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jasu
トライアル2日目3日目
トライアル2日目
彼女は、大いに警戒していた。
洗濯機の下に隠れて、10時間は出てこなかった。手を突っ込んで引っ張り出したかったが、奥に逃げられた。
私が追いかけまわしたのもよくなかった。譲渡会では人慣れしていた様子だったので、またすぐ抱っこできると思っていたから。
猫飼いベテランの夫は、そっとしておいてあげようといった。彼女が洗濯機の下の奥の方で熟睡している時間、私はひどく落ち込んだ。
トライアル3日目
こんどはソファーの下の奥の方から出てこない。私はいじけて、彼女をほっておいた。
猫の躾(しつけ)について、ネットや本でかなり勉強していた。『夜泣きは心を鬼にして無視せよ。最初が肝心。』という助言に私は従った。
彼女にとっては、知らない家で一人ぼっちの夜。周りに沢山いた他の猫達はいない。怖くて不安で、ありえないほど大声で鳴いた。
夫はちょくちょく様子を見に行っていたが、私の“心を鬼に”方針に配慮して、すぐに寝室に戻ってきた。
躾だからと、私は心を鬼にして夜は無視を徹底した。でも可哀想で、3日目あたりから心が引き裂かれそうになり、ノイローゼ気味になった。
そんな嘆きを夫に聞かせたところ
「構ってあげれば。可愛がるためにお迎えしたんだから」と、有難いお言葉を頂き、深夜四時の未明から日の出まで、リビングの床で添い寝した。
彼女は私から逃げなかった。
私が撫でることで目を細め、不安が和らいでいく様子だった。
しつけなんてしようとしないで、最初から駆けつけて抱きしめて安心させてあげるほうが良かったと、この数日を心から後悔した。
オレンジの朝日を一緒に浴びた。非常に寝不足な一日となった。