#10さすがに手に負えない・・・「これが最後の手段だ」――店長が切った最後のカード。それが職場を救うのか、それともさらなる破滅を呼ぶのか?一見問題は解決したように思えたが…
ひな祭りの次の日、僕は歯医者にいた。
定期的に通っている6か月ごとのチェックだ。
「何か変わったことはありますか?」といつも通り聞かれたので、
「顎が痛いんです。2年前に抜いた親知らずの反対側の親知らずが痛み始めているかもしれません」と話した。
少し検査してもらった結果、
診断は意外なものだった。
顎関節症だった。
親知らずは関係なかったのだ。
顎関節症……どうやら無意識のうちに歯を食いしばっているらしい。
特に寝る前など、本来リラックスすべき時に、
僕は歯を食いしばっていたらしい。
満身創痍でやってきたから、全然気が付かなかった。
次々に降りかかる問題を「なんとかしなければ」という気持ちが常に先行し、
「面倒だ」とか「ストレスだ」という感情は後回しにしていた。
でも、身体は正直だった。
3月2日、鶴田さんが復帰したが、
3月5日にはまた欠勤した。
その時、篠沢さんがまるで見せつけるかのように言ってきた。
「鶴田さんが早退した分、私が長く出ますから。
休んだ日も連絡くれれば出られますよ。」
正直なところ、どうでもよかった。
気持ちの整理が追い付かない。
3月9日、鶴田さんが2週間の休職を申請してきた。
いったい何が……?
理由は家庭内のトラブル。旦那がDVをしているとのことだった。
僕の中で決心が固まった。
さすがに手に負えない……
休職理由には納得がいったが、
それでも彼女が今後仕事を“続ける”必要があるかどうか、
しっかり考えてもらいたい。
2か月後に控えている改装のプレッシャーもあり、
今は不安要素を抱えたくない。
僕は店長に時間を作ってもらい、鶴田さんの件を話した。
そのついでに、青果部の運営についても提案した。
改装後は、正直9時開始は不要で、全員一律で7時半にしてほしいか、もしくは11時からにしたほうがいい、と。
もしかしたら、彼女の行先は庶務かもしれない。
雑用の仕事を彼女が受け入れるか、
管理者が僕から店長や副店長に変わるか、いろいろ考えた。
彼女が勤務していた時間の一部を篠沢さんに引き継いでもらい、
残りは他のスタッフに残業を頼むべきか……そんなことをイメージしていた。
でも、誰に相談すべきか……。
結局、1番本件に関係ない石森さんしかいなかった。
石森さんは、「月曜日だけで、それ以外は必要ない」とのことだった。
月曜日は彼女の公休日だ。
なんだかすごいな。
まるで「私が出勤する日は、必要はない」と言わんばかりの気迫を感じた。
2週間の休職後、鶴田さんは青果部に復帰する予定だったが、
休職中の後半に彼女が復帰の目途を報告したとき、
店長側から相談という形で部門異動の提案があったらしい。
鶴田さん自身も、青果部に居づらさを感じていたようで、
庶務への異動を受け入れてくれたとのことだ。
これには店長の力量を感じた。
事情を知っていても、うまく相手を納得させる店長の対応には感服した。
復帰後の3月24日から3月31日までは青果部だが、
4月1日から正式に庶務へ異動することが決まった。
ケースクローズド
これですべてが安心だと思っていた。
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