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岡持ち

長女が大学に合格した。


受かっても受からなくても、どちらでもいい。
彼女の選択の織り重なりが、これからも続いていくだけだ。

・・・と、クールに構えていたつもりだったのに。


本日、合否発表。

「合格」の文字を見た途端に、ブワっと両目から、なんか温い水が溢れ出してきて、胸の辺りはぐぐぐっ!と、熱さが込み上げてきて。

「あーー、そりゃそうか、やっぱり嬉しいんだなあ」

と知った。

急に冬めいてきた天候のために、「今日は身体が縮こまるなぁ」と感じていたのが、一気に解れてしまった。火照った。

喜びって、すごい。
情熱って、すごい。



しかし、大学って・・・・・。

当たり前だけど、生まれた瞬間から、彼女のことを知っている。
もっというなら、モニター画面に映る、体重10gくらいの時の、小さな小さな心臓の躍動から知っている。

ここまでの成長を思うと、胸が熱くならずにいられない。

元夫から電話がきて、一緒に喜び合っていたら、また泣いてしまった。




合格したのは、美術大学。
彼女にぴったりの、「プロフェッショナルな工作」を学ぶ学科。

人の生活に寄り添っていく工作・・・日用品から工業品まで、「人が使うもの」を作ることを学ぶための学科だ。


最終面接の前夜、彼女は夜更かしして、部屋で黙々と何か作業していた。

てっきり、面接に持ち込む予定の、高校の卒業制作でもある「立体造形作品」に取り組んでいるのかと思っていた。

でも実は、その作品を入れるための「岡持ち」を段ボール工作で作っていたことを、面接当日の朝に知らされる。

「えっ・・・」
「作品完成してないのに?」
「岡持ち作ってたんだ?へぇ・・・?」

と言いたいのはひとまず飲み込んで、「岡持ち、すごいねっ!」と言ってみる。「可愛いねっ」「クオリティ、高!」とか。

(本当にクオリティ高かった。手に寄り添う、持ちやすい取手に、作品が飛び出さないためのロックまでついていた。全部素材は段ボール。)

言ってるうちに、なんか俄然、笑えてきて、最終的には
「すげーなこの人。大物だな。」
「メインの作品完成させることより、岡持ちですかー😂」
と思い、爆笑しながら面接へと送り出す。



結果、面接を担当してくれた教授陣に、質問される。

「脇に置いてある、段ボールのそれはなんですか?」

  ー   作品を入れる岡持ちです。昨晩作りました。

そう答えて、バカうけしたらしい。

始終仏頂面だった教授も、岡持ちには笑ったらしい。


「好感触だった!岡持ち作ってよかった!」

とガッツポーズの長女。


作品や論文で評価されたのか、岡持ちで評価されたのか、もはや知る術はないけれど。

彼女らしさを発揮しまくって、それが大学側とマッチしたということは間違いないらしい。

しかし大学受験って、こんなに笑えるものだったっけ?笑

自分の時のこととか思い出してみると、深刻さと緊張で満ち満ちだったけどな・・・



何にしても、嬉しい。
これからも、ますます楽しんでほしい。
ますます、彼女らしさを爆発させ続けてほしい。


これからも、ますます笑える未来を選択していこうぞ。

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