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つつじの花が咲く頃

 ユキは昼休みにキャンパスを抜け出してヒロが待つ駅に向かった。つつじの花が咲く頃、心地よい風が吹いている。ヒロはいつものように改札口の前で待っていた。ヒロははにかんだ笑顔でユキを迎えた。

 ヒロはバイト先の先輩だ。週に一度はこうしてユキと二人だけの時間を過ごす。ランチを一緒に食べるだけでも、ユキは幸せだと感じている。早速洋食屋に向かって定番のパスタをお揃いでオーダーして食べる。

 「今日は朝から少し大変なの」とユキは話を切り出した。家でバタバタとしてしまって親と少し気まずいことになった、と。「そんなこともあるさ」とヒロは落ち着いている。いつもユキが一方的に話し込むけど、ヒロはそうなんだ、といろいろとグチを聞いてくれる。ユキは学内に友人はいるけど、あまり関わりを持っていない。むしろ、バイト先の先輩のヒロの方がそんなユキの一匹狼ぶりに心配になって、話し相手だけでもと買っている。

 ヒロもまた友人が多いとは言えない。バイト先の方が知り合いが多いくらいだ。ユキとこんな関係になったのは、バイトの現場でユキに優しく接していらからだ。ここはこうするんだよ、この時はこうしてね、という指導がソフトでユキには心地よく思えた。やがてユキは相談事をヒロにするくらいの仲になったのだ。

 いつもありがとう、とユキは謝意を示した。ヒロは特に何もしてないけど、と返すけど、後輩のユキが慕ってくれることに悪い気はしなかった。また後ほど、とユキは改札口でヒロと別れた。キャンパスの帰り道、つつじの花の前を通った。中学・高校を女子校で過ごしたユキはヒロが初めての恋の相手。花言葉そのままに恋の喜びを感じている。

(おわり)

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