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自分の考えを仕事に活かしてはいけないと思い込んでいる■観光人材育成論③現代の課題①「知覚の鍛錬~序章~」

今回は、観光人材育成についての「商品価値を高めるために、対象そのものをしっかり観察するための「知覚」を鍛錬する」必要性についての第三回です。
 現在私が危惧している3つのうちの三番目「自分の考えを活かしてはいけないと思い込んでいる」についてとなります。
 
まずは私がそう感じるようになった経緯をご説明します。
私は大学生から20代の若い社会人に接する機会を経て、彼らの多くが、自分の考えを封印して課題や仕事に当たっていることを知りました。
そして、その束縛から解放するためのメソッドをいくつか体験してもらった後に彼らが素直に驚かれた経験があります。
「こんな風に自分の考えを活かしていいんだ」と目から鱗の様子です。
自分の著書でも編集長時代に遭遇したある編集者とのやりとりを記しています(※)が、最近では、大学生にそのメソッドを経験させたところ、講義を受けていた大学4年生が
「今までの講義の中で一番ためになった。もっと早くから受けたかった」と、講義が終わった後にわざわざ言いに来てくれました。
それを聞いてうれしく思った後にやがてじわーっと鈍い悲しみが広がりました。
つまり、彼は大学の終盤にさしかかるまでこのような機会を一度も与えられなかったのか」という事実を知ったからです。
では、なぜそのようなことが頻発しているのでしょうか?以下推察です。
1:(教育要因)技術・技能を「身に付ける」ものばかり重要視されていて、本人の嗜好・能力を尊重し、開発していくような教育機会が貧弱である
2:(ビジネス社会要因)データ・エビデンスを求められる傾向が強まってきている。また企業では若者を育てるという風土が乏しい。
3:(若者気質要因)なにかを学ぶ時に「正解」への指向が強く、「失敗」を恐れる若者は、「権威」「前例」に従って安心感を得たい。

 
それぞれひもときます。
1教育要因
意見を傾聴するという機会が乏しいと感じています。そして、本人の意見に対して「なぜそう思うのか?」と繰り返すことで、本人が内省し考えを深めることを意識してやれてない指導が多いのではと考えています。ですから、思索は深められずに、ご本人のオリジナリティも磨かれないと推測しています。
2ビジネス社会要因
ビッグデータの台頭により、マーケティング=データドリブンと考えられる傾向が強まっています。データを活用することは言うまでもなく重要ですが、私たちの仕事においては、戦略や事業計画を立てる際にはこれらのデータは活かせますが、それを実務に移して、消費者やユーザーと対峙する仕事(例:広告クリエイティブ、店頭販売スタッフ)などでは、もっとミクロな現場や生活感覚から得た洞察力こそ求められます。つまりデータより、眼の前の消費者・ユーザーの「今感じていること」こそが必要になります。
しかし、若手にとっては上司であるはずの年長者は、上に行けば行くほど、現場感覚が乏しくなり、消費者・ユーザーの行動に疎くなるため、データに頼るのです。彼らは整理されてわかりやすい「データ」が好きなのです。したがって、若手は、「データで出さないとこの事業、上に通らないよ」と先輩からアドバイスされて、自らの現場感覚を封印して、データをちょこまかとコピペして、きれいなプレゼン資料を作るのです。ただでさえ経験が乏しい彼らです。彼らとしても実体験ではなく、データからひもといたほうが安心なはずで、データドリブンの世界に逃げ込むわけです。つまり企画に「主観」を入れない癖がついてしまうのです。
3:若者気質要因
「失敗したくない、目立ちたくない」という傾向が強い若者です。失敗したくないから「正解」を求めるし、目立ちたくない、からオリジナリティは出したくない。こういう構図だと考えています。
また、良くない意味で「仕事は仕事。自分とは別物」と考え、ことさらに自分の世界と一線を画したがる若年層も多く、そこに「主観」を入れる必要がないとさえ考えているように見えます。これはワークライフバランス提唱の弊害とも感じています。
 
以上簡単に3つの視点から「自分の考えを仕事に活かしてはいけないと思い込んでいる」原因を推察しました。
最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
(※)下記著書のP140「まかせてくれて驚いたと語った新人編集者」参照

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写真は先日訪れた広島県福山市鞆の浦です。


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