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親愛なるヴィッティさま:追悼・モニカ・ヴィッティ先生

ロラン・バルトが1980年の不慮の死をとげる直前に、イタリアの映画監督ミケランジェロ・アントニオーニにあててしたためていた公開書簡があります。
その題名は「親愛なるアントニオーニ、」Cher Antonioni,でした。
友人である映画監督に手紙を書きながら、この手紙が公開されるころ、ぼくは車にひかれてこの世にいないでしょう、だなんて、さすがのバルト先生も、まさか、おもわなかったことでしょう。

2月2日に、イタリアの女優、モニカ・ヴィッティが亡くなられたそうです。享年90歳。

モニカ・ヴィッティといえばミケランジェロ・アントニオーニ映画のミューズとして有名でした。

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小学生のころ、押し入れのしめった段ボールからでてきた映画パンフをみつけ、表紙にうつった黒髪、金髪のヴィッティさまに胸をときめかせました。
それからはや数十年。

アントニオーニが好き、なのではなく、ヴィッティさまが大好きでした。

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大学2年の夏に、ひとりでヨーロッパ中をたびしたとき、
ローマの大通りぞいで、ふと視線を感じました。ふりかえると、本屋の窓辺に新刊がかざられており、その中の一冊がヴィッティさまによるエッセイ集でした。

ヴィッティさまと目があい、
これは運命だ、、と思い、買い求めました。なにがどう運命かはわかりませんが。


アントニオーニ映画ではひたすら仏頂面のヴィッティさまですが。本国イタリアではおもに舞台女優として活躍し、むしろコメディエンヌのイメージが強かったみたいですね。

アントニオーニのスクリーンからも、舞台女優としての表情の深さ、豊かさが、ときおりかいまみえます。「太陽はひとりぼっち」では、深刻ぶった(?)セリフをつぶやいた後に、アドリブで踊りだしてみせたり(アフリカ風ダンスをめぐる一連の場面は脚本にはない)、なんだか長身で美しいイタリア女性の、そのひと自身の人間性に近い(という幻想をファンに抱かせる)佇まいをかいまみせてくれるところが、すばらしく魅力的でした。

以前、フランスのメディアに出演するモニカさまの映像をみました。ヴィッティさまはニコニコと、フランス語でインタビューに応じていましたが、途中で、一瞬首をかしげててこまったような表情で、「わたしのフランス語、わかる?フランス語、久しぶりに話すから。。」などと大きな目をぱちくりさせていました。

なーんてコケティッシュでチャーミング、、!大女優なのに!
感動しました。

うううーーーん、、かわいい。です。

世界をみわたせば、もっとうまい俳優はたくさんいるかもしれませんが、
こんなに素敵な女優さんは後にも先にも他にいないです。

単なるミーハーですが。。

ヴィッティさま。戦後のネオリアリズム映画のイタリア女優たちがみせた前近代的で押しの強いイメージはまったくなく、ひたすら知的でアンニュイなモダニズム的女性像を演じていましたが。追悼報道をみていると、イタリアでも愛されていたようすがよくわかります。。

バルト先生。「親愛なるアントニオーニ、」とかきながら、ミケランジェロはどんな返事をくれるかなぁ、などと、平和な想像をめぐらせていたことでしょうね。

わたしはモニカさまからの返事などいりません。あなたがそこにいてくれればいい。そう思います。おこがましいですが。

アッディオ!モニカ!






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