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大自然の中で生きるマサイの暮らし。ある日常の出来事。
マサイのジャクソンさんと永松真紀さん夫妻の村に滞在する「マサイの伝統文化体験スタディツアー」。この村にこれまで何回も訪れたけど、行くたびに新たな発見やビックリ驚く出来事、目からウロコがボロボロ落ちるような体験や、心からの感動に出会える。
今回の旅は、いつもに増してさらにすごかった。様々な出来事に出会ったのだけど、最も衝撃だったひとつの出来事を紹介したい。
朝早く、まだ真っ暗なうちに目覚めて、ゆっくりと日の出を見るのがいつもこの村で楽しみにしていることなのだけど、この日の朝は、夜明け前からジャクソンが、「すぐそこにシマウマが死んでいる」と教えてくれた。
それでみんなも誘って見に行くと、ついさっきまで生きていたはずのとても美しいシマウマが横たわっていた。体はきれいなままだ。
一体このシマウマに何があったのだろう?
こういう出来事があるときの、ジャクソンさんの観察ぶりはすごい。まさに、検視官ばりの、隅から隅まで丁寧に観察し、周辺の環境も見て的確な推理をしていく。今回は、無傷のシマウマにほんの少しだけ血の跡がある場所(肛門付近)を注意深く見て、そこに、とても小さな裂傷があることを見つけた。
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ジャクソンさんの推理によると、おそらく、シマウマの背後から何者かが近寄り、肛門を噛み、そこから腸を引き出して、シマウマは数歩よろよろと歩いてそのまま倒れて息絶えたのではないか。ということだった。
その「何者か」は、おそらく、ハイエナではないか、とのことだった。
それにしても、ジャクソンさん・真紀さんの家はすぐそこにある。
そもそもが、大自然の真っただ中の家なので、家の周りには常にとても多種多様な野生動物たちが集まってきたり通り過ぎて行ったりする場所だ。それが近年、以前にも増して野生動物の姿をよく見かけるようになったし、それだけではなく、家のすぐそばまでやってくる、時には家の敷地内もキリンが通り抜けて行ったりする姿を見るようになった。
これは、近くにある有名な動物保護区よりもこのエリアのほうが環境がいいからで、さらに周辺の道路建設や農場などの自然環境破壊から逃れてきた野生動物たちにとって、このエリアがまさに最後に残されたサンクチュアリともいえる状況にあるからだと思う。
どの動物たちもこの地球の状況に困っている。そして、最後に残された自然の豊かな場所へと、集まってくるのだった。
このシマウマたちの鳴き声や、存在の気配を、前の晩にもすぐそばに感じていたのだけれど、朝早くにこんな出来事に接した。
シマウマの仲間たちは、すぐそばで仲間のことを呼ぶ声をあげている。
さて、ジャクソンさんは、この家のすぐそばの場所の、しかもオープンなエリアにシマウマの死体を放置することは、ハイエナなど肉食動物が集まってきて危険があるため、どうにかしないといけないわけで、すぐに若者たちを呼び、すぐそばの森の中へこのシマウマを移動させることにした。
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私たちの参加者の中には、医学部5年生の学生さんがいたり、手術室勤務だったナースがいたりして、身体のことなどにも非常に詳しく興味も持っている。そっと口の中を見せてもらったり、様々に観察させていただいてから、若者たちがロープを持ってきてシマウマを森の中まで運んでいった。
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ジャクソンさんの話によると、そのうちハゲタカやハゲワシなども気が付いて集まってきて、ハイエナやジャッカルなどサバンナの掃除屋さんたちが片づけてくれることだろう、ということだった。
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さてその後、私たちはジャクソンさんと真紀さんの案内で周辺の大自然を散策したり、盛りだくさんのマサイの伝統文化体験を楽しむ一日を過ごし、夜になって焚き火を囲んでいるときに、はて、そう言えばあのシマウマはどうなったのかしら・・・と、ジャクソンさんに聞いたところ、衝撃的な事実を聞いた。
普段だと、夜に焚き火を囲んでおしゃべりしているときには、次々と周辺にハイエナが集まってきて声が響き渡るのだが、その前日の夜には、その声についての解説をジャクソンさんがしてくれていた。
ハイエナの声は、低い声から高い声まで、ウーウォ、という感じの声を響かせることが多いのだが、その泣き方は、「あーあ、食べ物がないや。ガッカリ」という、失望の鳴き声なんだよということを教えてくれた。
逆に、食べ物を見つけたときの鳴き声や、多くのハイエナたちが集まって食べ物を奪い合うときの声は、それとはまったく違う鳴き方で、そのような動物たちの事情にジャクソンさんは非常に詳しくて博士のようだ。
で、シマウマの死骸がすぐそばにあるのに、ハイエナの声がまったく聞こえてこないので、どうしたのかなと思っていたら、ジャクソンさんがシマウマどうなったかなと夕方に見に行ったときに、そのシマウマはすでにその姿が見えないくらいに真っ黒に軍隊アリの大群に覆われていたということだった。
この大自然の暮らしの中には、驚くほど様々な種類の昆虫や植物や動物たちがいて、それぞれに自然の中での役割を果たし、関わり合って生きている。だからここでは、何一つゴミにはならないし、死体も排泄物もあっという間に自然の中の生き物たちが片づけてくれるのだった。
さて、翌朝になり、みんなでシマウマがどうなったかを見に行こうということになった。現場に行ってみると、なんとシマウマは、跡形もなく完全になくなっていた。検視官ジャクソンさんがまた周辺を注意深く観察し、解説して案内してくれる。
昨夜、アリの大群を追っ払うためにジャクソンさんが火のついた薪をすぐそばに置いていた。それで少しアリの数が減ったところで、ハイエナたちが来て、振り回して地面に擦り付けながらアリを追っ払い、すべてを完全に食べていった跡を見つけることができた。
かすかな肉片や小さな骨、歯の着いた顎骨をたどりながら森の奥まで歩いていく。そして最後には、しっぽだけが残っていた。
ジャクソンさんの推理によると、3匹のハイエナたちがこの大きなシマウマ1頭を片付けたということだった。もうお腹がはちきれんばかりに食べて、歩くこともできないような姿になって今頃はそのへんで寝ているだろう。ということだった。
途方もない貴重な経験をさせていただいた。私たち訪問者は、ジャクソンさんたちが守ってくれるからこそ安全に滞在をしていろいろと楽しませていただけるけれども、このようなことが日常的に起こる大自然の中のマサイの暮らしはどれほど大変なことがたくさんあるだろうか。心からのリスペクトが湧いてくる。
言葉では言い表せないくらいの様々な学びのあるこのスタディツアーも、いつも真紀さんと言っているけれども、今のこの世界の情勢や地球の状況、そしてケニアの急激に変化していく社会状況を思うと、一体いつまで続けられるのだろうか。出来る限り続けたいけど、出来なくなる日もすぐそこまで来ているのかもしれない。彼らマサイの暮らしがいかに真剣勝負の自然との向かい合いであるか、それを体験してもらいたいし、参加者の皆さんと共に学び合うための機会を、事情が許す限り作り続けていきたいけれども、それが出来なくなる日ももう秒読みに迫っているような気もする。
だから、思い立ったら後回しにしないで、是非すぐに来ていただきたいと思う。いつか行きたい、と思っていたら、その日は決して来ないかもしれない。
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★「マサイの伝統文化体験スタディツアー」に参加したい方は、永松真紀さんにメッセンジャーもしくはメールでご連絡ください。マサイの長老ジャクソンさんとその妻の永松真紀さんの村に行くプログラムです。私と真紀さんのダブルガイドでご案内します。
永松真紀さんのfacebook
https://www.facebook.com/maki.nagamatsu.1
永松真紀さんのホームページ