間違いを犯した女の話 #2
女は間違いを犯した。
間違った相手と結婚したのだ。
女と女の夫は一軒家に住んだ。こじんまりとして控え目で、だけど多少は気の利いた家だった。
夫は居間の壁を緑に塗った。緑が好きなのだ。女は空色に塗りたいと言った。夫は許さなかった。女は、毎日好きでもない緑の壁を見て過ごすことになった。
夫は壁に絵を飾りもした。頭にリボンを付けた豚が男の膝に抱かれている絵だった。おかしな絵だ、と女は思った。実際、夫にそう言った。夫はものすごい剣幕で怒った。これは、とても有名な画家が書いた絵なのだ。いくらしたと思っているのか、と。そして、この芸術の素晴らしさが分からないなんて、なんて可愛そうな奴だ、とも言った。女は、毎日おかしな絵を見て過ごすことになった。
夫は孔雀を飼いもした。孔雀は毎日大きな声で鳴いた。その声で寝ている子供が起きることもあったし、女にとってもとても不快な声だった。そして、卵を沢山産んだ。卵は美味くなかった。孔雀は見る間に増えた。狭い庭で女が育てた花を台無しにした。女は夫に苦情を言った。夫はまたものすごい剣幕で怒った。自分たちが飼ってやらなければ処分されてしまうはずだったのだ。今更どこかに譲るわけにも、もちろん森へ放すわけにもいかない。お前に情けというものは無いのか、と言った。
女は猫を飼いたいと言った。だが、夫は、断固反対した。猫は昔から不吉で、悪魔の使いだと言われているというのだ。女も確かにそんな話を聞いたことがあった。それで返す言葉がなかった。
これが、女と女の夫の生活だった。もちろんこれだけではない。似たようなことが折に触れては出てきた。女の家庭では、女の意見はいつだって通らなかった。
嫌なら、別れればいい?
性急に答えを出してはいけない。答えは一つではない。人生は数学とは違うのだ。
そう、話は長くなる。