言葉にならない言の葉
2007年、一歩を踏み出した僕の道のりは険しいものであった
自分がやりたいと思っていたはずの仕事なのに、できない不満
自分の弱点を看破され何も言い返せなくなる度に、このままこの道を進んでいいのかと葛藤する矛盾
時には筋の通っていない思い込みで言葉をぶつけられ、また何も言い返せずにいる理不尽
他者と上辺の付き合いしかしてこなかった僕にとって、社会人として他者と関わり、自分の意志を発信することは困難を極めた
しかし、そんな中でも自分が関わったことによって笑顔を見せてくれる人がいることが励みになったし、人間不信は完全ではないにせよ解消に向かっていた
5年間その仕事には従事してきたが、2012年3月、期限を迎えてしまう
仕事を辞めるタイミングで、この6年前に「死にたいと思っていた」事実を家族に打ち明けた
家族は相当にショックだったらしいというのは表情を見て分かったが、漸く本当の自分の心を伝えることができたし、理解もしてくれたようだった
20代が終わり、30代へと移る節目の年
また独り、自分の生き方を考え苦しむ時間が訪れた
自分が何をしたいのか
そのために自分に必要なものは何か
分かっているのなら一点突破でひたすら努力すればいいだけなのだ
しかし僕は恐怖や不安に押し潰されそうになる
今までずっと孤独だった
それが当たり前で、慣れていると思っていた
それなのに何故だろう、こんなに寂しく人恋しくなってしまうのは
(この頃性についても諸々考えていたが、ここでは割愛する)
また自分というものが分からなくなる
そんなときに僕は彼を頼りたくなってしまう
堂本剛さん
2012年、「命」をテーマに shamanippon プロジェクトを始動、故郷奈良でライブを行っていた
事前にラジオで彼が話していた言葉で気になっていたものがある
「依存はしないでください」
そう言われても、という感じで、当時の僕は彼を頼るしか方法はなかった
7月14日 奈良 shamanippon ship
ライブ後半、剛さんが客席に降り、闊歩しながらギターソロを披露する一幕があった
この客席歩き、まさか僕のいる席がルート上にあるとは思ってもみなかった
半径1メートルという至近距離で、僕は彼の目を見て強烈な衝撃を受ける(下のキャプチャは僕より数分前だが)
常に涙の膜が張っているような愁いを持ちながら、同時に強い想いを秘め、何かを訴えかけてくるような目
このときの衝撃は今も忘れていない
その後、当時未発表のセッション『I gotta take you shamanippon』を挟み、唄い上げられたのが、『きみがいま』だった
この日開演前のリハーサルでは『I'm you You're me』が音漏れして聴こえてきた
流れ的に最後がこの曲で、沈むところまで沈みたいと思っていたのだが、唄われなかった
この愛と命も…
その愛と命も…
この愛と命も…
その愛と命も…
ぜんぶ すべて 信じていいんだよ…
(引用: 堂本剛『きみがいま』 2012年)
詩が終わった後、CD音源には存在しないシャウトで声を張り上げていく剛さん
上のキャプチャのとき、彼が向いていた方向に僕はいた
僕が考えていたことを見透かしたように、力強く叫び、訴えかけてきた
その言葉にならない言の葉を、僕はこう理解した
「自分を信じて、歩み続けて」
「依存はしないでください」という意味が、分かったような気がした
この後僕は、自分が信じる道を再び歩み出すことを決意する
痛みを抱えながらいまを必死に生きている人に寄り添い、背中を押してくれる
「同じ空の下で、僕らは共に生きている」
彼の言の葉は、すべての人へ捧ぐ「愛」の詩だ
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