喫茶日記
花を活ける。
喫茶店の前で自生する小さなバラ。草木。
小手毬。紫陽花。
できるだけ、各テーブルに、大なり小なりの花瓶やガラス瓶を一つずつ。
花を置くのが難しい席もある。
そんな席でも、お客さんが座ったとき、葉の鮮やかなグリーンや、花の色が目に触れるよう。他の席の花瓶の配置を、工夫する。
だから、どの席に座ったとしても、花や緑に、目で触れることができる。
そんなの、見ていない人、気に留めない人もいるだろうな、とは思う。
だけど誰かは、気づくかも知れない。
ほっと和んだり、心が潤ったりするのかも知れない。
そんなことを、頭の片隅で少しだけ想像する。
この開店前の時間が、結構好きだったりする。
時が経つのを忘れる。
無駄といえば、無駄。と、言うこともできる。
でもこの時間で、不思議と自分の心身が潤うのがわかる。
だからやめることは、なかなかにできない。
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昨日、5月3日。朝喫茶の日。
7時開店。12時閉店。
過去最高の来客数だった。
忙しくて厨房にたてこもりっぱなしだった私は、直接見ることができなかったのだけど
「入り口の外に、何組もお客さんが並んでいる」
喫茶スタッフのあいちゃんが教えてくれて、驚くとともに
「こんなのは、はじめてのことかもなあ」と。
なんだかしみじみした。
待ってくれている方達には本当に申し訳ないのだけど、ありがたいな…と。
お待たせしていることへの焦りも湧いてくる。
だけど仕事の精度と集中力は、保つよう心がける。
心尽くしの疎かになったものは絶対にお出ししたくないので、焦りそうになる自分を何度も傍観して、深く呼吸して、冷静さを保って、目の前のオーダーに全集中。
初めて来店された、喫茶店のご近所に住んでいるらしきご夫婦。
帰り際に、レジで
「明日もやっていますか?」
と聞いてくれて、嬉しかった。
明日も来ようと思ってくれたのかな、と。
ということは、
今日食べたもの、飲んだもの、空間などの
何かしらを気に入ってくれたということかな、と。
そうだとしたら、素直に嬉しい。
いい仕事ができたのかなと、自信にもなる。
「明日はやっていないんです。ごめんなさい。不定期開店なので、SNSでスケジュールをチェックしてみてください」
とお伝えした。
またゆっくりしに、どうぞ。
この来客数。
さすが連休、
とも言いたくなるんだけど。
ラムピリカが普段から『謎』なところは、
連休はガラガラなのに、平日に激混み、とか。
緊急事態宣言中は激混みなのに、明けた途端ガラガラ。とか。笑
こういうのが結構、日常茶飯事。
「世の中の流れとリンクしていないなあ」と思うことがよくある。
だから昨日の開店も、連休とはいえ、実は然程身構えていなかった。
何組かの常連さんが、遠慮してか、持ち帰りできるクッキーだけを購入して、席に座ることなく帰っていった。
パンケーキが今日は食べられないとわかって、泣いている子もいた。
これは、とてもとても悔しかった。
悔しかったから、改善の余地あり。
開店から約3時間後。
お客さんの数も、オーダーの数も、洗われていない食器も、どんどん積み上がっていくものだから。
お一人様で来店していた、古くからの常連さんが一人、
「手伝います」と挙手。
なんと、エプロンを締めて厨房に入ってくれた。
「ゆっくりしに来たのに、ごめんね、でもありがとう!」
そう伝えると、
「いや、こういうときは
こっち側になったほうがむしろいい」
と、山積みになった食器を洗いながら返事されて、
「男前か!!!」
喫茶店への愛を感じる。ありがたかった。
救世主。
あいちゃんのカバー力、全体見廻し力、次のアクションを決める力などなども、いつもの8倍は発揮されていて、すごかった。
私の脳が、キャパオーバーを迎え始めたのか、
「えーっと、つぎ、なんだっけ…😦」
と、ぽかんとすることが増え始めた頃に、あいちゃんが
「こっち(飲み物)はやっておくから、とりあえず今はこれとこれ、パンケーキ2枚、焼いて!」
って言ってくれたりして、非常にありがたかった。
(閉店後、あいちゃん、「開店中の記憶が既にあまりない」と言っていたの爆笑した。)
なんだかすごいチームプレーだな。運動会みたいだな。
なんて考え出して、途中から笑けてきていた。
昨日は中学からの古い友人も来店してくれていた。
閉店後に、こんな感想を聞かせてくれた。
「あまりに忙しそうだから、ちょっと途中、心配になったんだけど、厨房から笑い声が聞こえてくるから、あー大丈夫なんだなと思った」
ほんとうに、そう。
めちゃくちゃ忙しいのに、よく笑っていた。
脳みそがバグってた、ってのもあったかもしれないけど😂
なんだかこのチームプレイが楽しかった。
お客さんも、誰一人怒ったりせず、お喋りしたり本を読んだりしながら、喫茶店の時間を楽しみながら、食事や飲み物がやってくるのを、気長に待っていてくれたことも、とてもありがたかった。
「美味しかった!」とか
「子どもたちががすごく楽しんでた!」とか
帰り際に聞かせてくれたことも有り難かった。
そうそう、昨日は、お子さん連れのお客さまも多かったんだよな。
よちよち歩きの赤ちゃんの挙動にお客さんたちが笑って、知らない人たち同士で盛り上がったりしているのが厨房まで聞こえてきて、それも嬉しかった。
忙しいけど、笑いながら、友達と一緒に仕事ができる。
その仕事に、喜んでくれる人たちがいる。
「こんなに嬉しいことってないよなぁ・・・・」
と。
ラムピリカから帰る時、思わずラムピリカ全体に手を合わせてしまった。
帰宅後は湯船につかりながら、またしみじみしてしまった。
やる気が出ないなあ、という時も、やっぱりあって。
「やる気がない時は、喫茶店を開かなくても大丈夫」
っていう土台も、なんだかんだで出来上がっている。
「我が儘は最高の美徳」
ヘルマン・ヘッセだっけ。
いい言葉だなと思う。
自分の願いに、これからもますます、素直でいたいと思う。
素直でいると、嫌われることもある。
理解されないことなんて茶飯事。孤独を感じることも多々たたた。
だけど、自分だけは、自分をわかってやろうとすることを続けていれば。
そしてそんな自分を、隠すことなく素直に差し出していれば。
必ず、味方は、本当の友達は、できるんだなと。
開業以来、それを確認するばかりの7年半だった。
自分を潤すこと、自分を整えることが、最優先。
自分が満たされていて初めて、幸せの余剰分を、人にも喜んでお裾分けできるんだなと。
いい循環を、生めるんだなと。
このスタイルで、いいんだなと。
何度も確認して。何度も忘れて。
また確認して、また忘れて。また思い出して。
この繰り返しで人生が今のところ、続いている。
地味だけど、ダイナミックやね。
やっぱり面白い。人生。
そしていつも
たくさんのことを知らせてくれて、学ばせてくれて
私も含め、訪れる人たちを幸せにしてくれる。
作った私すら、不思議な喫茶店だと思うよ。
ラムピリカ。
いつも、ほんとうに、ありがとう。
あーしみじみ。
愛しているぜ。
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