転機に気付け!風に乗れ! Vol.19 命
占い師は娘の生年月日を見て驚き、マジマジと彼女を見た。
「この子は仏の子だね。墓守とかも言われてる何万人に1人の割合で生きてる子。
この生まれの子は、死産になるか、1歳までに命を落とす子がほとんどなの。
でも、そこで生き残った子は私たちの間では、ゾンビと呼んでるくらいの生命力で、飛行機が落ちても一人生き残るくらいなのよ。
そして、この子が祖先の墓を守って行くことになる。その代わりにこの子は神仏に何かを願えば全てが叶うからね。
お墓まいりは必ず連れて行ってね。
だから、観音様もここにいらしたのね。」
その時、思い出したことが2つあった。
まず、わたしがこの子の妊娠に気づいたのは、なんと5ヶ月の時だった。
つわりもなく、本当にまさか、まさかの妊娠だったので、少し太ったなぁ、と必死に腹筋やダンストレーニングをしていたぐらいだ。
無茶なことをしてたのに、お腹の中でよくぞ無事でいてくれたと思う。
1度だけ貧血で倒れたのと、毎月の来るものが来ないので、わたしは、何か病気かと思いこみ、病院に行った。
病院に行くと、すぐに産婦人科にまわされ、エコーをお腹に当てられた。
そしたら、赤ちゃんの形をした影が動いていたのだ。
この話を、誰にしてもよく笑われるが、お腹がそういえば、グルグルと動くことがあったのだけれど、私は、お腹が弱く、よくお腹がグルグルなってたので、気にもとめていなかった。
赤ちゃんの影を見たとき、本当に驚いた。
それと同時に、今までになかった初めての感情が込み上げた。
愛おしくてたまらない!
涙が溢れるような幸せ感。
これが無償の愛というものなんだ!
何よりも大切な宝物がわたしの中にある。
感動!
お腹の中の子の命と、そして自分自身の命をかけがえのないものだという自覚が生まれた瞬間だった。
1つが、この生まれるまでのエピソード。
もう1つは、
娘が7ヶ月くらいの時のこと。
毎年恒例になっていたホノルルマラソンのボランティアに行き、
帰国前に風邪をひかせてしまい、それが日本に帰ってから悪化したのだ。
南国の風邪はきついと聞いていたが、本当に高熱が出て、病院に通うも、普通の風邪薬をもらうだけで、それを飲ませても良くならなかった。
1人で見ているのも不安だったので、実家に連れて行き、一緒に寝ていると、今度は体温がドンドン下がり、ぐったりしている。
夜中だったので、幾つかの救急病院に電話をして、状況を話すも、
「あったかくしてあげてください」と言われるだけ。
夜中ではあったけれど、いつも診てもらっていた街の小児科の先生にも意を決して電話をしたが、同じことを言われた。
でも、なお、体温は下がっていく感じがした。
体温が下がるというのは、熱が出るよりも、死への恐怖が心を支配していく感じで、本当に焦った。
体温をはかると35度を切りそうなくらいで、冷たい。
和室にいたわたしは、そこにあるおじいちゃんのお仏壇に向かって手を合わせ、
「どうか助けてください。
わたしはどうすればいいのでしょう。」と、ぶつぶつ念仏を唱え出した。
その時、電話がなった。
小児科の先生だ。
「うちは、街医者だから救急もやってないけど、すごく気になるから今からすぐに連れて来なさい!」
わたしはすぐに連れて行った。
先生は、子どもを見るなり
「やっぱり。これは脱水症状です。
すぐに点滴をしましょう。
危なかった、このまま、ほっといたら、こんな小さな赤ちゃんだから死に至ったかもしれない。
とにかく良かった。
もう大丈夫だから。」
感謝と安堵で胸がいっぱいになり、涙が溢れた。
「本当にありがとうございます。」
占い師が、
「この子は仏の子だから、何かあれば仏さまに手を合わせれば全て叶う。」
と言われた時に、このエピソードを話した。
「それは、本当にすごい!
仏壇の前で寝させてたことと、あなたが手を合わせたことで、この子は助けてもらった。
もう、この娘さんはゾンビよ。
長生きするわよ~。
強運を獲得してるからね。」
親にとって、「子どもが、長生きする。強運を持っている。」と聞くことがどれほど嬉しいことか。
あの時の脱水症状で弱っていく我が子が助けられたエピソードは、大切な人が生きていてくれてることが幸せなんだということを、わたし自身が念押しされた体験だった。
子どもの未来には、あらゆる可能性がある。
でも、それは親の希望とは違う道にいくことも含む。
子どもが成長してくると、親の希望や期待も膨らみ、子どもの望まないことを押しつけてしまうこともあるのかも知れない。
自分の考えとは違うことを子どもが選んだり、時には、反抗的な態度を取ることもあるから、もちろん、親も怒ったりイライラすることは、子育て中何回もあるだろう。
わたしも、当然あった。
親もいつも仏のようには接することも出来ないだろう。
そんな時は、ケンカもして、良いと思う。
でも、子どもが生まれた時、
小さな体をこの手の中に抱いている時、
よちよち歩きの最高に愛くるしい時を思い出すと、
「健康に、病気も怪我もなく、いつも笑って生きて欲しい。」
これしか思わなかったことを思いだす。
最終、子どもが、そして自分も、誰もが、健やかに、選んだ道をワクワクしながら、幸せに歩んでいけることが出来たなら、それが、この世のパラダイスなのだと私は思う。
その占い師に出会い、そんなことを振り返るような機会が出来たのも、一つの大切な転機だった。