
雪化粧の利根川上流へ!絶景のち疲労のち苦闘…
プロローグ準備編
川が大好きなので、真冬しか見られない白い川を見たくて数年前から毎年毎年、群馬県水上温泉に行きたい行きたいと言い続け、それがついに実現したのが2025年2月。さっさと行けばいいじゃんと思うでしょ?それが今の時期は年度末、魔の繁忙期で土曜日も出勤日になる弊社。なかなか泊まりで出かけるチャンスがなかったのだ。
でも、そんなこと言ってるうちにますます体力は衰える。今年は思い切って土曜日午後から半休にして一泊で出かけることにした。目的地は関東の坂東太郎こと、日本最大の流域面積を誇る利根川上流だ。彼は群馬県利根郡みなかみ町にある標高1,840mの大水上山を水源に、いくつかのダムを経て水上温泉に下りてくる。目的地は水上。ここより上流は豪雪地帯なので冬場に行くのは難しい。
水上は周辺にスキー場が多いのでこの時期はスキー客で賑わう。もちろん温泉目当ての観光客も多く、ホテルも電車もなかなかの混雑ぶりだ。でも何とか行きの新幹線と宿を確保した。川を見に行く目的で水上まで行くのはたぶん僕だけだろう。いつもだいたいそうだから気にしないけど。
予約した宿は湯檜曽(ゆびそ)温泉の林屋旅館さん。湯檜曽というのは上越線だと水上駅の1つ先、鉄関係者に大人気の土合(どあい)駅は湯檜曽駅の次の駅だ。
ちなみに土合駅はWikipediaによると「下り線ホームは新清水トンネル内の地下深くにあり、地上の駅舎から486段の階段(標高差82m、長さ338m)を10分ほどかけて下りないと到達できないことから、「日本一のモグラ駅」として親しまれている。「関東の駅百選」認定駅の1つ。」と紹介されている。
湯檜曽駅も上りホームは地上にあるけど、下りホームは地下になっている。ちょっと1人で行くには勇気がいると誰かのYouTubeで紹介されていた。今回はたまたま上越線の水上~長岡が大雪の影響で運休になっていて、電車で湯檜曽駅に到達することはできなかった。実際は無人駅だから入れただろうけど、その事情は後ほど。
湯檜曽温泉は数件の温泉宿があって、林屋旅館さんはそのうちの1軒。YouTubeで予習してみたら、クチコミも人気上々の宿だ。でも僕は素泊まり。湯檜曽には商店がないとのことだったので、せめて朝食はほしかったけど、予約した時点では食事付きプランは見つけられなかった。食料はどこか途中で調達するしかない。ま、ビジネスホテルだったら素泊まりは当たり前だから、そう思えばいいかな。
湯檜曽温泉 清風かおる湯宿 林屋旅館
http://www.yubiso-hayashiya.jp/
そうこうしながら、旅に出る日が近づいてきた。前泊して次の日に1日フルにまわる感じだから大げさでもないんだけど、何しろ雪深い場所に単独で行くわけだから、それなりの準備が必要だ。しかもたくさん歩くのでリュック1丁で行きたいところだ。そうなると、そぎ落とすのはまずは衣類。冬場は服が多くなりがちだけど、着替えを最低限にしてなるべく圧縮した。着替えはババシャツ、パンツ、靴下だけ。でもそれならソフトボール1個分くらいの分量だから楽勝だ。
そしてカメラとGoProは必須なので嵩張るけどこれはしょうがない。あとは洗面セットとコードやバッテリー、モバイルWi-Fiなどなど。これでリュックに収まる。食料とビールは東京駅で調達することにして、事前に用意したのは缶入りの小さなワインとナッツ類。これは一人旅には欠かさないアイテムだ。そして断念したのが熊スプレー。1人で寂しい場所を歩くことになるけど、真冬は熊は出てこないだろう。
冬アイテムとして、裏ボアのネックウォーマーと指が出る手袋、そして目深に被れるオーバーサイズのキャップを買い揃えた。

ネックウォーマー
小さくたためるし、隙間がないからマフラーより便利で暖かい。
指出し手袋
指が出ないとスマホもカメラもGoProも操作できない。でもずっと指が露出しているものはそれなりに寒いので、きっとこれがベストアイテムだ。
デカ帽子
普段あまり着用しないんだけど、落雪や防寒を考えて、しかも髪型が崩れないようにかなり大きめサイズを購入した。

トレッキングシューズ
足元は川歩きの時にも使うゴアテックスのトレッキングシューズ。雪だとハイカットの方がいいかもしれないけど、足首がルーズな方が平地では歩きやすい。
スノースパイク
ゴム地にスパイクのような金具のついたすべり止めは安価だし、ぜひ携帯したいアイテムだ。
トレッキングポール
これは迷ったんだけど、山歩きや川歩きで愛用しているので持っていくことにした。カメラとGoProを持って果たしてポールを使えるのか?でも誰もいない雪道ですっころんで骨折でもしたら死ぬかもしれない。かなり邪魔だけどリュックに挿していこう。
さぁ準備は整った。いよいよ出発だ。
千葉から湯檜曽へ
道中あれこれ
前日から上越線の水上から先は大雪で止まっている。さすが雪国だ。この時点で湯檜曽まで電車で行ける可能性はゼロ。いいんだいいんだ。そう思って、東京から上毛高原まで新幹線を予約したんだから。とは言っても予約したのは実は3日ほど前。この時点で残席わずか、通路側の席か、3列シートの真ん中席しか残っていなかった。この新幹線の指定席は結局完売だったようなので、席を確保できて良かった。えきネットは便利だ。
千葉から総武快速線で東京駅に着いたのが新幹線発車の40分前。ここで3食分のお弁当を入手しよう。まずは、大船軒のサンドイッチを探したけど、またも見つけられず。いったいどこで買えるんだろう…。明日の朝食にしようと思ったのにな。
大船軒サンドウヰッチ
https://www.ofunaken.co.jp/menu/detail/562.html
それにしても東京駅は芋を洗うような激込み!!!まるで有馬記念の日の中山競馬場みたいだ。もうどこからこんなに人が来るんだろう。たしかに三連休の初日だけど、もうお昼過ぎなのになぁ。駅弁屋さんは、すっごくたくさんあるんだけど、どこもゆっくりお弁当を吟味できるような状態じゃない。目の前にあるものを手に取ってレジに並ぶ以外何もできない。しょうがないので、カニ弁当、糸を引くと温まるタイプのすき焼き弁当、万世のカツサンド、そしてスーパードライ2本とお水を買って新幹線ホームに向かった。人気駅弁特集とかで調べてたけど、何の役にも立たなかった。
そして新幹線ホームも激込み!!!上野大宮方面に向かう新幹線はホームが少ないので、到着してから車内清掃があって、数分後には出発しなければならない。でも大混雑のためスムーズにはいかない。乗客が降りきるまでえらく時間がかかるし、車内清掃も大変だ。またドアが開いて乗車するにも、大きな荷物を持った外国人が大勢いるので、なかなか乗り切ることができない。ほかのドアから乗るようにアナウンスがあっても、日本語なので彼らには通じない。駅の係員さんがほかのドアに誘導しないと、みんな談笑しながらただ待っているだけだ。そりゃそうだろうな。しかし新幹線はこの大きな荷物はどうすんだろうね。座席には置けないし、スペースがあったとしてもこんなに大量だとどうにもならない。

僕が乗った新幹線も15分遅れでようやく発車。通常時、水上や湯檜曽に行くためには①高崎駅乗り換えで上越線、②上毛高原駅から関越バス、③越後湯沢駅まで行って上越線で戻る、の3ルート。この日は水上~長岡が運休だったので、そうなると上毛高原駅からバスの一択になっていた。まぁでもさすが関東。複数ルート選べるのは助かるな。
東京~上毛高原は約1時間。カニみそ入りの美味しいカニ弁当とビールが終わるともう残りわずかの新幹線の旅。通路側だから景色も見られずボーっとしてたらあっという間に到着した。

上毛高原駅を降りるとすでに雪景色。たったの1時間でこんな風景になるんだ。駅前広場で関越バスの谷川岳ヨッホ行きが待っていた。新幹線は遅れたけど接続してるのだ。普通サイズのバスに乗客は20人くらい。リュック1つで乗っているのは僕くらいで、みんな荷物が巨大だ。雪道だけど幹線道路は除雪されているので支障はない。こういうところはホント助かる。バスは揺れながら雪道を進むこと約30分、乗客はほとんどが水上温泉で降りていき、僕はそこからさらに10分くらい揺られて湯檜曽駅前で下車した。

湯檜曽到着
湯檜曽駅前は静かだ。駅舎はシンプルでここが駅?という感じがする。郵便局があるのでそっちの方が目立つ。もちろん誰もいないし、雪に埋まる駅舎だけ見ると、ここに電車が来ることすら想像できない。この風景、どこかで見たことあるなぁと思いだしたのは、佐倉市のユーカリが丘線の駅。歩いていると忽然と現れる駅舎、ちょっと雰囲気は違うけど、僕には同じ匂いがした。

湯檜曽駅前から徒歩で林屋旅館さんに向かう。常に水が噴き出る融雪パイプが設置されていて、道路に雪はないけど水浸しビシャビシャで歩きにくい。そしてやたらめったらクルマが通り、そのたびに水はねを心配しながら歩くことになる。でも道路の両脇には身長より高い雪の壁があって、逃げる場所はない。雪が舞うので視界も良くないし、こりゃけっこう難儀だ。でもこういうもんなんだろうな。
宿に向かう途中で湯檜曽川を渡る。利根川の第一支流でこの近くで合流点を迎える小さな流れ、雪化粧の川の美しさを凝縮したような、そして誰にも立ち会わせたくない、独り占めしたくなる景色がここにある。クルマでここを通る人は絶対に気づかない絶景、ちゃんと川の流れを感じながらじゃないと味わえない魅力がここにある。

10分くらい歩いて旅館に到着した。林屋旅館さんは小さな宿だけど行き届いた清潔さがあって安心する。全身に雪を浴びていたので、玄関外で雪を落として部屋に案内していただいた。部屋は昔ながらの旅館の部屋で、心から落ち着けそうだ。やっぱり畳と座布団と低いテーブルが昭和世代にはありがたい。温泉旅館はこうじゃないとね。そして窓からは湯檜曽川の清流を見下ろせる。こんな素晴らしい環境が目の前にある。水面以外は雪が覆い、雪を縫うような流れとそのBGMのような水音が包み込んでくれる。来て良かった。そう思える時間が静かに過ぎていく。


少し休憩したので、さぁ散策に出かけよう。持ってきた装備の中で、トレッキングポールを残して外に出た。雪はチラチラ程度だったので傘は持たず。これが大失敗だった…。やっぱり傘がないと雪だるまになっちゃうことを後で知った。
湯檜曽のまち歩き
旅館を出て、まずは湯檜曽駅の方に向かう。さっき通った道だから勝手知ったるなんとやら。融雪パイプから噴き出る水をよけながら、わりとスムーズに駅前に着いた。さぁここから湯檜曽川と利根川の合流点を目指そう。駅から続く道はクルマはよく通るけど人はいない。GoProを片手にブツブツ言いながら歩く姿は、我ながら不気味だ。でも誰も見ていないから大丈夫。退屈な雪道をしばらく歩く。目的地にしたのは島神峡というところで、ここには地図にないけど吊り橋があるはずだ。吊り橋は利根川に架かっていて、橋の上から湯檜曽川との合流点が見えることになっている。


奥利根ゆけむり街道という、何とも旅情をそそる道に出るには歩道橋を下りることになる。この歩道橋は屋根があるので、雪に埋もれる心配はない。でもその出入口は身長くらいの積雪なので、えいやっと雪を踏み固めて通ることになる。新雪なのでなかなか進めなくて厳しいけど、何とか歩道橋にたどり着いた。やっぱり豪雪地帯は少し進むのも大変だ。ついさっきは来て良かったと思ってたけど、その気持ちが少しずつ削られていく…。
奥利根ゆけむり街道はさらにクルマが多い。いったいどこに行くんだろう、みんな。道沿いには雪かきをしてくれている人もいて、感謝感謝。僕はGoogleMAPにしたがって脇道に入り、橋がある地点、島神峡に向かう。その道沿いには家があるので、そこの人たちが雪かきしてくれているんだろう。もう感謝から感動だ。そして吊り橋が見えてきた。たしかに見えた。でも雪の壁に阻まれて橋には行かれなかった。冬場は橋は使われていないんだろう。周りを少しジタバタ歩いてみたけど、結局利根川の姿は雪と木の間からすこーしだけ。合流点はダメだった。あーあ。でもしょーがない。2m以上の雪をかき分けて橋まで行くのは無理だ。


ここはあっさり諦めて、今度は湯檜曽川沿いからのアプローチを試みた。けど、道は歩けても雪の壁が高くて川の姿はとてもじゃないけど見えない。どこまで行けば見えるのか見当もつかないので、結局途中で断念することにした。すでに体力も限界にきていた。まち歩きなら長距離も大丈夫なんだけど、アップダウンのある雪道は甘くない。旅館に向かって引き返すことにした。

でも、奪われた体力は戻らない。来て良かったという気持ちはさらに薄れていく。来るんじゃなかったとは思いたくないけど、すでに頭は混乱していてクリエイティブな発想は芽生えてこない。ただ機械のように足を動かすのみ、トボトボと歩を進めるだけになった。途中でGoProの電池が切れたけど、もう入れ替える元気もない。
ようやく旅館に着いた。道のりは長かった。もはや雪だるま。カメラに積もった雪が凍っている。帽子も凍ってるし、雪を払おうにも完全に氷になってこびり付いている。いま氷点下5度、そりゃそうなるわな。

温泉で冷えたカラダを回復させたかったけど、ノドは乾くしお腹はペコペコ。東京駅で買ったビールと、ひもを引くと暖まるすき焼き弁当を流し込んだ。あっと言う間のできごとだった。美味しかった?かな…。水分も足りていなかった。水を買ってきて良かった。旅にお水とお茶は欠かせない。

ちょっと落ち着いて横になったら、なんと1時間近く気を失った。あらまぁ、そこまで体力を消耗してたってことだ。おそるべし雪道、侮ってはいけない。むくっと起きてお楽しみの温泉へ。湯檜曽温泉はアルカリ性単純泉で美肌の湯ともいわれ、ゆっくり浸かると疲労回復にも効能があるそうだ。そうか。ホントだな。カラスの行水の僕がゆっくりしてみるぞ。
ガマンして長湯した風呂上り、カラダは完全に暖まった。疲労感はどうかな。ちょっとわからないや。一人旅の夜はヒマだ。ちょっと早いけど用意してきた缶入りワインをあけて、おつまみのナッツを食べながらくつろぐ。PCがあれば今日の写真の整理とかできるんだけど、軽量化のため持ってないし、仕方ないのでスマホにHDMIケーブルを繋いでYouTubeをいくつかハシゴした。そしてテレビはアド街ック天国。でももう眠い。限界だ…。まだ21時、zzz
2日目は湯檜曽から寄り道しながら帰路
湯檜曽から水上へ
目が覚めた。10時間も寝ちまった。最近こんなに眠り続けたことはないな。相当体力を奪われたんだろう。そして温泉とワインの相乗効果で、眠る要素満載だったわけだ。
素泊まりなので朝ごはんはない。まぁまずは朝風呂でも行ってみよう。温泉旅館の朝風呂ほど気持ちいいものはない。1人でゆったりのんびり、といきたいところだけど、やっぱり長風呂はできないのだ。残念。すぐに部屋に帰って、東京駅で買った万世のカツサンドと、部屋に用意してあったドリップコーヒーの朝食。朝からカツサンドはちょっと重かったけど、10時間もの絶食の後だからペロッとたいらげた。空腹は最高のソース、これは真実だな。
チェックアウトはカードが使えなくてちょっと焦ったけど何とかなった。最近は旅行の時も現金をいくら持って、とか考えなくなったので危なかった。7,850円、たまたま持っていて良かった。素泊まりは現金のみと、ホームページに書いてあったそうだ。よく読まないといかんな。


今日も上越線は動いていないので、水上に行くためには9:37のバスに乗ることになる。旅館の目の前が湯檜曽温泉街のバス停なのは助かる。除雪車が目の前を通るというド迫力を味わうこともできた。バスはだいぶ遅れたけど、無事に乗車できた。乗客は8名くらい。みんな何しに来たのかな。まさか川を見に来た人はいないだろうな。
水上駅前で下車。雪がチラホラ舞っているけど、空はかなり明るい。カメラの設定を晴れ用に変更して、さぁ橋のある場所まで歩こう。もちろん次に乗る電車の時間は確認した。

水上の駅前には廃墟になったホテルがある。あぁこれはひどい。これが放置されているとイメージは良くないわな。でもきっと、どうにもならないんだろう。観光地で大型ホテルが放置されているのはよくあることみたいだ。水上温泉も昔のような賑わいはなくなっているそうだ。僕は初めて来たので比較はできないけど、日曜日の朝で人はチラホラという感じ。でもまったく寂れているわけではなく、若いカップルと何度かすれ違った。
目指すは利根川に架かる橋。ホテルや旅館は客室から利根川が見えるように建てられているので、道路から利根川の姿はなかなか見えづらい。そりゃそうだろう。部屋もそうだけど、お風呂から利根川を見せたいよね。それでもたまにチラチラ川の姿を見つつ、ここでも勢いよく放たれる融雪パイプの水を左右に避けながら、クルマも避けながら、何とか進んでいく。沼田水上線という新しい道路が旧道の上を通っているので、そこに上れば利根川は眼下だ。でも道路脇に雪が積まれているから全然見えない。それどころか、坂道はもう川のように水が流れてくるからそれどころじゃない。ズボンが濡れたら大変だ。
でも、そこからしばらく歩くと湯原橋に着いた。ここはホテルジュラクの近く。ようやく待望の橋を見つけた。さぁ、よーく見せてもらおう。うーーーん、これはやっぱり最高だなー。湯檜曽川よりは雪の量は少ないけど、これぞ待ってた雪化粧の利根川。温泉街を流れる白い利根川の姿にしばし見とれる。これが見たくて来たんだからね。やっぱり来て良かった(笑)。


さて、写真と動画も撮ったから水上駅に戻ろう。ホントはもっと温泉街や渋い建物も見たいところだけど、ここからの行程を考えると寄り道はちと厳しい。きっとまた夏に来るだろうから、建物めぐりはその時に。さらば水上。

水上から沼田へ
次の目的地は沼田だ。上越線で約20分、けっこうあっという間に着いちゃった。上越線は利根川がつくる低地を縫うように走るので、車窓から利根川の姿が楽しめる。でも、電車から写真を撮っている人はいないな。だよね。

沼田は利根川の河岸段丘で強烈な高低差が楽しめるところだ。実は僕は昔ここに来たことがあって、目的地は今はもう閉店して久しい沼田サティだ。グンマーだと高崎に次いでオープンした郊外型のサティで、30年くらい前にわざわざリサーチに来た。この時はあまりの急坂で参った覚えがある。だって駅からの勾配が半端ないんだよ。もうリサーチどころじゃなくヘロヘロになって、帰りは思わずバスを使った。お店よりも急坂の印象ばかり記憶に残った。

沼田駅には赤い鮮やかなノボリがたくさんあって、「天空の城下町 真田の里 上州沼田」となっている。たしかに天空の城下町、うまいこと言うもんだ。駅から市街地を見る、いや見上げるという感じだ。利根川の流域以外は高くなっている、ここは利根川と薄根川がつくる扇状地だ。しかもこの扇状地の出口は狭窄部になっている。ここにお城を造る理由がよくわかる。まさに難攻不落なんだろう。戦国時代から活躍した真田氏の居城だったため、真田の里と呼ばれる。


沼田の市街地は丘の上。そこには行かず利根川を目指す。道路は整備されているけど人通りは少ない。グンマーはそういうところが多い。急ぎ足で歩くものの、思ったより距離があって時間がかかる。国道17号線を渡ってようやく着いたのが地蔵橋。お地蔵さまの姿は見つけられなかったけど、たぶんどこかにあるんだろう。橋の上からは、利根川に静かに合流する薄根川の絶景が拝める。薄根川は武尊山(ほたかやま)を水源にここで利根川に合流する17.2kmの川。くっきり合流点と河原にうっすら残った雪が美しい。遠くの山にも雪はあるけど、水上とはかなり違う。ひと山超えると気候もかなり変わるのだ。湯檜曽や水上とは大違い。今日はダウンコートだと暑いくらいだ。


次の電車に合わせて沼田駅に戻る。駅前に蕎麦屋やうどん屋があったけど、ちょっと時間が合わずに断念。ランチはちょっとガマンして渋川駅にしよう。水沢うどんは伊香保の名物だけど、渋川駅にはあるのかな。昔旅行に行ったときに食べた水沢うどんはメッチャ美味しかったなぁ。
沼田から渋川へ
再び電車に揺られて渋川へ。でも駅前には食事ができるところが見つからない(よく見ればあった…)。もう空腹限界だし、やむなく「とんでん」に入店。ここまで来て千葉にもあるチェーン店かぁ。でも仕方ない。北海道の豚丼はアブラギッシュだけど、それでも美味しかった。

ここで新たな発見。なんと、渋川駅からは「特急草津・四万」に乗ることができる。帰りは上越線で高崎に出て、そこからグリーン車で帰ろうなんて思ってたんだけど、この特急に乗れば上野まで一発で行けるのだ。その特急は1時間半後だ。あわててえきネットで指定券を探す。ホント、スマホで買えるから便利だ。空席はなんと残り2つ!そのうちの1席を予約して、帰りの足を確保した。

そして駅から徒歩で吾妻川と利根川の合流点を目指す。さっきは寒くなかったけど、今度は強風に悩まされる。なぜか、オリビア・ニュートン・ジョンの「そよ風の誘惑」が浮かぶ。頭の中で否定する。そよ風ちゃうやろ。そう、榛名山や赤城山に囲まれた渋川は風の名所なのだ。いやはや寒い寒い。顔がゾンビみたいになってきた。
目指すは吾妻川の河口付近に架かる落合橋。そういえば犀川と千曲川の合流点も落合橋だった。川が落ち合うから落合橋。日本全国落合橋めぐりなんて楽しいだろうな。

徒歩20分くらい、工場や資材置き場の先にようやく落合橋が見えてきた。さすが観光地でも何でもない川の合流点。夜は1人で歩きたくない寂しい場所だ。いやにデカい仏像も恐怖心を煽る。でも、でも、やっぱり吾妻川は美流だった。上流には八ッ場ダムがあって話題も多かったけど、この合流点は人知れず流れる美しさがたまらない。橋から見ると奥の方に利根川の流れが見える。こっちから見ると、吾妻川が本川で利根川が合流してくるような感じがする。河原はそれほど広くないけど、合流点ならではの土砂の堆積も見どころだ。やっぱり来て良かった。寒いけど…。


橋を渡ってちょっと脇道に入って、合流点の直近を目指したけど、残念ながら合流点は見えなかった。利根川を渡って対岸に行けばもっとよく見れるかもしれない。けど、徒歩で逆側に行くのは難しい。なぜかというと、もうそろそろ体力が限界にきていたから。そして特急を予約しちゃったので、そこまで時間が取れない。ここにはダイチャリなんてないし仕方ない。勇気ある撤退?いや、もう早く帰りたい。のども乾いた。

帰路
今回の旅はこれにて終了。重い足を引きずるように渋川駅を目指す。これが意外にきつい。でも歩く以外にない。風は相変わらず強い。なかなか進まない…。

発車10分前、渋川駅でコーラを購入。なぜかビールではなくコーラが飲みたかった。おかしいなぁ。そんな経験は今までなかった。疲れたカラダが甘いものを要求したのかな。でも久々に飲んだコーラは美味しかった。
旅の反省
・アップダウンのないとことではトレッキングポールはいらない。
・雪の上を歩くと思ったより消耗する。平時とは全然違う。
・温泉旅館に1人で泊まるとヒマこくぞ。
・雪が降っている時はカメラに防水カバーが必要。
・融雪パイプの噴水に注意。
・どんな時も水分は欠かさない。飲まないと疲れが倍増する。
・グンマーをバカにしない、なめない。