ヒップホップのすてきな三にんぐみ②RHYMESTER【前編】│ひとりアドベントカレンダー#10
三人組というのは何かと魅力的だ。昨日は、私が敬愛してやまない日本語ラップの三にんぐみ、鎮座DOPENESS×環ROY×U-zhaanについて書いた。
今回は、日本語ラップ史において押しも押されぬレジェンドにして現役プレーヤー、RHYMESTERについて。私が一番聴いてるヒップホップグループでもある。
余は如何にしてRHYMESTERを聴くに至りしか。
ライムスター
1989年結成。宇多丸(ラッパー)、Mummy-D(ラッパー/プロデューサー/またグループのトータルディレクションを担当 *作編曲家としての名義はMr. Drunk)、DJ JIN(DJ/プロデューサー)からなるヒップホップ・グループ。自他共に認める「キング・オブ・ステージ」。フィジカルとエモーションに訴えかけるパフォーマンスと、当意即妙なトークによって繰り広げられるライブに定評がある。
1980年代後半、まだヒップホップが広く一般に認知されるはるか前より「日本語でラップをすること」の可能性と方法論を模索。並行して精力的なライブ活動を展開することによってジャパニーズヒップホップシーンを開拓/牽引してきた。
近年はグループとしての活動に加え、各メンバーがラジオパーソナリティーや俳優など活躍の場を拡大(後述、詳細はメンバーそれぞれの項で)。結成30周年を迎えた2019年にはアニバーサリー企画としてグループ史上最大規模の47都道府県48公演に及ぶ全国ツアーを敢行、成功へと導いた。
──RHYMESTERオフィシャルサイトより
グループのプロフィールは上に引用した通り。つまるところ、日本語ラップの黎明期から現在に至るまで、(グループとしては1年間の活動休止を挟んだものの)少しもその勢いを衰えさせることなく活動しつづける30年選手なのである。
一方私が日本語ラップを日常的に聴き始めたのは2017年から。RHYMESTERのキャリアの長さに対して、正真正銘ポッと出リスナーである。
で、2017年は同時に、私がポエトリーリーディング/スポークンワーズの活動を始めた年でもある。そのへんの経緯はこうである。
大学短歌会を通じて知り合った友人が出演する朗読ライブを見に行き、衝撃を受ける
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自分でも細々と詩を書いたり朗読したりし始める
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それを知った高校時代の文芸部の先輩に、小林大吾(詩人/ポエトリーリーディング/グラフィックデザイナー)の音源を勧められる
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小林大吾にはまってめちゃくちゃ影響を受ける
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小林大吾をフックアップした古川耕(放送作家・ヒップホップライター)が気になる
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古川耕が構成作家をしているラジオ番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(通称タマフル)を聴き始める
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タマフルのパーソナリティ・宇多丸が属するヒップホップグループRHYMESTERの事が気になる
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RHYMESTERを聴き始める、はまる
経由地としてはあまりに重要すぎる小林大吾
いくらなんでも遠回りがすぎるが、まず、RHYMESTERへの経由地その一・小林大吾を聴かなければいまの私のポエトリーリーディングのスタイルは確立されていない。いっとう最初に聴いた「ダイヤモンド鉱/hot water pressure washer」の衝撃と、他に譬えがたい心臓の高鳴りは一生忘れることがないだろう。この世にこんな素晴らしいものを作れる人が!いた!と目を開かれる思いだった。
……このくらいにしておかないと小林大吾についての記事になってしまう。ということで、小林大吾といういろいろとわりきれない、ただし無類に魅力的な人間については、いくらのよしはさんのnoteが全部説明してくれているのでちゃっかり任せてしまおうと思う。
結節点としての古川耕、そしてタマフル
さらに、小林大吾をフックアップした古川耕の存在がなければ、私はヒップホップや日本語ラップをずっと聞かなかった可能性すらある。
今でこそポエトリーリーディングとヒップホップシーンの交流は盛んだが、私がその両方をふらふら行き来できているのも古川耕という結節点あってこそのものだ。
その結節点から繋がった行き先とは、古川氏が構成作家を務めていた、TBSラジオの番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(2007〜2018年)。
なんと11年間もの間、TBSラジオの「土曜の夜」枠に君臨していた番組だ。後継番組「アフター6ジャンクション」でもおなじみのゲスト陣(しまおまほ、春日太一、町山智浩、三宅隆太、柴田元幸、トミヤマユキコ、藤村シシン、竹中夏海、西寺郷太などなど……)が既にこの番組のころから常連としてスタジオにやってきては、時に鋭く、時にものすごくくだらない切り口で、様々な特集を繰り広げていた。年ごとの「特集リスト」を見るだけでも、その視点の幅広さとクレイジーさに唸ることうけあいである。
……と訳知り顔で書いてみたが、そんな私はタマフル11年の歴史に対して、2017年の秋ごろから聞き始めた、またもやポッと出リスナーなのである。年が明けて2018年、宇多丸さんが、
「タマフルは!終わりま~?終わりま~?終わりま~?………………………………………す!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
と宣言して、なんと聴きはじめたばかりのタマフルは2018年3月31日をもって終わってしまった。ポッと出リスナーはあっけにとられるしかなかった。
RHYMESTER「人間交差点」
タマフルが終わるのは寂しかったが、後継番組「アフター6ジャンクション」が始まるとすぐに馴染んだ。それに、タマフルでちょいちょい宇多丸さんがかけていたRHYMESTERの音源がかっこよかったり、番組のゲストとして時々やってくるRHYMESTERのメンバー・Mummy-DやDJ JINとのおしゃべりが面白かったりして、すっかりRHYMESTERリスナーとしても育成されていたのである。
初めてまともに聴いたRHYMESTERの楽曲は「人間交差点」。
聴いた第一印象は「え、かっこいい……(困惑)」だった。大変恐縮ながら私もかつては、日本語ラップ=”どことなくチャラくて軽い”というイメージを持っていた。そこでこのスタイリッシュなトラックと、カッコよさど真ん中のラップに接し、衝撃を受けたのである。
そこからは過去のリリース作品をどんどん聴き込み、日本語ラップの歴史なども知るようになり、ますますRHYMESTERにのめりこんでいくことになるのだが、思いのほか長くなってしまったのでここまでを【前編】とする。続きは明日【後編】で!