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2024.11.11 北海道議会 決算特別委員会(第2分科会:建設部所管事項)質問

 皆さん、こんにちは。
 北海道議会議員の千葉真裕です。
 令和6年11月11日、決算特別委員会(第2分科会)において、質問を行いました。


一 既存住宅のリフォーム促進等について

 道では、令和3年度に策定した北海道住生活基本計画において、「脱炭素社会の実現に向けた持続可能で豊かに暮らせる良質な住宅ストックの形成・循環」や「安全安心で災害に強い住生活の実現」などの目標を定め、省エネリフォームや建築物の耐震化の普及促進など既存住宅の性能向上を図ることとしています。
 人口減少、少子高齢化が進行する中、空き家が増加しているほか、高齢者のみが居住し、将来空き家になる可能性が高い、いわゆる「空き家予備軍」も増加しています。
 一方、住宅市場では、若い世代を中心に新築にこだわらず、リノベーションを行った中古住宅の人気が高まるなど、住生活に関するニーズが多様化しており、こうした多様なニーズに応じた住生活や安全・良質で安心できる住環境を実現する観点からも、住宅ストックの有効活用が求められます。
 そこで、既存住宅の省エネリフォームや耐震改修の促進に向けた道の取組みなどについて伺います。

(一) 住宅ストックの数について

 まず、道内の住宅ストックについてであります。
 リフォームは持ち家が主な対象となると考えますが、持ち家は道内にどの程度あるのか伺います。

【答弁:渡邉 建設部住宅局建築指導課長】
 住宅ストックの数についてでありますが、国が5年毎に実施している住宅・土地統計調査によりますと、令和5年10月時点の道内の住宅の総数は288万8,000戸であり、そのうち、居住世帯のある住宅は242万3,200戸となっているところでございます。
 所有形態別に見ますと、不明な住宅が一定程度ありますが、賃貸住宅や給与住宅などの借家は96万1,400戸、持ち家は138万1,200戸となっております。


(二) 住宅ストックの建設年代について

 古い住宅では、時間の経過とともに増築やリフォーム工事なども必要となってきますが、道内における持ち家の建設年代別の割合について伺います。

【答弁:渡邉 建設部住宅局建築指導課長】
 
建設年代別の住宅数についてでありますが、住宅・土地統計調査によりますと、道内の持ち家数138万1,200戸のうち2010年以前に建設された持ち家が111万8,600戸あり、全体の約81%を占めておりまして、2000年以前では91万5,500戸で約66%、1990年以前では59万8,000戸で約43%、1980年以前では31万4,000戸で約23%となっているところでございます。


(三) リフォームの実施件数とその工事内容について

 道内では、リフォーム工事がどの程度行われており、その内容はどのようなものなのか、伺います。

【答弁:渡邉 建設部住宅局建築指導課長】
 
リフォームの実施状況についてでありますが、住宅・土地統計調査によりますと、道内の持ち家約138万戸のうち、直近5年以内に増築や改修工事を行った住宅は約43万2,000戸であり、持ち家全体の約31%となっております。 工事内容と致しましては、改修工事等を行った住宅のうち、屋根や外壁等の工事が約51%、台所、トイレ、浴室等の工事が約48%、壁や床などの内装の工事が約26%、窓や壁などの断熱、結露防止工事が約13%、増築、間取りの変更が約8%、壁や基礎などの補強工事が約4%となっております。


(四) リフォームの促進に向けた道の取組みについて

 リフォームとしては、屋根や外壁、台所、トイレ、内装の改修など、古くなったものを交換する工事が多く、省エネ性能や耐震性能など性能を向上させる改修は十分に取り組まれているとは言いがたい状況にあると考えます。
 道では、既存住宅の性能向上に繋がるリフォームを促進するためどのような取組みを行ってきたのか伺います。

【答弁:渡邉 建設部住宅局建築指導課長】
 
リフォームの促進についてでありますが、既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォームは、居住者の安全性の確保や生活の質の向上にもつながるものと考えております。道ではこれまで、市町村、関係団体と連携したセミナーの開催、パンフレットによる普及啓発や市町村のリフォームに関する補助制度などの情報をホームページ等において紹介するなど道民の皆様への情報提供や周知啓発に取り組んでまいりました。
 また、改修費用に対する所有者等の負担軽減を図るため、市町村と連携し、住宅の耐震診断、耐震改修などに対し補助を行ってきましたほか、昨年7月に創設した「住まいのゼロカーボン化推進事業」により既存住宅などの省エネ改修に対し補助を行っているところでございます。


(五) 耐震改修事業について

 補助事業は住宅所有者の負担軽減となり、性能向上リフォームの促進につながると考えますが、耐震改修に関する道の補助事業はどのようなものなのか伺います。

【答弁:松本 建設部住宅局建築指導課建築安全担当課長】
 
耐震改修の補助事業についてでありますが、道では、住宅の耐震化を促進するため、国の補助制度を活用し、市町村と協調して、昭和56年以前に建築された旧耐震基準の住宅を対象に耐震診断、補強設計、耐震改修工事などに要する費用について補助の対象としているところでございます。
 耐震改修に対する補助では、定率と定額の二種類の支援制度を設けており、定率補助の場合については、工事費の23%、戸当たり82万2,000円を補助限度とし、定額の場合は、工事費に応じた補助となり、戸当たり70万円を補助限度としており、いずれの場合も、国が1/2、道と市町村がそれぞれ1/4を負担しているところでございます。


(六) 省エネリフォーム事業について

 道の住宅リフォームに関する補助事業のうち、省エネリフォームに関する補助事業はどのようなものなのか伺います。

【答弁:渡邉 建設部住宅局建築指導課長】
 
省エネリフォームの補助事業についてでありますが、 住まいのゼロカーボン化推進事業では、高断熱窓への更新や外壁の断熱改修など建物の断熱性能を高める工事やヒートポンプをはじめとする省エネ効果の高い給湯設備を設置する工事などを補助の対象としているところでございます。
 補助額につきましては、戸当たり50万円を限度とし、道と市町村がそれぞれ1/2を負担しているところでございます。


(七) 補助事業の令和5年度実績について

 道の補助事業の活用状況はどのようになっているのか、制度を活用している市町村の数と実績も含め、令和5年度の状況を伺います。

【答弁:渡邉 建設部住宅局建築指導課長】
 
補助事業の実績についてでありますが、令和5年度において、耐震診断は5市町6件、補強設計は2市2件、耐震改修等は4市5件で、道の補助額は142万1,000円となっております。
 また、省エネ改修は、17市町527件で、補助額は2,004万8,000円となっているところでございます。

(八) 安心してリフォームできる環境の整備について

 様々な内容が補助の対象となっているとのことですので、多くの市町村に活用して頂きたいと考えますが、補助事業があったとしても、居住者の方々は、リフォーム工事を進めるための専門知識をもっておらず、現状の劣化度合いがどの程度で、希望するリフォームを実現するためにどのような工事が必要かなどを判断することが困難な場合がほとんどであろうと考えます。
 悪徳業者が、効果の無い工事を実施したり、法外な費用を請求したりするなどのトラブルもみられます。
 道では、道民が、安心してリフォームを実施できるよう、どのような取組みを行ってきたのか伺います。

【答弁:渡邉 建設部住宅局建築指導課長】
 
リフォームの環境整備についてでありますが、道では、道民の皆様が安心してリフォームを行える環境づくりが課題と認識しており、これまで、一般財団法人北海道建築指導センターに弁護士や建築士による「住宅相談窓口」を設置し、リフォーム工事の方法や契約などのトラブルに対する助言を行っており、令和5年度には、1,411件の相談があったところでございます。
 また、道やリフォームに関わる事業者団体、消費者団体などで構成する「北海道住宅リフォーム推進協議会」において一定の資格要件を満たすリフォーム事業者を登録し、所属する建築士などの資格者の数や過去に実施したリフォーム事例といった情報を公開する「住宅リフォーム事業者登録制度」を設けておりまして、5年度末時点で、86事業者が登録されているところでございます。


(九) 新たな制度の検討状況について

 本年第1定例道議会においては、我が会派同僚議員の質問に対し、「耐震改修補助制度の充実に向け、コスト的にメリットのある簡易な工法も補助の対象とするほか、これまで札幌市を除き活用が図られていないパッケージ支援についても早急に対応を検討する」旨の答弁があり、先の第2定例道議会においては、「道民の皆様からのリフォーム相談にアドバイザーを派遣し既存住宅の省エネ化を促進する制度について新たに検討を進める」との答弁がありました。道では、どのように取り進めようとしているのか具体的に伺います。

【答弁:飯沼 建設部住宅局長】
 
新たな制度の検討状況についてでありますが、耐震改修補助に関しましては、所有者の負担軽減のために、補強設計と改修工事を合わせた費用に対して、国と地方公共団体で最大80%を補助するパッケージ支援の活用や、簡易な工法につきましても、国が定める耐震基準への適合を要件に補助対象とすることについて、道内市町村と協議を進めているところでございます。
 省エネ改修に関しましては、学識経験者や事業者のご意見を伺いながら、道民向け啓発資料の作成やアドバイザーの派遣などを行う「住宅リフォームサポート制度」の検討を進めてきたところでございます。
 アドバイザー派遣は、アドバイザーの役割や調査方法などの講習を受けた建築士が住宅の安全性や断熱性などを目視や簡易な測定等で調査し、効果的なリフォームの方針を提案する事業であり、令和7年度からの運用開始に向け、具体的な調査方法など、実建物での検証を進めているところでございます。


(十) 今後の取組みについて

 これまで、既存住宅の性能向上に向けた道の取組みについて伺ってまいりました。
 今後、人口減少や少子化が進むことによって、住宅ストックと人口のバランスが大きく変化することが見込まれます。また既存住宅のリフォームを通じた省エネ性能の向上が、ゼロカーボン北海道実現の観点からも、重要とされています。
 こうした状況を踏まえれば、新築住宅に対する取組みばかりでなく、既存住宅の性能を高め有効活用を進める対策が、今後ますます重要になると考えます。
 道としてどのように取り組んでいく考えなのか、伺います。

【答弁:大野 建設部建築企画監】
 
今後の取組みについてでありますが、道では、建築後一定期間が経過した住宅につきまして、適切にリフォームを実施することにより安全性や省エネ性能の向上を促すため、これまで「住宅相談窓口」の設置やリフォームに関する情報提供、市町村と連携した耐震改修や省エネ改修に対する補助など、道民の皆様への周知や支援に取り組んできたところでございます。
 道と致しましては、人口減少や少子高齢化の更なる進行が見込まれるなか、脱炭素化を進める観点からも既存住宅の有効活用につながる性能向上リフォームはますます重要になると考えており、今後は、補助事業のさらなる活用を促すため、制度の見直しを検討するとともに、新たに「住宅リフォームサポート制度」に取り組むなど、市町村、関連団体、民間事業者との連携により道民の皆様の安全で豊かな住生活の実現に向け性能向上リフォームの促進に努めてまいります。


二 建設産業における人材確保対策について

 建設産業は、道路や河川といった社会基盤や住宅をはじめとする建築物の整備はもとより、日頃の維持管理、更には自然災害への対応、被災後の復旧復興等に重要な役割を果たしており、まさに社会を維持するのに欠かせない産業のひとつです。
 建設産業が、これからも地域経済を支えるとともに、地域社会の守り手としての役割を果たし続けるためには、人材確保が大きな課題となっています。
 こうした観点から、以下、順次伺います。

(一)建設産業における人手不足の状況等について

 まず、道内建設業における人材確保の状況などについてです。
 人口減少に伴う人手不足が多くの産業分野で深刻化しており、建設産業においても就業者の高齢化や若年者の採用が進まないなど、人材確保が厳しい状況となっていることは周知のとおりです。
 また、本年4月からは、建設業でも時間外労働の上限規制が適用されたことから、更なる人手不足の深刻化を懸念する声も耳にするところです。
 道では、建設産業における、人手不足の状況、人材確保の状況をどのように認識しているのか、伺います。

【答弁:多羽田 建設部建設政策局建設管理課建設業担当課長】
 
道内建設産業における就業者数は、総務省の「労働力調査」によると、ピークであった平成9年の35万人に対し、直近の令和5年では21万人と、約6割まで減少し、年齢別構成比は、令和5年で50歳以上が約57%である一方、29歳以下は約9%となっており、就業者の高齢化が進み、若年者の入職が進んでいない状況であります。
また、有効求人倍率は、北海道労働局の公表資料によると、「建築・土木・測量技術者」では、令和5年度で5.75倍と高い倍率となっているなど、建設業関係全ての職種で、高い水準が続いており、依然として担い手の確保が厳しい状況となっているところでございます。


(二)休日確保の取組みについて

 建設産業が将来にわたってその役割を担っていくためには、若い人たちにいかに興味を持ってもらい、一人でも多くの若者に建設産業に入ってもらうかということが大事です。
 道では、昨年策定した「建設産業ミライ振興プランHOKKAIDO」に基づき、様々な取組みを進めていると承知しています。このなかで担い手の確保・育成のため、就労環境の改善などの働き方改革が必要とされています。
 他産業との人材確保競争も厳しい中、建設産業への入職を促すためには、休日の確保や賃金水準の確保といった就業環境や処遇の改善が欠かせません。
 まず、令和5年度における建設現場での休日確保の取組みについて伺います。

【答弁:梅津 建設部建設政策局建設管理課技術管理担当課長】
 
道では、建設管理部発注工事において建設現場での休日確保を図るため、適正な工期の設定に努めるとともに、平成30年度からは、緊急を要する工事を除き、週休2日が達成された場合に経費等の補正や工事施行成績での加点評価を行う「週休2日モデル工事」の取組を進めてきており、令和5年度では、対象となる1,816件のうち、ほぼ全ての1,815件の工事において、週休2日が達成されたところです。
 さらに、北海道開発局をはじめとする道内の発注機関等関係行政機関と事業者団体で構成される「北海道建設業関係労働時間削減推進協議会」に参画し、民間を含めた発注者に対し、年間を通じた土日の現場閉所の啓発を行うなど、業界全体での意識改革の促進を図っているところでございます。


(三)賃金水準確保の取組みについて

 就業環境改善のためには、適正な賃金水準の確保による処遇改善も重要なものと考えます。
 道内での賃金水準の確保に向けた取組み状況について伺います。

【答弁:梅津 建設部建設政策局建設管理課技術管理担当課長】
 
道では毎年、国などとともに、公共工事に従事した建設労働者の賃金実態について調査を行い、その結果を踏まえ、毎年3月に設計労務単価を設定しており、平成25年度以降、この労務単価が上昇しているところです。
 また、設定された労務単価に基づき、事業者において適切な水準の賃金が支払われるよう、毎年、建設業関係団体や受注者に対して要請を行ってきたところでございます。
 なお、3月1日以降に契約した工事のうち、新たな労務単価が適用されていないものについては、契約変更により新たな単価を適用するほか、複数年に渡る工事においては、契約約款に基づく契約変更により、最新の労務単価を適切に残工事の工事費に反映しているところでございます。


(四)ICT活用モデル工事の取組みについて

 担い手確保が困難な中、このまま生産年齢人口の減少が進んだとしても、将来にわたり必要なサービスが提供できるよう、デジタル技術やデータを活用した生産性の向上についても、働き方改革と表裏一体のものとして取り組む必要があると考えます。
 情報通信技術、いわゆるICTの導入による建設現場の生産性向上の取組みは、不足する担い手の確保とともに、他産業に比べ就労時間が長い建設産業においては、就労時間の是正にもつながる有効な取組みです。
 建設現場の生産性向上に効果的なICT活用の普及・促進のため、道ではICT活用モデル工事を行っていると承知しておりますが、令和5年度の取組状況について伺います。

【答弁:梅津 建設部建設政策局建設管理課技術管理担当課長】
 
道では、建設管理部発注工事において、建設現場の生産性や安全性の向上を図るため、平成30年度より、土工量が1万立方メートル以上の比較的大規模な工事を対象に、測量から施工、出来形管理、成果品作成までの全てのプロセスにおいてICTを活用した場合、工事施行成績での加点評価を行う「ICT活用モデル工事」を試行してきたところです。
 令和元年度以降は、土工量が1千立方メートル以上の中小規模の工事や舗装工を新たに追加するほか、一部のプロセスのみでICTを活用する場合も対象とするなど、モデル工事の取組を拡大しており、令和5年度では、対象工事242件のうち、50%にあたる121件の工事において、ICTの活用が図られたところでございます。


(五)施工管理業務の効率化に向けた取組みについて

 ICT活用工事の取組み状況について伺いましたが、広大な本道においては、遠く離れた建設現場までの移動時間の削減など、ICT活用による施工管理業務の効率化も重要な取組みと考えます。
 令和5年度の施工管理業務の効率化に向けた取組みについて伺います。

【答弁:梅津 建設部建設政策局建設管理課技術管理担当課長】
 
道では、建設管理部発注工事において、施工管理などの業務の効率化を図るため、モバイル端末を使用したWEB会議システムなどにより、受発注者間で施工状況の確認を行う「遠隔臨場」を令和2年度より実施してきており、令和4年度以降は、通信状況が悪い地域においても「遠隔臨場」を可能とするため、通信中継器の増設や衛星通信にかかる費用について、工事費に計上できるよう見直しを行い、令和5年度では85件の工事で実施されたところです。
 また、「遠隔臨場」の更なる普及を図るため、受発注者を対象とした講習会のほか、「遠隔臨場」の経験が無い技術者等を対象として、実際の様子をWEBで配信する見学会を開催したところでございます。


(六)建設産業の魅力の発信について

 週休2日などの就業環境の改善や建設現場のICTを活用した生産性の向上について伺いました。
 働き方改革などにより処遇改善が進み、ICTの活用などにより建設産業の仕事のあり方そのものが変わりつつあるということですが、若い人たちに建設産業に入ってもらうためには、そうした現状が建設産業の魅力として若者や教育現場の先生方に伝わることが重要であります。
 また、実際に従事する方々が魅力だと思うものと、新しい価値観やライフスタイルを有する若者が魅力と感じるものが同一であるとは限らないことから、若者が魅力と感じるものがどこにあるかを踏まえることも大変重要と考えます。
 道は、建設産業の魅力発信にどのように取り組んでいるのか、伺います。

【答弁:多羽田 建設部建設政策局建設管理課建設業担当課長】
 
建設産業の魅力を若い世代に伝えるためには、ものづくりの面白さや重要性について理解を深めてもらうことが大切であり、道では、毎年1月に札幌市の「チ・カ・ホ」で建設産業ふれあい展を開催し、子どもたちを対象とした体験ブースを多数設置しているほか、工業高校の生徒を対象として、現場見学会や就業体験を実施するとともに、建設産業に従事する若手職員との意見交換会を行い、高校生が持つ建設産業のイメージや、進路に対する考え方の把握にも努めてきたところでございます。
 令和5年度からは、こうした取組を普通科高校まで広げるとともに、今年度は、進路指導を担当する高校の教員等にも建設産業における就業環境の改善やDX化の推進状況について理解を深めてもらうため、教育庁とも連携し、教職員等を対象としたセミナーを実施したところでございます。
加えて、昨年度から、若い世代の方々にとって身近なSNSを活用し、DX化が進む現在の建設産業に関する情報をタイムリーに発信するなど、魅力のPRに努めているところでございます。


(七)今後の取組みについて

 今年は元日の能登半島地震をはじめとし、各地に大雨をもたらした8月の台風10号、9月になって再び能登半島を直撃した豪雨災害など、全国的に自然災害が多発しています。
 本道においても、近年、気候の変動などを背景とした自然災害が激甚化、頻発化しており、道路や河川などの社会基盤の整備やその維持管理はもとより、自然災害への初動対応や被災後の復旧等に重要な役割を果たす建設産業が、将来にわたってその役割を果たしていけるようしっかりと支援していくことは、道民生活の安定や経済社会活動を維持していく上で、極めて重要な課題であると考えます。
 そのためには、この産業を支える担い手を確保し、人材としてしっかり育てていくことが、当面する最重要課題となっており、道は、そのための対策を着実に進めていく必要があります。
 私が昨年9月の一般質問において質したとおり、建設産業は、社会の維持に不可欠であるにもかかわらず、その業務特性のために、定時勤務や土日祝日休暇を確保することが難しいなど、「働き方改革」の実現に多くの困難を抱える産業のひとつでもあります。
 そうした建設産業の人材確保、定着については、一般的な人材確保策とは異なるアプローチも必要であると考えます。
 こうした観点やこれまでの取組状況を踏まえ、道では、今後、道内建設業における担い手の確保・育成にどのように取り組んでいくのか、伺います。

【答弁:白石 建設部長】
 
本道の建設産業は、就業者の高齢化や若年者の入職が進まないなど人材確保が厳しい状況にあり、社会資本整備や災害対応など、建設産業が担う重要な役割を十分に果たせなくなることが懸念されていることから、担い手確保・育成に取り組むことが重要と認識をしております。
 このため道では、昨年3月に「建設産業ミライ振興プランHOKKAIDO」を策定し、担い手の確保・育成を早急に解決すべき重点課題と位置づけ、週休2日の導入促進などによる「働き方改革」、ICTの活用による業務の効率化といった「生産性の向上」、高校生との意見交換会や、実際に就業体験ができるイベントなど建設産業が身近に感じられる取組のほか、SNSの活用などによる「魅力の発信」を施策の柱として取組を展開しているところでございます。
 道としては、引き続き、こうした取組みを進めるとともに、幅広い視点から効果的な取組みを模索しつつ、将来の担い手となる若者や子どもたちにとって、本道の建設産業の未来が魅力あるものとなるよう、関係団体や教育機関等と連携を図りながら、地域の安全・安心に欠かせない建設産業の持続的発展に向け取り組んでまいります。


三 道路施設の老朽化対策について

 2012(平成24)年12月、山梨県の中央自動車道笹子トンネル上り線で天井板が落下し、9人の尊い命が犠牲になるとともに長期にわたって通行止めとなるといった事故が発生しました。この事故は、高度経済成長期に整備した社会インフラの本格的な老朽化時代の到来を告げる出来事として、様々な報道がなされ、多くの方々が、普段何気なく使っている道路や橋梁等の安全性に関心をもつきっかけになったと受け止めています。
 この事故を契機として、国は、笹子トンネル事故の翌年を「社会資本メンテナンス元年」と位置づけ、6月に道路法を改正し、点検基準の法定化を図ったところです。
 広大な地域に居住地が点在する広域分散型の地域構造を有する本道では、道路の着実な整備が欠かせませんが、橋梁やトンネルなどの施設も多数点在しており、それら施設の老朽化対策は、道民生活や地域経済を支える上で非常に重要であると考えます。
 こうしたことから、道路施設の老朽化対策について、以下、伺います。

(一)道路施設の管理施設数について

 まず、はじめに道路施設の現状についてであります。
 現在が管理する道道の管理延長と道道に設置されている橋梁やトンネルなどの管理施設数、施設設置からの経過年数等は、現在、どのようになっているのか伺います。

【答弁:本間 建設部土木局道路課長】
 
道が管理する道路施設についてでありますが、道道の管理延長につきましては、政令市である札幌市等の管理分を除き、令和5年4月1日時点で873路線、約11,800kmであり、全道における高速自動車国道、一般国道、道道、市町村道の総延長約90,900kmに対し、約13%となっております。
 また、管理施設数につきましては、道が管理する橋梁は5,800橋で、全道の31,529橋に対し、約18%となっており、道が管理するトンネルは126箇所で、全道の515箇所に対し、約24%となっております。
 施設設置からの経過年数につきましては、一般的な耐用年数とされる建設後50年を経過した割合が、令和6年3月末時点で、橋梁は25%、トンネルは13%となっており、高度経済成長期に集中的に整備された施設が更新時期を迎えたところであります。


(二)道路施設の老朽化の現状について

 道が管理している橋梁やトンネルといった道路施設の多くは、高度経済成長期に整備されたものとのことですが、老朽化の現状と今後の見込みについて伺います。

【答弁:本間 建設部土木局道路課長】
 
老朽化の現状などについてでありますが、高度経済成長期に集中的に整備された橋梁などの道路施設の多くは、老朽化により、コンクリートのひび割れや剥離、鋼材の腐食や亀裂などが生じている状況です。
 建設後50年を経過する老朽化した施設の割合は、橋梁については、令和6年3月末時点の25%に対し10年後に47%、20年後に71%にまで増加し、トンネルにつきましては、令和6年3月末時点の13%に対し10年後に22%、20年後に42%にまで増加する見込みであります。


(三)道路施設の点検状況について

 積雪寒冷地である本道では、立地環境が非常に厳しい箇所も多くあることから適切な維持管理や更新を行うためには、施設の点検が非常に重要であると考えます。
 橋梁やトンネルをどのような頻度で、どのように点検を行っているのか、点検事業費の推移等も含め伺います。

【答弁:本間 建設部土木局道路課長】
 
橋梁やトンネルの点検についてでありますが、道では、長寿命化修繕計画に基づき、5年に1度の定期点検、診断を行っており、平成26年度から平成30年度までに1巡目の点検、平成31年度から令和5年度までに2巡目の点検を実施し、今年度から3巡目の点検に着手しているところです。
点検方法につきましては、近接目視を基本とし、必要に応じて打音や触診等の手段を併用しているところです。
また、点検事業費につきましては、1巡目点検が約105億円、2巡目点検が約118億円となっております。


(四)新技術の活用状況について

 道路施設点検への新技術活用は、人手不足や財源不足などを解消するために効果的と考えますが、新技術の具体的な内容および今後の進め方について、道の見解を伺います。

【答弁:瀧川 土木局長】
 
新技術の活用状況についてでありますが、道では、令和3年度より一部の橋梁において、ドローンで写真を撮影し、AIによりコンクリートのひび割れを検出する画像計測など、新技術を活用した点検を試行してきたところです。
 また、今年度からの点検におきましては、前回の点検で健全と診断された橋梁などについて、現地状況を踏まえながら、新技術の活用を拡大することとし、その件数は、本年10月末時点において、ドローンやロボットカメラ、画像計測など、合計で150件となっており、令和5年度の11件に比べて大幅に拡大し、点検費用の縮減や作業の効率化などの効果も確認されたところです。
 道といたしましては、ドローンやAIといった新技術のさらなる活用について検討するなど、点検の効率化に取り組んでまいります。


(五)道路橋の老朽化対策の進捗状況について

 先日、公表された道路メンテナンス年報によれば、2014年度から2018年度に実施した点検で、修繕や撤去が必要と判定された橋梁のうち、昨年度末までに措置に着手した割合は、全国の地方公共団体の平均が83%のところ、北海道は77%と全国平均を下回っています。
 着手割合は、北海道内のすべての地方公共団体を合計したものと考えますが、橋梁の修繕や撤去等の措置状況は道道と市町村道でそれぞれどのようになっているのか伺います。

【答弁:本間 建設部土木局道路課長】
 
橋梁の措置状況についてでありますが、政令市である札幌市等の管理分を除き、道が管理する道道においては、早期に措置を講ずべき状態である判定区分Ⅲと診断された686橋のうち、令和6年3月末時点で着手済みは684橋、99.7%であり、このうち587橋が完了しているところです。
 また、札幌市が管理する道道と市道については、判定区分Ⅲと診断された113橋全てにおいて、令和6年3月末までに着手済みであり、このうち112橋が完了しているところです。
 札幌市を除く市町村道については、判定区分Ⅲと診断された3,242橋のうち、令和6年3月末時点で着手済みは2,314橋、71%であり、このうち1,895橋が完了しているほか、緊急に措置を講ずべき状態である判定区分Ⅳと診断された34橋全てにおいて、診断後、速やかに通行止めなどの緊急措置を完了しているところであります。


(六)トンネルの老朽化対策の進捗状況について

 同じく、道路メンテナンス年報によれば、トンネルにおける措置に着手した割合は、全国の地方公共団体の平均が95%とありますが、道道と市町村道別にトンネルの昨年度末までの措置状況について伺います。

【答弁:本間 建設部土木局道路課長】
 
トンネルの措置状況についてでありますが、道が管理する道道については、判定区分Ⅲと診断された51箇所全てにおいて、令和6年3月末までに着手済みであり、このうち45箇所が完了しているところです。
 また、札幌市が管理する道道と市道については、判定区分Ⅲと診断された8箇所全てにおいて、令和6年3月末までに措置が完了しているところです。
 札幌市を除く市町村道については、判定区分Ⅲと診断された12箇所のうち、令和6年3月末時点で着手済みは10箇所、83%であり、このうち8箇所が完了しているほか、判定区分Ⅳと診断された1箇所については、診断後、速やかに通行止めによる緊急措置を完了しているところであります。


(七)市町村への支援について

 道管理施設では、老朽化対策が一定程度、進められていると受け止めていますが、市町村管理の施設における老朽化対策は、全国や道と比べて進んでいない状況にあります。
 その背景として、厳しい財政状況や技術職員不足があると考えますが、これらは市町村のみで解決することが困難であり、国や道の支援が欠かせません。
 道として、市町村をどのように支援していく考えなのか伺います。

【答弁:瀧川 土木局長】
 
市町村への支援についてでありますが、国や道、各市町村などで構成する北海道道路メンテナンス会議において、道では、国と連携して、市町村の担当者を対象とした点検講習会の開催や、橋梁点検における新技術の活用に関する情報提供などを行っているほか、市町村の技術者不足を補うため、メンテナンス会議を通じて、北海道建設技術センターが、近接する複数市町村の点検業務を一括して発注するなどの取組を進めているところです。
 また、今年度は、国の定期点検要領の改訂に合わせて、市町村向けの点検マニュアルを改訂し、全ての市町村を対象に説明会を開催したところです。
 さらに、国の「道路メンテナンス事業補助制度」において、令和8年度から、長寿命化計画に新技術等の活用に関するコスト縮減効果等の記載が補助要件とされたことから、市町村の計画改訂に対し、助言を行っているところです。
 道としては、引き続き、国などと連携し、新技術に関する情報提供や長寿命化計画の改訂に係る技術的支援に努めるなど、市町村における道路施設の老朽化対策の促進に向けて取り組んでまいります。


(八)今後の取組みについて

 橋梁やトンネルといった道路施設の損傷は、重大事故に繋がる恐れがあるほか、万が一大規模な崩落事故等が起きれば、道民生活や企業活動等にも大きな支障が生じることになります。これらを適切に保全していくための老朽化対策は、非常に重要であると考えます。
 道は、今後、道路施設の老朽化対策にどのように取り組んでいく考えなのか伺います。

【答弁:白石 建設部長】
 今後の取組についてでありますが、道路は、道民の皆さまの暮らしや経済活動を支える重要な社会基盤であり、橋梁やトンネルなどの老朽化が進む中、道路施設の修繕等を計画的に実施し、健全な状態に保つことは大変重要であると認識をしております。
 こうした中、国では、「道路メンテナンス事業補助制度」により地方公共団体への重点的支援を図るとともに、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」において、重点的・集中的に老朽化対策を講じているところでございます。
 これまで実施してきた老朽化対策により、判定区分ⅢとⅣの橋梁やトンネルの数は着実に減少しており、道としては、引き続き、市町村への支援に努めるとともに補助制度や「5か年加速化対策」の予算を積極的に活用し、老朽化対策を推進してまいります。
また、5か年加速化対策終了後も切れ目無く、継続的・安定的に老朽化対策に取り組めますよう、国土強靱化実施中期計画の早期の策定や予算の確保について、国に強く要望するほか、新技術の活用により、点検の効率化を図るなどして、橋梁やトンネルといった道路施設の老朽化対策を着実に推進し、安全で安心な道路交通の確保に努めてまいります。(了)

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