【台本】二人芝居「葬式」
(葬儀場の外のようで、Aは石段に腰掛けている。Bがその周りをゆらゆらと歩いている)
A「いい人生だったよね」
B「ほんと」
A「みんなに頼られて」
B「私もお世話になりました」
A「人に甘えるのも上手で」
B「ふふ」
A「何かあるとすぐ人んち泊まり込んで」
B「家に泊まると話が尽きなくて」
A「夜通し話してたね」
(間)
B「友達は少なかったけど」
A「(葬儀場の方を見て)愛されてたね」
(少しの間)
A「あ、タカシも来てる」
B「本当だ、全然変わってないね」
A「タカシ、パパになったんだ」
(間。二人ゆっくりと正面を向いて。チクタクという時計の針を刻む音が聞こえる)
A「あの日、やかんの湯が沸いた時」
B「その音を聞きながら結婚することを決めて」
A「あの子が選んだ道は、良かった」
B「でももし結婚しなかったら…」
A「それはそれで、いい人生だった」
B「どの道を選んでも」
A「幸せになるって決まってた」
B「…それでも、何度大変な目にあったでしょう」
A「何度傷ついたんだろうね」
(間。また二人、ゆっくりと列の方を見て)
B「行かないの?(まだ列の方を見ていて)」
A「いいの、あたしはここで(前を向き)」
A「あんたも、早く行きなよ」
B「あまりに気持ちがいいから(空を見て)」
A「本当によく晴れたね(空を見る)」
B「ここでみんなの顔を見るのが幸せなの」
A「そっか」
(Aが立ち上がり、動き出す。二人は交差し合い、目が合うことはない)
A「私たち、気が強いからしょっちゅう喧嘩して」
B「大人になってからもずっと変わらなくて」
A「一緒にいる時は、時が戻ったみたいだった」
B「子どもでいられる場所が、私たちには必要だった」
(間。ゆっくりと、Bのいるあたりを見て)
A「みゆき、私、あんたみたいになりたいって、ずっと思ってた」
B「(Aをじっと見て)私はあんたのそのオレンジ色が好き」
(完)
・・・
2024年3月23日
自主公演「夢かもしれない」にて上演