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ピーター・ズントー『Penser l'architecture』


Peter Zumthor, Penser l’architecture, Birkhauser, 2008

ピーター・ズントー「建築を考える」  

手元にあるのはフランス語版ですが、スイス人であるズントー先生の原著はドイツ語です。

ケルンの聖コロンバ教会美術館と、ヴァッヘンドルフのブラザー・クラウス野外礼拝堂を訪ね、あまりの美しさにうちのめされて、パリに戻った翌日に、モニトゥール書店で買った記憶があります。

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ブラザー・クラウス野外礼拝堂の後ろ姿。
夾雑物がないだけ、入口側よりも、こちらのほうがデザインがより純化されていて、イデアそのままである気がします。

この本、比較的平易な言葉で奥深い世界が描かれているので、和訳をながめながらよんでみると、語学の勉強にもなる気がします。

建築理論でおのれの設計行為を正当化することなく、石工が石を扱い続ける生活の中で得た実感をつむいだかの文章が綴られています。本文中では「美」beauteという言葉がなんどか使われています。同時代の建築家で、建築の実現すべき様態としての「美」を正面からかたるひとはそう多くはないです。ズントー建築の、極みのような「美しさ」を思えば、ズントーさまが「美」を語ることは、あたりまえのことかもしれませんが、だけど、当たり前ではない、ような、気もします。

聖ズントー様の建築、彫刻家が前にした石塊には、実現すべき彫刻はすでにそのなかに存する、それをおのれの技術とイメージで探しに行くというような、アリストテレス的な、エイドス(形相)とヒュレー(物質)のような感じでしょうかね。形相と物質は不可分ではない、みたいな。

聖ズントー様の建築が近所にあったらなあ、とたまに夢想しますが、、。

*ペーター・ツムトア『建築を考える』で邦訳版もあります。

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