[福富太郎の眼]と私
福富太郎さんのコレクション展が東京ステーションギャラリーで6月27日(日)までの予定で開催されてます。
(現在は休館中、詳しくはホームページなどでご確認下さい)
ここでの目玉商品がなんといっても、北野恒富の道行き心中ものの屏風です。北野恒富は美人画で有名ですが、その有名さはこの作品に負うところ大です。恒富の力とその限界も福富太郎さんはよく知っていました。
福富太郎さんは現物の女を集めてキャバレーという形で商売するのが仕事でした。ですが、本人と会うと、僕はちっとも女なんか好きじゃない。僕の店なんか自分だったら行かないね、なんてうそぶいていらっしゃいました。そのくせ、色々事情(わけ)ありの女達の職場を万全に用意していました。託児所が併設されているキャバレーなんて今どきもうないかもしれません。女達に愛情があったからこそ、もう女なんて面倒くさいというちょっとした諧謔を口にしたのでしょう。僕が元気な福富さんとお話したのは結局たかだか10年くらいではありました。
たぶんもっと沢山お話したのは、父であり、父の弟子になる加島さん(彼の息子が今加島美術というのを率いている)や、あと多分●動画廊さんとか●明画廊さんだったでしょう。
思文閣から独立する形で秋華洞をオープンするとき、親切な紹介文を寄せてくれたのも福富さんでした。
福富太郎様 (キャバレー「ハリウッド」創業者)より
「掘り出し物が出る店」
https://www.syukado.jp/about/recommend/
また、創業まもない頃インタビュー記事も作りました。
秋華洞丁稚ログ(日記)
http://blog.livedoor.jp/syukado/archives/50604249.html
美術品蒐集の達人に聞く!(レポート)
キャバレー「ハリウッド」創業者 福富太郎氏 | ものさしをはっきり決めよ (2006-10-03)
https://www.syukado.jp/interview/vol002/
この記事の中で、福富さんはまだ若い僕に興味深いことを沢山伝えてくれています。その頃の僕は十分にそれらを理解していたとは言い難いかもしれません。
「お客に儲けさせよ」「お客の絵をけなしては駄目だ。褒めろ。」「権威なんて関係ない」
福富さんが長年コレクションをしていてわかったことを、かんたんに受け取ることはできません。。このインタビューを10年以上を経て読んで、あらためて勉強になる。コレクターが何を求めているのか。そこを考えなければいけないと思います。
インタビューもあるように、美人画と戦争画が福富コレクションの軸でありました。なぜ美人画なのか。
それは彼の著書『絵を蒐める』に詳しく書いてあります。
テーマを持った作品コレクションのいいところは、作品が高くなるとか安くなるとか、有名とか有名でないとか、一過性の評価ではなく、歴史という縦軸、ジャンルという横軸を串刺しにして、芸術の本質を見ていくことができるということです。今はバブルとも言われる現代美術ブームですが、コレクション人生は長い。コレクションには生き方が現れる。尊敬される生き方とはなにか。尊敬されるコレクションとはなにか。
この展覧会で、そんなことも、みなさんと一緒に考えたいと思います。
動画で語る「福富太郎の眼」田中千秋Youtubeより