7-8月のお薦め本
夏のにぎわいと胸の揺さぶりに身を任せていたら、あっという間に8月も終わりに。7月の振り返りすら書けておらず、不摂生を深く反省しつつ、夏に読み漁った本を並べてみることにします。
人を、どう観察するか。
街を、どう観察するか。
そんなことに興味をもっていました。フランスの有名な庭師 ジル・クレマン氏の『動いている庭』や、知る人ぞ知る(文化系の人に人気のある)岸政彦さんの『マンゴーと手榴弾 生活史の理論』など、印象に残る本がありました。
さて、それでは7-8月に読んだ本を記載します。
1. 動いている庭 (お薦め度:★★★★★)
人間が放棄した土地を「荒野」と呼ぶなら、それは、自然にとって「理想の庭」なのではないか。ジル・クレマンは、そんな問題提起をします。決まった場所(例えば花壇)に、決まった花や植物を咲かせるのではなく、できるだけ自然に寄り添い、彼らの生き様に添うことができないか。そう言っている気がします。今度パリに行ったら、アンドレ・シトロエン公園で時間を過ごそう、そう思わせてくれる良書でした。
2. マンゴーと手榴弾 (お薦め度:★★★★☆)
「え、マンゴーと手榴弾?なにか関係があるの?」そう思った人は多いはず。実際、私が読んでいても複数の人からそう聞かれました。でもさすが岸先生、その謎はきちんと解かれます(笑)。彼はデザインリサーチにも通じる、定性的な社会学の価値を研究している人ですが、執筆家としてもばつぐんに腕がいい。従来の定量をベースにしていたマーケティングから、ひとりひとりの声を聞き、作り手としての意志で価値を問う、そんなデザインマーケティングの時代がきたのだなと感じさせてくれる一冊です。
3. 都市をたたむ (お薦め度:★★★★☆)
建築の本は難しいという印象がありますが、この本は3日間で読んでしまいました。戦後の日本の成長を支えたベビーブームという「先が読めない」人口増加と、現在の少子高齢化という「先が読める」人口減少をうまく対比させ、都市の視点でこれからとるべき施策を提示している本でした。
4. 未来をはじめる (お薦め度:★★★★☆)
高校での5回にわたる特別授業をベースに書籍化されたもの。「政治」と聞くとどこか自分と遠い、他人のものな気がする(私にとってもそう)。でも現実的には、クラスでものごとを決める際の決め方や、個性あふれる友だちとどう付き合っていくのかも、「決める」ことがついてまわる。「それが政治の基本なんだよ」と言っている宇野先生の愛情たっぷりの授業が目に浮かび、生徒とのやりとりの抜粋を含め、微笑みながら読みました。
5. あなたを選んでくれるもの
6. ここでのこと
7. 体操をつくる
8. 百年と一日
9. 30年目の待ち合わせ
10. なめとこ山の熊
11. はじめての民俗学
12. 虹む街
13. 読む時間 (お薦め度:★★★★★)
本を読む。それは、別に知的なことだけではない。自分の情熱がたまらなく注がれる本かもしれないし、ベランダでリラックスして眺めるものかもしれない。中年のおじさんが売店で読む新聞も、雑踏の中、夢中で読み漁る少年の本も、すべて、一言でいえば読むことだ。「読む」ことが、いかに普遍的で、世代を超えて愛されるものであるかを教えてくれる本でした。