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塔の魔導師 free

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「君には魔導師の才能がある。」 奴隷階級の少年リンは、旅の魔導師ユインからそう告げられる。 その日からリンの魔導師を目指す旅が始まった。リンはユインに連れられて魔導師の街グィンガ…
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2017年10月の記事一覧

第107話「放課後の魔獣狩り」

第107話「放課後の魔獣狩り」

前回、第106話「元700階の男」

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 鎧を着た大鬼(オーク)が黄色の森を歩いている。

 豚のような鼻にイノシシの牙、とんがった耳、落ちくぼんだ瞳、そして2メートルは優に超える巨体。

 部族同士の抗争があったのか、返り血を浴びていた。

 リンは木陰からオークの方を覗いていた。

(あの鎧に光の剣は通らないな)

 鎧は金属製だった。

 リンは『物質生成魔法』を唱えて鉄球を繰り

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第106話「元700階の男」

第106話「元700階の男」

前回、第105話「モラトリアムの終わり」

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「やっほー。リン」

 リンは教室に行く途中でテリムと鉢合わせた。

「テリム。君もラージヤ先生の授業?」

「うん。その様子だとリンも受けるようだね」

 二人はユヴェンを挟んで微妙な距離感を保っていた。

 周囲には二人をライバル関係とみなす向きもあったが、お互い揉め事を好まない性質から周りの雰囲気に左右されることなく上手くやっていた。

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第105話「モラトリアムの終わり」

第105話「モラトリアムの終わり」

前回、第104話「不安な誘い」

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 魔導競技の結果、軍事系の単位を多数取得したリンは順調に高等クラスに進学していた。

 ついに高等クラスになってしまったがなってみればあっという間だった。

 初等クラスの頃は高等クラスの人間というだけでカッコよく見えたものだが、いざ自分がなってみればあっけないものだった。

 果たして自分はあの時から比べて幾らかでも成長できたのだろうか。

 リン

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第104話「不安な誘い」

第104話「不安な誘い」

前回、第103話「事後処理」

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 レンリルの紡績工場。

 ここでは魔法が使えない者、塔においては奴隷階級の者でもまかなえる仕事が数多くあった。

 フローラもここで働く奴隷の一人である。

 彼女は先ほどからせっせと手を動かして働いていた。

 しかし仕事は山のようにあっていつまでも終わらない。

 機械は容赦なくフローラの仕事を増やしていく。

 この分だと今日も彼女は規定量の仕

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