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一旦帰国

私は今日の昼に淶源を出発し、北京首都国際空港付近のホテルに到着しました。
午前の練習を終え直ぐに移動したため昼食を食べ逃してしまいました。ホテルについて散歩がてらに空港へご飯を食べに歩いて行きました。

こちらの空港では3つのターミナルがあり私が宿泊する近くのターミナルは第1でしたが、そこには入り口がなくここに行くには第2まで移動しなければなりませんでした。第1ターミナルは歩いて5分くらいと大変近かったため少し遠い第2まで行くのにちょうど良かったでしたが、迷ったりして結局昼食を食べたのは15時30分頃になってしまい昼食を軽めにし、ついでに夕飯を調達してホテルへ戻りました。

第2ターミナルのファミリーマート。近くにはローソンもあった。
こうして日本の企業が海外へ進出するのを目の当たりにすると日本という国は本当に素晴らしいと思う瞬間。

私は11月1日に日本を出発してから明日でちょうど2ヶ月。黒竜江省チームを始め中国の方々には大変お世話になりました。現地の専門コーチはもちろん、ヨーロッパ人コーチとも知り合いになり、また、彼らから様々なことを学びました。そしてコーチングの深さについてたくさん考える機会をいただいた気がします。

今回、私が感じたコーチングの奥深さについてお話ししたいと思います。

コーチングとは…

私はコーチングがとても好きです。
スキージャンプは刺激的ですし、クロスカントリースキーは生涯スポーツです。
ジャンプは4年前に数日飛びましたし、クロカン練習も雪上はもちろん夏場のローラースキーも行います。ですから私は、ジャンプもクロカンも、コーチもスキーもどちらも好きです。

特に今回は、ジャンプをメインにコーチングをしたので、それらを中心にお話ししたいと思います。

疑似体験

自分が予測した考えやコーチとしての経験、それらの学びをその選手一人ひとりに微妙に調整して伝えておりますが、練習といえどもそれらが成功する喜びは格別なものがあります。特に選手とのコミュニケーションが上手に取れ、選手が考えることや思うこと全てが手に取れるように分かる時は、あたかも自分が飛んでいる感覚になる場合もあります。

それらは、疑似体験という言葉が適しているかと思います。

選手がジャンプを飛ぶ際、R1で受けるGの感覚やテイクオフの際で力を伝える感覚、また、テイクオフ後のジャンプスキーのどの部分がどのくらい風を受けたのか、その際の空中前半のスピードや中盤から後半にかけて飛距離が伸びる感覚、着地のしやすさや衝撃の緩和などなど。

そのような感覚になると選手にアドバイスをした際、更に具体的に伝えることが容易です。また、それらを理解している感覚なので逆に伝えすぎない程良いコーチングができる雰囲気もあります。

私はそれが好きです。

これは、選手たちが感じる緊張感も同様です。それらも私に伝わってくるのです。それは、私が選手の時に経験した懐かしい感覚と若干似ています。気のせいなのかもしれませんが、初めて感じた時にその選手に緊張した?尋ねたらとても緊張したと言っていました。その時に緊張感も模擬体験するのかと少し確信しました。

その選手は、試合前日の練習から調子が良く当日の試合もダントツで優勝することができたのですが、勝ちたい気持ちと勝たねばという責任感で緊張したそうです。
それは私も同様でした。ダントツで勝てる自信もあったし負けないとも思っていましたが、その日はなぜか珍しく緊張し、それが選手に伝わるのももしかすると悪影響を及ぼすかもしれないと思い落ち着くよう冷静を保ったのを覚えています。

実は大会などこのような場合、私が彼らに影響を与えるよりもしかすると彼らのあの感覚が私へ伝わり、私はそれらを模擬体験したのではないかと今は分析しております。

その感覚は私が選手の時に感じていた緊張感とは少し違う感覚もありました。特に腹の底がソワソワし足元は少しフアフアする感覚はこの時が初めてでした。視界もなんとなくぼやけていて特に注視しているもの以外の記憶はないくらいぼんやり見えていた感覚です。もしかすると年齢や経験を重ねることによって緊張という感覚も変わるのかと思いますが、それにしてもぼんやり感ですら今だにはっきり自分の脳裏に焼き付いています。

また、これらは試合でしか経験がなく、それは滅多に訪れません。今思い返すと16年間で約3回ほどしか体験したことがないくらい貴重な経験でした。

迷い

コーチの経験を積めば積むほどその模擬体験を経験しやすくなった感覚がありますが、逆にその感覚が体や頭の中で湧き起こらない時があります。

特に今回がそうでした…

このような状況は時に的を得たコーチングがしづらくなる感覚があります。また、これらは疲労などストレスが多くなり、話していても1本1本焦点がずれてしまう時もあります。そうなると選手との関係性や信頼性も薄くなる可能性も高くなり、自分なりの成果を上げることが難しくなる場合があります。

率直にいうと迷いが発生している証拠だと思います。

このような時は私はいつも基本など原点に戻ることが重要と考えています。
私の感覚では選手をリードしたり後押ししながらコーチングするのを一旦止め、選手の感覚を確認する作業を行う一歩下がった感覚のコーチングを行いながら、頭の中は今まで彼らの動きや理解するスピード、表情や言動、また、選手たちがジャンプを飛び終えリフトに向かう歩調や姿勢、ビデオを見ているのかどうかなどそれらの様子を観察しながら今までを振り返り原点に戻るように心掛けています。

原点に戻る

特に今回は初めて会う選手が多かったため、彼らがスキーをする上でどのような環境で育ったのか、またそれらの知識、練習や運動経験など未知でしたので、それら彼らのバッググラウンドを探ることが第一だと思いました。

練習中では、次から次へと選手が飛んでくるためそれらを確認することはもちろんできません。当たり前の話ではありますが、練習後のミーティングや食事、ウォーミングアップやストレッチなどちょっとした世間話をきっかけに話を聞きくことや、練習の様子を見てどのような運動が得意なのか、または苦手なのか、知っているのか、知らないのかを探ることが重要と考えています。

擦り合わせ

その中で、どうしても練習中に確認しなければいけない場面が訪れることもあります。そのような場合、選手がジャンプを飛んだ感覚と、私が選手のパフォーマンスを見た第一印象の感覚を簡単にすり合わせする方法があります。

それはテイクオフする際の早かったか、または遅かったかなどタイミングを確認することです。

カンテ(ジャンプ台の飛び出し部分)と選手のつま先、膝、おへそを結んだ際、一直線になることが重要。
これらは2つの確認ができる。
1つ目はタイミング。彼のタイミングは少し早いが許容範囲内である。
2つ目は飛び出し角度。赤い線より少し後ろにおへそがある。
ここへ到達するまでもう少し腰を前方方法に移動させると良い。
彼の飛び出し角度はとても素晴らしい。
しかし、黒線のように少しタイミングが早い。これだと蹴った感覚も軽い感じがあり、スキーの先端の上がりが遅くなる。スキーの先端を若干であるが上げ、かつ素早く行うことが重要であるが、それが遅いと空中フォームの完成も同時に遅くなる。
空中フォームに時間がかかるとエアブレーキとなり飛距離を伸ばすことが難しくなる。
写真2の続き。
上部写真の赤線のようにスキーの先端が下がってしまうと、空中の完成が遅くなり白い線の分の空中完成に時間を要する。
また、このような動きは空中中盤で体が起こされる感覚も発生する。
これはエアブレーキとなり距離を伸ばすことが難しくなるのと、それと同時に空中バランスが後傾になるのでテレマークも難しくなる。
写真の選手も手を後ろに引きながら横にも広げているのがわかる。少し細かいが、左肘も曲げることによって更に左スキーの先端を下げたリカバリーをしているのではないかと考える。

手や腕などを引くと体の前傾が止まり、またこの場面で手を広げるとこれもエアブレーキとなる。
更に青丸のようにテールが重なると左右のバランスを崩す可能性が高くなる。
彼は不安定なスキーバランスを無意識に手を広げ引くことによって修正しているのかと思う。転ばず安全には飛ぶことは可能だが、これでは飛距離は伸びない。
実はこのような選手は非常に多い。
テイクオフ時で重心が前方へ投げ出せるような角度をつけたとしても、空中フォームがすぐ完成できる正確な滑りと、飛び出しが求められる。

特に2枚目の写真では多分50cmくらいタイミングが早いと思います。1枚目の写真のように飛び出しでは少し膝が曲がっているくらいがちょうど良いタイミングですが、2枚目のように明らかにタイミングが早いのにタイミングが遅かったと分析をする選手も稀にいる。

私は練習の際、ビデオ撮影を常にしているため、このようにして選手の感覚がどのようになっているのか、またどのような感覚でパフォーマンスを発揮しているのか確認をし、選手なりの技術や動画・動作分析をどのようにしているのかを紐を解いていくことが重要と考えています。

私の感覚ですが、案外、動作分析が苦手な選手も多い気がします。細かなところを見落としてしまうことや、それらに気づかない選手が多いような気がします。多分一流の選手はこれら分析も上手ではないかと考えています。

時間の大切さ

動画や動作分析はとても重要と思っています。

しかし、これらに頼りすぎるのは良くありません。一番重要なのは自分の正確な感覚がちゃんとあることが大前提と思っているからです。それらがあることによって選手も自分のビデオなど見ながら疑似体験的な感覚を思い返し振り返りながらこの時はこのような感覚だった…など復習も含めて言語化することが可能と考えています。

特に選手は細かな感覚を言語化することによって更に具体的に分析できていると考えていますので、説明などポジティブな出来事は向上し、ネガティブな出来事は改善しやすいのかと思っています。また、私たちコーチも選手のフィードバックがとても理解しやすくい感覚があります。

しかし、ある方が言語化しすぎるのも良くないとおっしゃっていました。その方は特にオフシーズンは感覚を言語化しない方が良いとおっしゃっていました。
なぜなら、言語化しすぎてしまうと感覚が鈍感になるからだそうです。

これは大変深い話です。

私が考えるには、きっとそれらは2パターンあるかと考えています。

1つ目は、勢いで競技を行う選手。
2つ目は、言語化をしなくても自分の中の感覚がちゃんと残り理解している選手。

幼い頃は勢いでもいいのかもしれません。
しかし、ある程度体に成長が伴ってくると少しずつ理論やそれらを行うコツは伝えるべきだと考えています。勢いだけで行ってしまうとちゃんと技術を理解していないことが多いため後に大きく調子を落とし一から始める選手をよく見かけるからです。これらはもしかすると選手の性格や、一方的な指導がそのような状況を生んでしまっているのかもしれません。

一方、2つ目のパターンですが、私の感覚ではコーチング力など力量が高いのが関係していると思っています。アドバイスをする際、コーチなりの答えではなくある程度ヒントのようなものを伝えるのではないかと考えています。そして、選手は一旦それらを飲み込み淡々と物事をこなしトライ&エラーを繰り返しながら必要なものは残し、不必要なものは削ぎ落とす感覚かと思います。しかもそれは荒削りではなく、あたかも繊細な彫刻を作っているかのようにミリ単位で削り落とす感覚に近いのではないかと感じています。
後者の場合、選手の素直さがとても大きく力を発揮するのではないかと考えています。

それら両者を行うにしても選手生命は大変短いと感じているため、有限な時間はとても大切かと考えています。私たちコーチが彼らと携わる時間も同じかと思います。

これらを踏まえ、選手の個性を活かし、またそれらを理解しながら強弱を加え適切なタイミングで適切な量に調整し、程良い感覚で刺激することにより彼らの成長を促し有限な時間も有効に活かすことができるのではないかと感じました。

皆様のコーチングのコツや子育てのコツは何ですか?

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