クリスマス・イヴ[2-3]
「おいしい〜」
「でしょ?さっすがオレ、ナイスチョイス!」
「"オレ"なんか初めて聞いたんだけど。」
「うん、だって初めて言ったもん。」
「なにそれ。」
なんて軽口を叩きながら、まーくんが買ってきてくれたクリスマスセットのチキンを2人で頬張る。
わたしの好きなものをいっぱい買ってきてくれると言ったその言葉通り、チキンセットだけじゃなく、デザートのケーキまで買って来てくれた。しかもわたしが大好きなベリー系の。
まーくんの手の中に、そのケーキを見つけたとき、たぶんわたしの顔が分かりやすいくらい明るくなったんだろう。まーくんに、絶対喜んでくれると思ったんだって言われて、図星すぎて恥ずかしくなった。ただ同時に、ちゃんと見ててくれたんだってことも実感できて、嬉しかった。
なんだ、会ってみたらそんなに倦怠期じゃないじゃん。
今だって、ほら、前みたいにちゃんと笑いあえてる。
ーハハハハ
あ、懐かしいな、わたしたちも去年はあんな感じだったな。
楽しそうに笑いながら盛り上がっている、大学生らしきグループを見て思い出す。
きっとさっきまでのまーくんを待っている間の心理状態で、あの大学生グループを見ていたら、いいなぁ、去年のわたしたちもあんな感じだったな、付き合う前の友だち同士のままの方がよかった、とか思ってたんだろうけど、もうすっかりまーくんパワーでそんな嫌な気持ちも消え去った。
でも、本当にちょうどあんな感じ。男女6人グループで、その中にわたしとまーくんもいて、みんなでクリスマスマーケットに遊びに来て・・・。きっとみんなにはわたしも、いつもと変わらないように馬鹿騒ぎしてる様に見えてたと思うけど、実際は、あの日の夜、告白することを心に決めていたから、ずっとそわそわしてたんだよね。
みんなと別れた後に、ツリーの前で告白をしたときには、もう、口から心臓が飛び出るんじゃないかってくらいドキドキしていたのも、今となってはいい思い出だな〜。
・・・・・・そうだよ。
ずっとずっと片思いで、告白して付き合えることになって、その日の夜は寝れないくらい嬉しくって・・・
今でもその、まーくんを想う気持ちは変わらない。
だったら、例え、押しまくった結果が返ってこなくても、わたしは変わらず押し続けたらいいんじゃん。
「どうしたの?今日なんか静かだね?もうお腹いっぱい?」
ほら、こんなトンチンカンなこと言って顔を覗き込んでくる、その仕草だけでももう、愛しいよ。
「ううん、なんでもない。」
「ふーん、ならいいけど。ほら、ケーキも食べよっ!」
決めた!
まーくんの方から離れていかない限りは、一方的でもいいから押し続ける。欲を言えば、いつかは押し返してくれたらいいなって思うけど、もうそれを望むのもやめる。まーくんが隣にいてくれるならいいよ。
って、それは本人には伝えないけどね。
わたしよりも幸せそうに、ベリーのケーキを口いっぱい入れているまーくんをこっそり見ながら、そんなことを誓う。
スタートは微妙だったけど、今日のデートの連絡をした、数週間前の自分、上出来だよ!おかげで、勝手に悩んでたことの答えが出た。
うん、今日もうすでに来てよかった。