見出し画像

ジンジャー・ルート『新番組』

こないだは初めて有料記事を書いてみた。続けて家族や結婚の話を「誰でもが気軽には読めないからなんか安心する」という理由でまた有料記事で書いてみようと思う。他にも岡倉天心『茶の湯』の感想文も続きを書きたいとか、書きたい事と内容はそれなりにあるのだ。が、きょうはジンジャールートのライブの話でも書きたい。

Ginger Root(ジンジャールート)とそのボーカルのキャメロン・ルーのファンや、シティポップが好きな人、ぜひ読んでみてくださいね。

2024年発表の『SHINBANGUMI』と銘打ったアルバムの曲がメイン。

陰キャオタクにして「マルチインストゥルメンタリスト」

ボーカルのキャメロンは自分のことを陰キャとどこかで言ってた。ライブでも「あの、オタクなので、アニメ大好きで、自分でも作ってみたんです」と言っていて、なんかその様子がとても良かった。

作詞作曲も自分でやっていて、ボーカル、キーボードにギター、なんか名前の分からない特殊なキーボードみたいなやつも弾いている。機材の接続やら調整も自分でしていて(始まる前にスタッフみたいにスタスタ出てきて歓声に「しーっ!」てしてた)なんでも自分でやりたい人なんだなぁ。

時折シャウトするボーカルも、観客に歌うのを求めて「声が小さい」と厳しいコーチみたいに言うのも、なんか新鮮だった。ギターを掻き鳴らす姿はめっちゃかっこよかったし「熱い人なんだなー」と印象を上書きされた。

せわしなくて、MVみたいなステージ

マイクの横に電話の受話器がついていて、そっちに向かって歌う部分もあった。受話器のはずが普通のマイクに向かっちゃう瞬間もあったりしてライブらしいなと思う。
さっき書いた楽器に加えドラムの横に置いてある何か金管楽器みたいなのを取り出してカーン!!と鳴らしたり、ジャンプしながらスネアドラムを叩いたり。そもそもカメラマンが舞台上で写している映像がリアルタイムでスクリーンに映し出されてそれを追うのに忙しいというか、ぼーっとする時間がなかった。
カメラがちょこちょこ客席も映すから、みんなどんな顔してるんだとか、自分が映るかもと思ったりして、飽きることがなかった。

「Show 10」に込めた覚悟

Only Youと並んでShow 10がめっちゃ好きで通勤中何回も聞いていた。
日本語を独学で勉強中というキャメロン。かなりMCが流暢だった。
この曲の演奏前こう話していた。

次の曲は今回のアルバムの中で一番好きな曲です。タイトルは日本語の「商店」と「焦点」、それから英語では「(10 out of 10などで)満点」みたいな意味合いもあって、満点を出してやるみたいな気持ちで作りました。

ジンジャールートライブMCにてキャメロン•ルー

それが一番好きって言えるのめっちゃ良くないか。
このインタビュー記事、キャメロンが話しながらけっこう感極まっていてその心境を想像すると胸に迫るものがあります。


コロナ禍を経て見えてきたという自分が一番大事にしたい”焦点”。
商店街を歩いているときにデモを聞いていたらその風景と合っていてインスピレーションを感じて、翌日に一気に完成させたという。たまたま歩いていた”商店”がきっかけで完成したというストーリー。
そしてこのアルバムでやりたかったあらゆる要素を少しずつ入れていて、アルバム『SHINBANGUMI』のコンセプトを的確に表している。「完璧なショー」にする覚悟。シティポップ、ロック、インディーズなどの要素が全部ある感じがしたし、「Kaze」や「No Problems」のフレーズがアウトロで出てくるのもいい。

アルバムを構成する一つ一つの要素に初めて心から自信を持って堂々と打ち出せる作品になっているそうで、「新番組」というだけあって新章の幕開けっぽくて感動。これからも頑張っていきますとライブで宣言していて胸熱でした。

ちょっと切ない『Mahjong Room』もおすすめ

↑対比として。2018年リリースのこのアルバムは「自分の幼少期や家族に関する”記憶”をテーマにした。自分がいかにものごとを記憶しているか、そして、なぜ忘れてしまうのか……そういうルーツや深層心理に深く潜ることで自分自身を定義しようとしたアルバムだったんです」とのことらしい。(前出Rolling Stone Japanの記事より)

キャメロンと一緒に暮らしたことなんかないのに、これを聞くとなぜか私まで幼少期に戻される。昔住んでいた家の夕方の日当たりや、カーペットの質感、冷蔵庫のシール...などこまごましたことを思い出してしまう、ノスタルジーのアルバムなのだ。
私もしかして(キャメロンの出身地の)南カリフォルニアに住んでたことあったっけとか思い始める。なんかこう、(想像で作り上げた)アメリカの家の壁紙の質感とかすごく浮かんでくる。
特に「Call It Home」を聞いてほしい。

この段階で彼は「今までの自分の基礎を作ってきたのってこういうものだよな」を整理したんだと思う。今聞くとスローテンポだし、「沈み込む」印象を受けるアルバムだ。

終わりに

2022年のEP『ニセモノ』のMVで解雇されてアタフタしていたジンジャールートが、今回の『SHINBANGUMI』MVでは自ら「ジンジャー・ルート・プロダクションズ」を立ち上げるストーリーだと知ったときは震えましたよね。
これからも自分で全部やろうとして今まで以上にバタバタするんだろうけど、元気が出るからその様子を見たい。同世代で頑張っている人を見るのは好きだ。

いいなと思ったら応援しよう!