慶應義塾大学、図書館旧館カフェ「Café Tempus 」@曾禰中條建築事務所
港区三田の慶應義塾大学構内に最近オープンしたカフェによりました。
大学構内にカフェができるなんて、いまどき、さほど珍しくもないかもしれません。とはいえ、そのカフェが、なんと、図書館旧館内にできたと知り、ふだんあまり遠出しないのですが、はりきって都会にでかけました。
東門(旧幻の門側)の上空に図書館旧館の尖塔がそびえます。
慶應義塾大学図書館旧館を正面からのぞみます。木々の梢で時計塔が見えない。。
図書館旧館の設計は曾禰中條建築事務所がてがけました。竣工1912年。国の重要文化財に指定されています。日本国内に現存するゴシック・リヴァイヴァル様式として貴重な建物です。
曾禰中條建築事務所は、1908年に東京で設立されました。曾禰達蔵先生(1853-1937)と、中條精一郎先生(1868-1936)による、東京帝国大学建築学科の先輩・後輩コンビです。曾禰先生は、辰野金吾先生とともに、英国人ジョサイア・コンドル先生にまなんだ工部大学校一期生ですね。
中條先生は、帝大卒業後に文部省の建築技師として働いた後、ケンブリッジ大学に留学しました。20世期初頭のイギリスで学んだ成果が、図書館旧館や、隣の塾監局のゴシック・リヴァイヴァル建築として結実したともいえましょう。
ちなみに、図書館建設の現場には、当時、曾禰中條事務所で働いていた若き中村順平先生も入っていたらしい、とのことです。さらに、作家の宮本百合子先生のご厳父が中條精一郎先生であらせられるそうです(中村順平研究者・談)。
とかなんとか。
おなかがすいていたので、はやく、美味しいと評判のカレー&コーヒーがたべたい、、といさんでエントランスに近寄ると。
「Cafe Tempus」の看板がお店の目印です。
tempus fugit「時は飛ぶ」の意味のラテン語の成句より。時計塔の数字部分に書かれています。
とはいえ、周囲にひとけもないし。まだ授業中だからでしょうか。。若干の不安をかかえつつ、いざ、重厚な扉を開けると。。。
おや、立派。入るとこんな感じで、北村四海による女像が迎えてくれます(カフェ入口はこの手前です)。
それにしても、建物全体が、キラキラ輝いています。わたしの学生の頃はもっと無機質で、薄暗くて、こんなにキラキラしていなかった気がするなあ、と思っていたのですが。
図書館旧館では、改修工事が2017年から2019年5月末にかけておこなわれたのですね。関東大震災や戦災を乗り越えた図書館旧館は、構造的増強のため、「免震レトロフィット工法」を採用し、耐震性を高める工事が行われたそうです。その際に、往時のかがやきを取りもどすよう、お色直しのおしろいが甘い香りを漂わせながらパタパタはたかれたものと想像します。
カード目録のようなメニューも、かつての図書館の時代を忍ばせ、可愛らしいです。
キーマ風のカレーはスパイスが効いて美味しかったです。ブレンドコーヒーも酸味豊かで絶品でした。選びぬかれた家具調度やカトラリーは素敵ですし、なんといっても静かです。
同じゴシック・リヴァイヴァル期の建物としては、パリ大学都市のドゥーシュ・ドラ・ムルト財団館が思いだされます。ドゥーシュ館は1925年設立なので、同時期といえば同時期ですが、三田の旧図書館のほうがさらに古いのですね。。
図書館旧館の2階には、今年5月に福澤諭吉記念 慶應義塾史展示館が開館し、今後一般公開が予定されているそうです。こちらも楽しみですね。
スイーツが復活する頃に、時計塔の写真を撮りにいきたいです。