そこでしか得られない「特別な体験」が地域にあることに気付き、それを観光資源として活かしてビジネスへと高め、地域が一体となって支え合っている地域」と定義しており、道としては、この考えも踏まえ本道経済にも寄与する地域と一体となった持続可能な観光地づくりの取組みを推進しているところであり、今後の観光施策の検討にあたっては、「世界トップクラスの観光地づくり」のあり方についても議論を深めていくことは重要と考えているところでございます。
また、私自身、国土交通省におきまして、先生からご指摘をいただきました北海道総合開発計画を担当していたことがございまして、大変厳しいご指摘をいただいたと受け止めております。現在、観光振興監の職責を預かる者として、将来の北海道観光の発展に向け尽力して参ります。
(指摘:千葉 真裕)
「北海道総合計画」は、道民や市町村をはじめ多様な主体と連携し、ともに行動していくための指針となる計画であり、そこで示される目標は、誰もが明確にイメージできるものでなければならないのであります。
その点を十分に踏まえ、道が目指す「世界トップクラスの観光地」とは何か、議論を深めていただくこと、併せて、道としても世界各地の名だたる観光地が、どういったデータやエビデンスを用いて、戦略を描き、どのようなマーケティングを展開しているのか研究し、知見を深めていただくよう、強く指摘いたします。
今後も引き続き質していくことを申し添え、質問を終わります。(了)