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#4異動から1ヶ月ーー欠勤と早退と退職の連鎖…年末前に揺れる現場、その時リーダーが下した決断とは?【トキシックワーカーの影】



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11月 – 鍋の季節と揺れる現場


ハロウィンが終わり、鍋が恋しい時期がやってきた。
みかんの季節も本格化する。
出始めは「極早生」と呼ばれる青みがかった酸っぱいみかん、
次第に「早生」という本格的なみかんへと切り替わっていく。
異動から1か月。ようやく全体像が見え始めた頃

出勤し部下の上杉君が前日残した

引き継ぎ書に目を通す。



「おはようございます。鶴田さんが昨日、体調不良で早退しました。」

鶴田さん――34歳、小柄で華奢な140センチの女性。
金縁の丸メガネにショートカットという印象的なスタイルだ。
子どもが小学1年生と3年生だったはず。

彼女はもともとレジ部門から異動してきたため、少し不安があった。
9時出勤という微妙な時間に来られるのも扱いづらい。
午後の戦力になるのは助かるが、
欠勤が今月だけで4回、早退が3回。
さすがに多いなと感じる。




労働環境への想い

鶴田さんの欠勤自体は仕方ない。
だが、その影響で他のスタッフに残業をお願いする状況が続くのは問題だ。
僕は基本的に「休日出勤はしないし、させない」
というルールを徹底している。
不払い労働はダメ、サービス残業もダメ。
労働者として当然の権利を守りたいからだ。

前職ではこれが当たり前ではなかった。
休憩時間は半分以下、休日も午前中だけ出勤するのが常態化。
トラブルがあれば連絡してと、デスクにスマホの番号を付箋で貼っていた。

現職ではそういった慣習をすべて断ち切った。
不正で作られる数字には再現性がない。
そんな数字を追い求めるのは迷惑でしかない。
僕労基法の範囲内で私生活と仕事を分けるルールを僕は、貫いている。




篠沢さんの善意

そんな中、篠沢さんが「休日でも出られる」と話してくれていたことを思い出した。
あれは、鶴田さんの欠勤をフォローしようとする善意だったのかもしれない。

だが、休日出勤を頼み始めれば、
最終的には「僕が出ればいい」という状況になることを知っている。
それは絶対に避けたい。
だから当日いるメンバーで何とかやるしかない。
残業をお願いし、
現場を回す方法を考えなければならなかった。




11月末の試練

そんな折、ロングの山下さんが突然辞めた。
どうやら新しい仕事が見つかったらしい。
"突然辞める"というのは、
何かの前兆であることが多い。
しかし、その"何か"が今の僕にはわからない。
年末まであと1か月。
心の中では焦りがじわじわと広がっていたが、
それを表に出すわけにはいかなかった。

教育係にしていた最年長の本郷さんに原因を尋ねる
「よくやってらしたわよ」と答えが返ってきた。

しかし、その声の裏には何か隠されているような気がしてならない。

山下さんはロングでシフトを担当していたため、
彼女の退職で生まれた穴は想像以上に大きい。
すぐに埋まるはずもなく、
現場にはピリピリとした空気が漂い始めた。

冷静さを装いながらも、
自分の内側では余裕が削られていくのを感じる。
次第に、言葉の端々に苛立ちがにじみ出てしまうようになった。
つい強い口調で指示を出してしまい、後で後悔する。
自分がいつもより厳しくなっているのはわかっている。
上杉君もまた、どこか落ち着かず、普段とは違う動きを見せている。
こちらの緊張が伝染してしまったのだろうか。
なんとか優先順位の低い業務を削ることで、
早朝の人数不足を補おうと調整を重ねた。


9時出勤の2人(鶴田、藤川)が7時半から来てくれれば、
何とか戦える体制になる――。
そう思いながらも、
そんな都合よくいくはずがないと

半ば諦めの境地だった。



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