(また)はじまるので、振り返る

小さな舞台ではありましたが、大きな経験となりました。

という書き出しの文章が下書きに残っていました。日付を見ると2024年3月27日、初めて自分で開いた演劇の公演「夢かもしれない」のすぐあとでした。
なんだか、今、あのころ(と言っても半年前ですが)を振り返ると、とにかく「一生懸命だったな」と思います。何か、一世一代の挑戦、生きるか死ぬか(もちろん物理的な生ではなく、アイデンティティというか、そういう意味で)みたいな、そんな必死さがあったように思います。

ずっとずっと小さなときから、気づけばなにかの、だれかの好みや基準に自然ともたれかかっており、やんわりと甘く平穏な時間に自分を染み込ませていくことに慣れていた私は、こんなにも自分の好みや、「長年自分の中にあった個人的なもの」を人様にお見せするなんて、すごくパワーがいることだったのです。しかも、会話という相互的なコミュニケーションではなく、演劇という半ば一方的なコミュニケーション、という形を選んで。
普段、友達や家族と話しているとき、自分の意見を否定されるのでは、と怖がる私は、2分に一度くらいのハイペースで、「~なんだけど、どう思う?」と聞きます。好きなものも「これ好きなんだよね」と、言えない。言い切れない。怖すぎる。言い切った場合でも、その後横目でちらちらと相手の表情を盗み見ながら反応待ち。普段そんな調子なので、公演の準備中も、お客さんたちに「どう?どうかな?」と聞きたくてしょうがなくなりました。でもそれは本番にならないとわからない。これが表現か。と。おもって。

そんな感じで、自分の中をめぐる様々な感情や葛藤をぐるっとまとめて本番の日まで引っ張って連れて行ったので、そりゃシャカリキにもなるよなぁ。よしよし、としたい気持ちです。

なんでこんなことを今になって振り返っているのかといいますと、第二弾を開きます。また、来年の、恐らく3月末になると思います。自主公演vol.2。以前とはまた違う心持ちで、違う視点で、作っているように感じています。楽しみです。

ここで締めたい気持ちですが、下書きにはこの下にも文章がながく続いています。割り込んでしまったのです、ごめんね。消してしまうのもなんだかかわいそうな気がしなくもないので、このまま載せておきます。

(以下、2024年3月27日より)

こんなにしっかりと向き合って、ものを作るのは初めてでした。頭の中にふよふよと浮かぶ抽象的なイメージを、お客さんの五感で感じ取れる具体に変換していく作業は、なんなんなんてこっちゃ…!でした。ため息交じりに閉じたノートを横目で見ながら、もうここまででいいや、と何度も思いました。でも、なんとか走り切りました。原動力は、いや、このままだと後悔する、という若干後ろ向きな気持ちですが、それでもよしとしてあげることにします。

見てくださるお客さんがいることへの感謝を感じるとともに、共に作ってくれる仲間のありがたさを本当に感じました。そして、伴走してくれた皆さんにありがとうの気持ちをより還元できる様、ビッグになりたいと、切に思いました。動く交差点になれるよう、頑張ります。

当日パンフレットに書いた文を載せてみます。はじめの一文は太宰治を意識しているような文体で恥ずかしいですが、意識しています。

---

慌ただしくも、夢のような日々でした。

郁美さんの独特なリズムと世界観に惹かれ、自主公演をしたい、と思ったときに、真っ先にお顔が浮かびました。公演の打ち合わせをする中で、郁美さんから「私、人生が全部夢なのかもしれないって思うことがあるんだよね」「悩みそうになった時は、宇宙のことを考えるようにしてる」など、色んなお話が出てきて、その度にどういうこと?!と気になることをどんどん掘っていきました。そんな、郁美さんの魅力と、私の興味で出来上がったのが今回の公演になります。

私の姉もまた面白く、幼い頃からずっと音楽と共に生きていて、何年か前に「QUEENのフレディーになる!」と言っていました。当時の私は「何言ってるんだろう…」と思っていましたが、その時の姉の目はずっと脳裏に残っています。そんな姉はつい先日第一子を出産し、その出産の二週間前に公演のテーマ曲を書き上げてくれました。初めて、姉妹二人で作った曲「海風」も幕間に流れます。

先日、少し前の私が書いたメモ書きがふと目に留まり、「たくさんの個性や才能が交わる、動く交差点になりたい」とありました。その一歩目が今回の舞台になります。人それぞれに個性があり、その人だけの感覚や、大切なものがあり、それらが羽ばたき、混じり合う世界が、ちょっとどこかの扉を叩いたら、現れる気がしています。日々、色々なことがありますが、夢と希望と、大切な人への愛があれば、生きていけますよね、きっと。

私はお昼寝がとても好きで、へんてこりんな夢をよく見ます。眠りに入る直前と、眠りから覚めた直後は、薄らいだ意識と、もっとずっと遠くにある世界が、一枚の薄皮を挟んだすぐ隣り合わせにあるような感覚がして、それが好きです。皆さんの好きなものも、今度ぜひ教えてください。

いいなと思ったら応援しよう!