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塔の魔導師 free

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「君には魔導師の才能がある。」 奴隷階級の少年リンは、旅の魔導師ユインからそう告げられる。 その日からリンの魔導師を目指す旅が始まった。リンはユインに連れられて魔導師の街グィンガ…
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2017年12月の記事一覧

第115話「板挟み」

第115話「板挟み」

前回、第114話「エディアネル公」

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 王室茶会に出席するウィンガルド貴族の中にエディアネル公という人物がいた。

 意地悪が顔に張り付いたような中年の女性だった。

 いつもピリピリしていて余裕がなく誰彼構わずケチをつけては口論をふっかけるのでみんなすっかり辟易していたが、かと言って広大な領地を治める大貴族のため下手に逆らうわけにもいかず、みんな表面上はどれだけ罵倒されてもニコニコ

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第114話「エディアネル公」

第114話「エディアネル公」

前回、第113話「表の顔と裏の顔」

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立派な貴族のお屋敷。

その中にある暗くて狭い密室。

そこでフローラは作業していた。

室内には換気口があるだけで窓はおろか外が見えるものは何一つとしてない。

部屋の中央に配置してある台には顔に布を被された人間が横たわっている。

周りにはハサミやメス、注射器などが置かれている。

その様はあたかも手術室のようだった。

フローラは先程からこ

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第113話「表の顔と裏の顔」

第113話「表の顔と裏の顔」

前回、第112話「革命の気配」

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 リンは法律学の授業に参加していた。

(政治家の道を目指す以上、法律についても学ばなくちゃね)

 教室に向かいながら昨日、カロと話したことを思い出す。

「当面はギルドの設立と議会の設置を目標にしたいと思います」

「議会の設置……ですか?」

「左様。格差が広がっている背景の一つが、評議会が全てを決めている事です。貴族ばかり所属している評議会が

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第112話「革命の気配」

第112話「革命の気配」

前回、第111話「妹弟子」

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 リンは学院の授業が終わった後、ミルジットを迎えに行った。

 テオには先に帰ってもらう。

「妹弟子ぃ?」

 テオは怪訝そうな顔をしながら言った。

「うん。師匠に世話を頼まれたんだ」

「お前もお人好しだな。そんなもんいちいち聞く必要ねーだろ。大体俺達はもう自分で師匠を雇えるんだ」

「まあでもほっとけないし」

 リンはミルジットが降りてくる

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