ことばのことばかり
ことばのことばかり考えて遠回り、
物わかりのわるい物語の横流し。
連なり、転がることばたち。横並びの
中からなかなか出ない大当たり。
ことばのフレームからはみ出した世界を虫取網で捕まえに行った子どもが帰ってこない。あの笛吹きに連れ去られたんじゃないか……街の噂は膨れあがり瞬く間にしぼむ。
彼は早速、旅先で面白いものに出会った。
(1)武士の侍が馬から落ちて落馬したとか
(2)鳩時計から出てくるのが鳩じゃなくカッコウだとか
……まあ、たとえばそういうこと。
詩人志望の少女はロマンチストでリアリスト。自意識過剰なポエムで言い寄ってくる男たちの出鼻をきょうも鮮やかにくじいては、書斎にこもって思案に暮れる。
「いばら姫の呪いは100年で解けたけど、このスランプは悠久の歴史になりそう。世界を言葉でつかまえられると思い込んだ夢を覚ます王子様のキスはまだ来ないの?」
ことばのことばかり考えて遠回り、
物わかりのわるい物語の横流し。
連なり、転がることばたち。横並びの
中からなかなか出ない大当たり。
たまたまそのへんに転がっていたばかりに
捕まえられそうになって逃げ回る世界と、
それをてんでばらばらに追いかけ回している
ことばたちの永遠のコメディー。
ことばのことばかり考えて遠回り……
(2016年9月)
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